【26話完結】日照りだから帰ってこい?泣きつかれても、貴方のために流す涙はございません。婚約破棄された私は砂漠の王と結婚します。

西東友一

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22.ミシェルが消えた日

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(くっ・・・)

 マハラジャの言葉でジェイドは大臣が居なくなった日のことを思い出す。今となっては激しく後悔し、自分が悪いと言うのに、いまだにミシェルが悪いと怒っているジェイドにとって、蔑んでいたミシェルが居なくなったことよりも大臣がいなくなったことの方がショックだった。もちろん、ショックなことを顔に出したり、うじうじするようなジェイドではないが。

 マハラジャがそんなことを知るはずがない。
 そうであるがゆえに、ジェイドにはその言葉がぐさっと刺さった。その言葉でようやく怒りで膨れ上がった気持ちに穴が開き、怒りという感情が抜けたジェイドに残ったのは惨めさだけだった。

「ふんっ。もういいわっ」

 ジェイドは捨て台詞を吐いて踵を返した。

「だがな、ミシェル。お前はもう、我が国エバーガーデニア王国の国民でも、お前の功績も歴史の一切消してくれるわ」

「功績・・・?」

 ミシェルはびっくりした。なぜなら、ジェイドが自分の行ってきたことは罪過だと言う態度で接してきたからだ。

「ふっ、ふん」

 そう言って、ジェイドは連れてきた兵士と共に王座の間から出ていった。

「ミライオ」

「はっ」

「ジェイド王子にお土産をお渡ししてください」

「・・・よろしいのですか?」

「もちろんさ」

「敵に塩を送るような真似・・・それも、あの男はこちらの好意を踏みにじるような男です」

「敵じゃないさ。君だって飢饉の辛さは知っているだろう?」

 マハラジャがそう言うと、ミライオは飢えていく人々の顔はもちろん、自分が仕えるマハラジャの苦悩を思い出した。

「かしこまりました」

 そう言って、急いでジェイドたちを追った。

「ありがとうございます、マハラジャ様」

 ミシェルは深々とマハラジャに頭を下げるけれど、マハラジャの方は要領を得ない。

「私の祖国エバーガーデニア王国のために・・・ありがとうございます」

 ミシェルがそう言い直すと、マハラジャはようやく理解し、

「困った時、キミがこの国を助けてくれたように、僕も誰かが困った時は協力したいと思っただけです。」

 と謙遜しながら、遠い目でジェイドが出ていった扉を見つめる。

「とはいえ・・・ずーっと支援することは困難ですけれどね。我国もようやく軌道に乗り始めたところですから。あとは自力で立ち直ってもらうしか・・・」

 マハラジャは日照りの過酷さを誰よりも知っていた。だから、その困難をジェイドが乗り越えられるかということに関しては、いかに人に優しいマハラジャでもシビアに考えざるをえない。

(厳しいかな・・・)

 自国のガラハラ王国は今が大切な時であり、一番に自国のことを考えねばならないマハラジャは、遠いエバーガーデニア王国の人々の幸せにするために何かできないもどかさが心の隅にあった。

「大丈夫です、エバーガーデニア王国は」

 ミシェルもジェイドと同じように遠い目で祖国のエバーガーデニア王国の方角を見つめた。
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