αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの

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俺がこの仕事に就いたわけ

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この街に来たがオメガで高校も途中までしかいってない未成年の俺を雇ってくれるところなんて見つからなかった。持っていたお金が底をついて、いよいよどうにもならないときに出会ったのがオーナーである雅人さんだった。家出をしてるオメガの俺に行き場所がないなら雇ってやる。ただし無理なら断れと言われて連れてこられた場所は繁華街から近くの古い雑居ビルだった。人が3人くらいしか乗れない小さなエレベーターに乗った。部屋のドアを開けると一斉に中にいた5人くらいの人の瞳と目が合った。

「雅人さん、また拾ってきたの?」
「今度はずいぶん若いじゃない。いくつ?」
「いやなら帰ってもいいんだよ」
そんな声が部屋中に響いてきた。見るとチョーカーをしている男性で俺よりもみんな年上に見えた。

「うっせい。こいつにまだ話してないから、これから説明するんだよ。じゃあこっち」
奥にある部屋に案内された。

「ここは……オメガにとって最後に選ぶ職場だな」
そんなことを言いだした。俺にはここがどんな場所なのか、どんな仕事をするのか見当もつかなくて雅人さんからの言葉を待った。

「ここにいるオメガはみんな色んな事情を抱えながらも頑張って生きてるんだ。オメガは働くところが限られてるから仕方がないが……ここはそんなオメガが1番稼げるところだ。はっきり言うとアルファやベータとセックスしてお金をもらってる。まあ汚れ仕事とか言われることもあるが、世の中にはいくら優秀なアルファでも恋人や伴侶がいる人ばかりじゃないからな。性の捌け口で誰でもいいからセックスしたいと思ってる奴もいる。けどそんなの無理だろ?オメガ狩りなんてやったらそれこそ犯罪者になっちまう。だからここにいるオメガが相手になる。お互い合意の元そのまま結婚して番になる奴もいたし、運命の番と呼ばれる奴に会った奴もいた。ここを利用するには身分証明の提出の他に犯罪歴がないこと。あと万が一うつされる可能性がある病気を持ってないと証明できることが条件だ。誰でもいいわけじゃない。ここは案外高額だからお金を持ってない奴はオメガとはできない。お前は……今まで誰かとセックスした経験はあるか?まぁ誰かと身体を重ねるのが嫌なら断ってもいい。いくら金のためとはいえそんな男娼なんかやりたくないと思えば断ってもいいがどうする?一応待遇はいい。住む場所も与えるし、健康診断もある。身バレしないように対策もしてやる。ヒートの時は仕事なんかさせられないからちゃんと休暇もあるし、仕事内容はちゃんと教えてやる。よそでもこういう店はたくさんあるが、身分証明の提出等ちゃんとしてくれるところは少ない。だから……少し考えてみてくれ」
そういって雅人さんは煙草に火をつけた。白煙を見ながら俺は考えてた。雅人さんは他にもこういうお店はあると教えてくれた。でも他のところで俺が働けるとは限らない。それならここでいいのかもしれない。本当は嫌だ。頭ではわかっているが義兄貴との行為を思い出すこの仕事をすることに抵抗はあったが生きるためには諦めるしかなかった。ここぐらいしか俺が働ける場所なんてないんだから……自分がこれから先、生きていくために男娼をすることに決めた。義兄貴とセックスしたことはいい思い出として胸にしまおう。だってもう二度とあの腕に抱かれることはないのだから……

「お前、名前は?」
もしかしたらこの街にもチラシを配りに来たかもしれないけど偽名を名乗るほど頭が回らずにお義父さんの戸籍に入る前の名字と1文字の名前にして「柴田海」と名乗った。

俺の年齢を聞いても雅人さんはたいして驚かなかった。ただ今すぐに仕事をするのは無理だと言われた。万が一俺の年齢詐称がバレたら他の奴に迷惑がかかるからと下働きを続けた。書類の整理から紹介作成、写真撮影同行、その間に護身術まで習わされた。万が一の時の為に……自分の身は最後は自分で守らないといけないからと……俺が18歳になったらお客様との仕事することが決まった。俺は今までビデオ等で勉強したが実践は初めてだった。俺の練習相手は雅人さんだった。どうやったら気持ちよくなってもらえるか仕事としての接客を教えられた。でも終わって家に帰ったら涙が溢れた。こんな仕事……したくなかった。義兄貴との思い出がどんどん汚れていくように感じた。

俺の写真撮影は顔見せNGにしてある。万が一家族にばれるのを防ぐためにあえてぼやけた横顔や唇だけと……その代わりに身体の写真はたくさん載せてある。顔を見せてなくて珍しいのか俺には毎日のように指名が入った。俺はそこそこ有名になっていった。この仕事について5年もたてば固定のお客様もついた。中には有名企業の社長や役員、政治家が俺を番にしたいと妾になってくれと言ってくれたが俺は誰とも番にはなるつもりはなかった。そのときに気が付いたんだ俺は義兄貴が好きだったんだと……だから仕事が終わると毎回虚しさだけが残った。


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