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ぼっちと幼女と邪神
幼女と散歩
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少し歩くと、所々に深さ50cmくらいの穴が点々と空いている場所に着いた。
雨で崩れた跡みたいに見えるが、土の縁が妙にきれいで――手が入っているのが分かる。
「ここは! ……なんだっけ?」
「くれねぇ、が……おにーちゃ……をおとす?」
「それだ! またやりたいねー」
「ぼく……えんりょ、する……」
ここは、ミドリとシロとクレバスが結託して、シュウにイタズラをしようとして使った場所である。
作戦はこうだ。
ミドリがシュウに肩車をしてもらい、両手でシュウの目を隠す。
シロがシュウと手をつないで誘導し、進む先の地面を――クレバスが穴を掘って落とす。
子どもらしい、完璧な計画だったが……。
結果は、惨敗だった。
シュウが落とし穴を避けるために、普通とは違う動きをした。
あまりに滑らかで、あまりに自然で、避けたことすら気づかせない動き。
しかし肩車の上のミドリには、それが“船の急旋回”みたいに効いた。
ミドリは顔色が青くなり、肩車の上でぐらりと揺れて、乗り物酔いに近い症状を引き起こした。
シロはというと、シュウの動きに置いていかれて足がもつれ、落とし穴を避けきれず――穴に落ちて泥だらけ。
そしてクレバスは、尻尾を巻いて叱られ、1週間オヤツ抜きになった。
ミドリからすると、この落とし穴たちは苦い思い出なのだ。
穴を見るだけで、あの“ぐわん”とした気持ち悪さが、喉の奥に戻ってくる。
「あれ、だめ……つぎ、でる」
「なにがー?」
「ないしょ……」
直前に食べた食事を、シュウの頭の上にぶちまけるのは流石にまずい――と、ミドリは思っているのだろう。
言葉は少ないのに、シロを引っ張る指先がやけに必死だ。
シロは少し首をかしげたが、ミドリの声の温度で察したのか、それ以上は聞かなかった。
落とし穴ゾーンを抜けるために、ふたりはぽてぽてと歩みを進めた。
穴の縁を避ける足取りは、さっきよりも慎重だ。
他愛もない会話をしながら進んでいると、少し色の濃い芝生が生えている場所にたどり着いた。
緑が深く、葉先が短い。踏まれても立ち上がるような、妙な弾力がある。
「ここちがうねー?」
「ここ……ふわふわ……」
「ほんとだーーー!!」
シロがしゃがみ込み、芝生に両手を沈めた。
指が草の上を滑るたびに、ふわっと返ってくる。まるで布団みたいに柔らかい。
目がきらきらして、頬が少しだけ上がる。
ミドリも、遅れて同じように触った。
最初は恐る恐る。次に、掌を押し当てて――小さく息を吐く。
「なんかぽかぽかしてきた」
「ねもい……」
「しろもー……ねよっか」
「うん……」
歩いて疲れたところに、フカフカの芝生。
暑くもなく寒くもない、ちょうどいい日差し。
風も弱く、耳に届くのは葉のこすれる音と、遠くの森のざわめきだけ。
ここはシュウが“昼寝ポイント”として品種改良した芝生を植えており、さらに快眠の魔法陣まで設置して、たまに寝ている場所なのだ。
誰も来ることはないだろうと、魔法陣は設置したまま。
だから――ふたりが睡魔に囚われるのは、明らかだった。
シロが先に倒れるように横になり、芝生に頬を埋める。
ミドリは少し遅れて、丸まるように座り、そこから崩れるみたいに寝そべった。
目を閉じるまでが早い。まるでスイッチを切るみたいに、ふっと力が抜けた。
芝生は優しく、魔法陣は容赦がない。
ふたりはそのまま、深い眠りへ落ちていった。
数時間が経ち、空は真っ赤に染まっていた。
西の端が燃えて、雲が薄いオレンジに透けている。
芝生の上の影が長く伸び、ふたりの小さな輪郭を地面に描いていた。
シロとミドリは、変わらず眠っている。
シロは腕を広げたまま、口を少し開けている。
ミドリは小さく丸まり、髪が頬にかかっている。どちらも、可愛い寝息だけが規則正しい。
「探知魔法で庭にいるのは分かっていたが、いつまで遊んでるのかと思ったら……ここで寝てたのか」
少し呆れた声。
芝生の影が揺れたかと思うと、シュウが立っていた。
夕焼けを背にしているせいで顔は影になるが、ふたりの寝顔を見る目つきは柔らかい。
「……よいしょっと」
シュウはまずシロを抱き上げた。
起こさないように、腕の下に手を差し入れて、体を浮かせる。
シロは一瞬だけ眉をひそめたが、抱えられた温度に安心したのか、すぐに表情がほどける。
次にミドリ。
丸まっている背中を支えて、ゆっくり持ち上げる。
ミドリは小さく「……ん」と喉を鳴らして、シュウの服に頬を寄せた。
シュウは足音を殺して、家のほうへ向かう。
夕焼けの赤が薄れていく中、庭の芝生だけが、最後までふわふわと光を抱いていた。
そして、ふたりの散歩は――“寝落ち”という形で幕を閉じた。
雨で崩れた跡みたいに見えるが、土の縁が妙にきれいで――手が入っているのが分かる。
「ここは! ……なんだっけ?」
「くれねぇ、が……おにーちゃ……をおとす?」
「それだ! またやりたいねー」
「ぼく……えんりょ、する……」
ここは、ミドリとシロとクレバスが結託して、シュウにイタズラをしようとして使った場所である。
作戦はこうだ。
ミドリがシュウに肩車をしてもらい、両手でシュウの目を隠す。
シロがシュウと手をつないで誘導し、進む先の地面を――クレバスが穴を掘って落とす。
子どもらしい、完璧な計画だったが……。
結果は、惨敗だった。
シュウが落とし穴を避けるために、普通とは違う動きをした。
あまりに滑らかで、あまりに自然で、避けたことすら気づかせない動き。
しかし肩車の上のミドリには、それが“船の急旋回”みたいに効いた。
ミドリは顔色が青くなり、肩車の上でぐらりと揺れて、乗り物酔いに近い症状を引き起こした。
シロはというと、シュウの動きに置いていかれて足がもつれ、落とし穴を避けきれず――穴に落ちて泥だらけ。
そしてクレバスは、尻尾を巻いて叱られ、1週間オヤツ抜きになった。
ミドリからすると、この落とし穴たちは苦い思い出なのだ。
穴を見るだけで、あの“ぐわん”とした気持ち悪さが、喉の奥に戻ってくる。
「あれ、だめ……つぎ、でる」
「なにがー?」
「ないしょ……」
直前に食べた食事を、シュウの頭の上にぶちまけるのは流石にまずい――と、ミドリは思っているのだろう。
言葉は少ないのに、シロを引っ張る指先がやけに必死だ。
シロは少し首をかしげたが、ミドリの声の温度で察したのか、それ以上は聞かなかった。
落とし穴ゾーンを抜けるために、ふたりはぽてぽてと歩みを進めた。
穴の縁を避ける足取りは、さっきよりも慎重だ。
他愛もない会話をしながら進んでいると、少し色の濃い芝生が生えている場所にたどり着いた。
緑が深く、葉先が短い。踏まれても立ち上がるような、妙な弾力がある。
「ここちがうねー?」
「ここ……ふわふわ……」
「ほんとだーーー!!」
シロがしゃがみ込み、芝生に両手を沈めた。
指が草の上を滑るたびに、ふわっと返ってくる。まるで布団みたいに柔らかい。
目がきらきらして、頬が少しだけ上がる。
ミドリも、遅れて同じように触った。
最初は恐る恐る。次に、掌を押し当てて――小さく息を吐く。
「なんかぽかぽかしてきた」
「ねもい……」
「しろもー……ねよっか」
「うん……」
歩いて疲れたところに、フカフカの芝生。
暑くもなく寒くもない、ちょうどいい日差し。
風も弱く、耳に届くのは葉のこすれる音と、遠くの森のざわめきだけ。
ここはシュウが“昼寝ポイント”として品種改良した芝生を植えており、さらに快眠の魔法陣まで設置して、たまに寝ている場所なのだ。
誰も来ることはないだろうと、魔法陣は設置したまま。
だから――ふたりが睡魔に囚われるのは、明らかだった。
シロが先に倒れるように横になり、芝生に頬を埋める。
ミドリは少し遅れて、丸まるように座り、そこから崩れるみたいに寝そべった。
目を閉じるまでが早い。まるでスイッチを切るみたいに、ふっと力が抜けた。
芝生は優しく、魔法陣は容赦がない。
ふたりはそのまま、深い眠りへ落ちていった。
数時間が経ち、空は真っ赤に染まっていた。
西の端が燃えて、雲が薄いオレンジに透けている。
芝生の上の影が長く伸び、ふたりの小さな輪郭を地面に描いていた。
シロとミドリは、変わらず眠っている。
シロは腕を広げたまま、口を少し開けている。
ミドリは小さく丸まり、髪が頬にかかっている。どちらも、可愛い寝息だけが規則正しい。
「探知魔法で庭にいるのは分かっていたが、いつまで遊んでるのかと思ったら……ここで寝てたのか」
少し呆れた声。
芝生の影が揺れたかと思うと、シュウが立っていた。
夕焼けを背にしているせいで顔は影になるが、ふたりの寝顔を見る目つきは柔らかい。
「……よいしょっと」
シュウはまずシロを抱き上げた。
起こさないように、腕の下に手を差し入れて、体を浮かせる。
シロは一瞬だけ眉をひそめたが、抱えられた温度に安心したのか、すぐに表情がほどける。
次にミドリ。
丸まっている背中を支えて、ゆっくり持ち上げる。
ミドリは小さく「……ん」と喉を鳴らして、シュウの服に頬を寄せた。
シュウは足音を殺して、家のほうへ向かう。
夕焼けの赤が薄れていく中、庭の芝生だけが、最後までふわふわと光を抱いていた。
そして、ふたりの散歩は――“寝落ち”という形で幕を閉じた。
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