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誰よりも、強く生きていたから
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その夜……翔太は鷹城の部屋にいた。
あのあと、お互い何も言えなくなって、ただ一緒にいることを選んだ。
ベッドの中で背中合わせに並んで横になった。そんな静かな夜の中で、鷹城の声が落ちてきた。
「俺が契約相手を選ぶ時、会社が提示した候補が十数人いた」
「……そう」
「社会的な背景、能力、容姿、健康状態、将来的な子どもの可能性まで考慮されていた。だが……どの人も俺の目には生きた人間に見えなかった」
「それで、なんで俺を?」
「君だけが、必死に生きていた」
……息が止まった。
「自分のためじゃない。母親のために、踏まれても、笑われても、誇りを失わずに生きていた」
「そんな……」
「劣等だと蔑まれても、逃げずに働いていた。誰の保護も受けずに、自分の足で立っていた」
鷹城の声は、少し熱を帯びていた。
「……正直、最初は興味だった。オメガの中でも珍しいタイプだと……。
だが、会って話して……そして気づいた。この人間を、誰にも踏ませたくないって思った」
その言葉に、俺の胸の奥がざわりと揺れた。息が詰まり目の奥がじん、と熱くなった。
「契約関係であっても、君が誰かに値踏みされる対象になるのが許せなかった。誰よりも自分を低く見ている君を、俺が肯定したかった」
「そんなの、勝手だよ」
かすれるような声で言い返すと、鷹城はかすかに笑った。
「そうかもしれない。だけど、俺はもう君を手放せない」
「それ……契約以上の意味で?」
「……ああ」
迷いのない答えに、心がぎゅっと締めつけられた。夢を見てるんじゃないかとすら思った。
でも、隣にある手の温度が現実を教えてくれる。
「……まだ、信じきれないよ」
ぽつりとそう言った俺の肩に、鷹城がそっと触れた。その一瞬で、呼吸が浅くなった。
「いい。信じられるまで、何度でも言う。何度でも証明する」
その言葉に、どうしてだろう……涙がまたにじんだ。
俺が、誰かに選ばれる日が来るなんて……本気で思ってなかったから。
***
朝の光が部屋に差し込むと、いつもなら目を覚ますのが苦手なはずなのに、今日はなぜかすんなり目を開けられた。
肩にかかる重み。寝ぼけた頭でも鷹城が横にいることはすぐにわかった。
昨夜の会話が、まだ心に残っている。鷹城の言葉が、まるで耳の中で何度もリピートされているようだった。
「君を誰にも踏ませたくない」
翔太は、少し目を閉じてその言葉に耳を傾ける。それだけで、胸の奥が痛くなる。
でも、同時に何かがふっと軽くなる感覚もあった。ずっと、独りで抱えてきた重さ……それが、少しずつ誰かに支えられている実感が湧いてきたからだ。
ベッドで体を動かして、ふと隣を見れば、鷹城は眠っていた。その顔は、昨日見た時よりもずっと穏やかに見えた。鷹城の背負っているものが重すぎることも、少しだけわかる気がする。
家族や企業の問題、跡継ぎとしての責任……全部、彼にとっては重圧でしかないはずだ。それでも、俺に「支える力がある」なんて言ってくれたこと……その意味が、今になってじわじわと響いてくる。
でも……
「俺、まだ何もできてない」
そんな自分が、どうしても情けなくて。鷹城のために、何かしてあげたいと思っているのに、ただ彼のそばにいることしかできない。俺があの時、鷹城に「選ばれる」とき、彼に何かを返す力があると思ったから……と思っていた。でも、今思うと、それが怖くて仕方がない。
「もし、何もできなかったら……?」
ふと、心の中でその言葉が浮かぶ。彼が俺に求めるものに応えられなかったら……それが一番の恐怖だった。でも、なんでだろう。今は、その恐怖よりも、鷹城と一緒にいたいという気持ちだけは、はっきりしていた。
「翔太、起きたのか」
その声に、思わず視線を合わせた。
「うん……」
その顔を見たとき、ほんの少しだけ胸が高鳴った。彼が無理に笑うことなく、ただ静かに俺を見つめるその目が、優しさだけでなく、力強さも感じさせたから。
「玲司さん、昨日言ったこと、俺……多分、まだ自分に自信がなくて。あんたにはもっと、ふさわしい人がいるんじゃないかって思ってた。でも……それでも、あんたのそばにいたいって思った」
その言葉を言うだけで心が揺れる。けれど、鷹城は何も言わず、ただ俺の手を優しく握った。
「翔太、君がふさわしいとか、そういう問題じゃない。俺が選んだのは、君なんだ。君が、君らしくいることが大切なんだ」
その言葉が、まるで何かを決定的にしてくれた気がした。俺は涙が浮かびそうになるのを必死にこらえた。
だって、あの日からずっと感じていたこと……
「君らしくいることが大切」って、あのときも言われた。でも、その言葉が今になって、もっと深く心に届いた。
「……ありがとう、玲司さん」
軽く微笑んで手を重ねた。
「……何度でも言う。俺が選んだのは、君だ」
その手のひらに触れるだけで、胸の奥が温かくなる。少しずつ、翔太は心の中で決意を固めていく。
鷹城と一緒に歩いていくこと……今はその手にすがりたくて仕方がないけれど、いつかはしっかりと、自分の足で並んで歩けるようになりたいと。
あのあと、お互い何も言えなくなって、ただ一緒にいることを選んだ。
ベッドの中で背中合わせに並んで横になった。そんな静かな夜の中で、鷹城の声が落ちてきた。
「俺が契約相手を選ぶ時、会社が提示した候補が十数人いた」
「……そう」
「社会的な背景、能力、容姿、健康状態、将来的な子どもの可能性まで考慮されていた。だが……どの人も俺の目には生きた人間に見えなかった」
「それで、なんで俺を?」
「君だけが、必死に生きていた」
……息が止まった。
「自分のためじゃない。母親のために、踏まれても、笑われても、誇りを失わずに生きていた」
「そんな……」
「劣等だと蔑まれても、逃げずに働いていた。誰の保護も受けずに、自分の足で立っていた」
鷹城の声は、少し熱を帯びていた。
「……正直、最初は興味だった。オメガの中でも珍しいタイプだと……。
だが、会って話して……そして気づいた。この人間を、誰にも踏ませたくないって思った」
その言葉に、俺の胸の奥がざわりと揺れた。息が詰まり目の奥がじん、と熱くなった。
「契約関係であっても、君が誰かに値踏みされる対象になるのが許せなかった。誰よりも自分を低く見ている君を、俺が肯定したかった」
「そんなの、勝手だよ」
かすれるような声で言い返すと、鷹城はかすかに笑った。
「そうかもしれない。だけど、俺はもう君を手放せない」
「それ……契約以上の意味で?」
「……ああ」
迷いのない答えに、心がぎゅっと締めつけられた。夢を見てるんじゃないかとすら思った。
でも、隣にある手の温度が現実を教えてくれる。
「……まだ、信じきれないよ」
ぽつりとそう言った俺の肩に、鷹城がそっと触れた。その一瞬で、呼吸が浅くなった。
「いい。信じられるまで、何度でも言う。何度でも証明する」
その言葉に、どうしてだろう……涙がまたにじんだ。
俺が、誰かに選ばれる日が来るなんて……本気で思ってなかったから。
***
朝の光が部屋に差し込むと、いつもなら目を覚ますのが苦手なはずなのに、今日はなぜかすんなり目を開けられた。
肩にかかる重み。寝ぼけた頭でも鷹城が横にいることはすぐにわかった。
昨夜の会話が、まだ心に残っている。鷹城の言葉が、まるで耳の中で何度もリピートされているようだった。
「君を誰にも踏ませたくない」
翔太は、少し目を閉じてその言葉に耳を傾ける。それだけで、胸の奥が痛くなる。
でも、同時に何かがふっと軽くなる感覚もあった。ずっと、独りで抱えてきた重さ……それが、少しずつ誰かに支えられている実感が湧いてきたからだ。
ベッドで体を動かして、ふと隣を見れば、鷹城は眠っていた。その顔は、昨日見た時よりもずっと穏やかに見えた。鷹城の背負っているものが重すぎることも、少しだけわかる気がする。
家族や企業の問題、跡継ぎとしての責任……全部、彼にとっては重圧でしかないはずだ。それでも、俺に「支える力がある」なんて言ってくれたこと……その意味が、今になってじわじわと響いてくる。
でも……
「俺、まだ何もできてない」
そんな自分が、どうしても情けなくて。鷹城のために、何かしてあげたいと思っているのに、ただ彼のそばにいることしかできない。俺があの時、鷹城に「選ばれる」とき、彼に何かを返す力があると思ったから……と思っていた。でも、今思うと、それが怖くて仕方がない。
「もし、何もできなかったら……?」
ふと、心の中でその言葉が浮かぶ。彼が俺に求めるものに応えられなかったら……それが一番の恐怖だった。でも、なんでだろう。今は、その恐怖よりも、鷹城と一緒にいたいという気持ちだけは、はっきりしていた。
「翔太、起きたのか」
その声に、思わず視線を合わせた。
「うん……」
その顔を見たとき、ほんの少しだけ胸が高鳴った。彼が無理に笑うことなく、ただ静かに俺を見つめるその目が、優しさだけでなく、力強さも感じさせたから。
「玲司さん、昨日言ったこと、俺……多分、まだ自分に自信がなくて。あんたにはもっと、ふさわしい人がいるんじゃないかって思ってた。でも……それでも、あんたのそばにいたいって思った」
その言葉を言うだけで心が揺れる。けれど、鷹城は何も言わず、ただ俺の手を優しく握った。
「翔太、君がふさわしいとか、そういう問題じゃない。俺が選んだのは、君なんだ。君が、君らしくいることが大切なんだ」
その言葉が、まるで何かを決定的にしてくれた気がした。俺は涙が浮かびそうになるのを必死にこらえた。
だって、あの日からずっと感じていたこと……
「君らしくいることが大切」って、あのときも言われた。でも、その言葉が今になって、もっと深く心に届いた。
「……ありがとう、玲司さん」
軽く微笑んで手を重ねた。
「……何度でも言う。俺が選んだのは、君だ」
その手のひらに触れるだけで、胸の奥が温かくなる。少しずつ、翔太は心の中で決意を固めていく。
鷹城と一緒に歩いていくこと……今はその手にすがりたくて仕方がないけれど、いつかはしっかりと、自分の足で並んで歩けるようになりたいと。
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