7 / 28
7
しおりを挟む
スーーーッ
私は入れてもらったお茶を手に取る。名前はカモミールティーと言うらしい。
どうやら、カモミールという白くて小さな花から作るようだが、うちの国では見たことがない花だった。
口に近づけると優しい花の香りが心を落ち着けてくれて、私は口にお茶を含む。
滑らかな舌触りにその花の香りが口の中に広がり、私は味わいながらカモミールティーを飲み込んだ。
涙を出し切った私は頭が痛かったけれど、このお茶は私の身体に優しくしみこんで癒していくようだった。
「おいしい・・・」
私がぽつりと呟くと、「それは良かった」と言ってリチャードが笑う。
「なんか・・・ムカツク」
「えっ、なんで?」
驚いた顔に昔のリチャードの面影を強く感じる。
「だって、私は泣きじゃくって今目とか真っ赤で、顔もカサカサでしょ?」
「うん」
なのに、幼馴染で喧嘩も弱く、頼りなかったあのリチャードがこんなにもかっこよくなっていて、なんだかずるく感じたのだ。
「やっぱり、出て行って恥ずかしいから」
私は布団で顔を隠す。
するとその手を優しく握られる。
「何を今さら・・・っ。ボクはキミが鼻水を垂らしていたころから知っているし」
バッ
「鼻水を垂らしていたのは、私じゃなくてリチャードでしょっ!?」
(はめられた・・・)
ニホンという国の天岩戸の話のように私が顔を再び出すと、嬉しそうな顔をしてリチャードが待っていた。
「うん、キミは綺麗だよ。今も昔も・・・」
「いつから、そんな言葉・・・覚えたのよ・・・」
「昔から知ってたさ。でも、昔のボクは今以上に非力だったから言わなかっただけ」
リチャードは私から手を離して、悔しそうに拳を作る。
「本当にごめん・・・アリア。キミの一大事にすぐに駆け付けてあげられなくて・・・」
「いいのよ・・・」
「いいや、ダメだ。ボクはキミを守れるようになるために頑張って来たんだ・・・っ。それなのに・・・」
「大丈夫よ、リチャード。大丈夫」
私が今度はリチャードの固くなった拳を握った。
「あなたの手のいいところは、優しいところよ」
すると、リチャードの力を込めた手はみるみるうちに柔らかくなった。
「うん、私がエドワードをやっつけてやるんだからっ」
今度は私が拳を作る。
けれど、さきほどのリチャードの拳よりも小さい拳はなんだか頼りない。
「見てなさい、エドワード・・・、絶対復讐してやるんだからっ・・・なーんてね」
財産も差し止められて、居場所がなくなり、実質国外追放にあった私。
私はすぐに拳を緩める。
「ねぇ、しばらくの間だけ、ここに住まわせてくれるかしら?リチャード」
「あぁ、しばらくと言わず・・・むぐっ」
私は人差し指でリチャードの唇を抑える。
「しばらくでいいから。ねっ?」
ちゃんと仕事を見つけたら、自分でお金を稼いで自分で住む場所を借りて暮らしたい。リチャードは優しいから幼馴染のよしみで住まわせてくれるかもしれないけれど、それは私が嫌だ。
リチャードは私の手を握って、唇から手を離す。
「あぁ、キミはそういう人だったもんね」
ニコッと笑うリチャード。
私のことをわかってくれる人がまだいたことに私は嬉しくなった。
「ちっ」
しかし、そんな私たちをドアの外から妬みながら見ている人がいるなんて気付かなかった。
私は入れてもらったお茶を手に取る。名前はカモミールティーと言うらしい。
どうやら、カモミールという白くて小さな花から作るようだが、うちの国では見たことがない花だった。
口に近づけると優しい花の香りが心を落ち着けてくれて、私は口にお茶を含む。
滑らかな舌触りにその花の香りが口の中に広がり、私は味わいながらカモミールティーを飲み込んだ。
涙を出し切った私は頭が痛かったけれど、このお茶は私の身体に優しくしみこんで癒していくようだった。
「おいしい・・・」
私がぽつりと呟くと、「それは良かった」と言ってリチャードが笑う。
「なんか・・・ムカツク」
「えっ、なんで?」
驚いた顔に昔のリチャードの面影を強く感じる。
「だって、私は泣きじゃくって今目とか真っ赤で、顔もカサカサでしょ?」
「うん」
なのに、幼馴染で喧嘩も弱く、頼りなかったあのリチャードがこんなにもかっこよくなっていて、なんだかずるく感じたのだ。
「やっぱり、出て行って恥ずかしいから」
私は布団で顔を隠す。
するとその手を優しく握られる。
「何を今さら・・・っ。ボクはキミが鼻水を垂らしていたころから知っているし」
バッ
「鼻水を垂らしていたのは、私じゃなくてリチャードでしょっ!?」
(はめられた・・・)
ニホンという国の天岩戸の話のように私が顔を再び出すと、嬉しそうな顔をしてリチャードが待っていた。
「うん、キミは綺麗だよ。今も昔も・・・」
「いつから、そんな言葉・・・覚えたのよ・・・」
「昔から知ってたさ。でも、昔のボクは今以上に非力だったから言わなかっただけ」
リチャードは私から手を離して、悔しそうに拳を作る。
「本当にごめん・・・アリア。キミの一大事にすぐに駆け付けてあげられなくて・・・」
「いいのよ・・・」
「いいや、ダメだ。ボクはキミを守れるようになるために頑張って来たんだ・・・っ。それなのに・・・」
「大丈夫よ、リチャード。大丈夫」
私が今度はリチャードの固くなった拳を握った。
「あなたの手のいいところは、優しいところよ」
すると、リチャードの力を込めた手はみるみるうちに柔らかくなった。
「うん、私がエドワードをやっつけてやるんだからっ」
今度は私が拳を作る。
けれど、さきほどのリチャードの拳よりも小さい拳はなんだか頼りない。
「見てなさい、エドワード・・・、絶対復讐してやるんだからっ・・・なーんてね」
財産も差し止められて、居場所がなくなり、実質国外追放にあった私。
私はすぐに拳を緩める。
「ねぇ、しばらくの間だけ、ここに住まわせてくれるかしら?リチャード」
「あぁ、しばらくと言わず・・・むぐっ」
私は人差し指でリチャードの唇を抑える。
「しばらくでいいから。ねっ?」
ちゃんと仕事を見つけたら、自分でお金を稼いで自分で住む場所を借りて暮らしたい。リチャードは優しいから幼馴染のよしみで住まわせてくれるかもしれないけれど、それは私が嫌だ。
リチャードは私の手を握って、唇から手を離す。
「あぁ、キミはそういう人だったもんね」
ニコッと笑うリチャード。
私のことをわかってくれる人がまだいたことに私は嬉しくなった。
「ちっ」
しかし、そんな私たちをドアの外から妬みながら見ている人がいるなんて気付かなかった。
50
あなたにおすすめの小説
特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する
下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。
ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。
小説家になろう様でも投稿しています。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです
柚木ゆず
ファンタジー
優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。
ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。
ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。
没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。
木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。
不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。
当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。
多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。
しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。
その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。
私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。
それは、先祖が密かに残していた遺産である。
驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。
そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。
それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。
彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。
しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。
「今更、掌を返しても遅い」
それが、私の素直な気持ちだった。
※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)
王都を追放された私は、実は幸運の女神だったみたいです。
冬吹せいら
恋愛
ライロット・メンゼムは、令嬢に難癖をつけられ、王都を追放されることになった。
しかし、ライロットは、自分でも気が付いていなかったが、幸運の女神だった。
追放された先の島に、幸運をもたらし始める。
一方、ライロットを追放した王都には、何やら不穏な空気が漂い始めていた。
姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。
coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。
お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません?
私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。
【完結済み】妹の婚約者に、恋をした
鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。
刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。
可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。
無事完結しました。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる