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ぼっちと幼女と邪神
ぼっちと邪神とユキ+幕間
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この剣、どうするか……。
亜空間に仕舞っておいて、何かあったときに取り出せばいいか。
「まあ、考えても分からないから一旦保留だな」
「そうじゃのう。ユキ、お主はこの先どうするのじゃ?」
ユキ……? 雪ん子のことか?
呼び名が付くと、急に“誰か”として部屋に馴染む。悪くない。
「私、行くとこないの……」
「安心しろ、ユキ。お前のことは雪の女王から頼まれている」
「おかあさん……」
頼まれてしまったからなぁ……。
シロとミドリにも賛成かどうか聞こうとしたが――。
リビングのど真ん中で、シロが大の字になって寝ている。
腕も脚も投げ出して、毛皮の上で堂々とした寝相だ。
その右上あたりでミドリが丸まって寝ている……大じゃなくて、犬の字だな、こりゃ。
丸まってるのに、しっかりと場所は取っている。
寝ていると、本当に静かだ。
普段の「おにく!」だの「めし!」だのが嘘みたいで、聞こえるのは呼吸と、どこかの木が軋む音ぐらいだ。
ユキはその光景を、少し離れたところからじっと見ていた。
手元のかき氷の器はもう空で、白い指先が縁をなぞるみたいに触れている。
……まずは、暮らしに慣れさせる。
剣のことは、それからだ。
~幕話~ 幼女のお散歩
人類にとって最も危険な場所である『魔の森』の最深部。
常人なら空気を吸うだけで死ぬと言われる土地で――今日も、危険度に見合わないほど、のんびりとした空気が流れていた。
「にーにーー!!」
「なぁ、シロ。耳元で叫ばなくても聞こえてるからな?」
「おそといきたい!」
シュウは手元の作業を止め、短く息を吐いてからシロを見た。
シロは両手を上げて、跳ねる寸前の猫みたいに待ち構えている。
「外って街か?」
「おにわ!」
「いいぞ、行ってこい」
許可が下りた瞬間、シロはシュウの腕から「トウッ!」と声をあげて飛び降りた。
着地は上手い。踵からいかず、足裏全体でぺたっと受けて、すぐに走り出す。
それを見送ったシュウが、指先だけで何やら魔力を練り始めた。
空気が一瞬、薄く張る。見えない膜が、家の外周へ流れていくような感覚。
「(庭って言っても何もないが、一応対物理障壁と魔法障壁を全力で掛けておこう)」
こうしてシロの冒険は始まった。
……始まる前から、ほぼ完璧な安全対策つきで。
「おにわ! みどり!」
「おねーちゃ……ねむい……」
元気なシロとは対照に、ミドリのテンションは低い。
瞼が重そうで、歩くたびにまつ毛がゆっくり上下する。
夜更かしの痕跡は、目のこすり方に出る。
どうやら昨夜、クレバスと話し込んでいたらしい。
ミドリにも、物理障壁と魔法障壁はしっかり展開されていた。
体の輪郭に沿うように、薄い膜が何層も重なる。触れてもわからない程度の存在感なのに、通すものは通さない。
「なにしよーねー?」
「ひなたぼっこ……」
「やだ! ねちゃう!」
外に出たいと言って外に出てきたが、何をするかは決めていなかったようだ。
シロはとにかく“動きたい”だけで、ミドリは“眠たい”が先に立つ。
「いもむしごっこ……?」
「それもねちゃう」
「さなぎ……」
「ちょうちょ!」
シロの案が、勝手に進化していく。
ミドリはぼんやりした顔のまま、シロの言葉だけを追っている。
次の瞬間。
ミドリの目が、ぱちりと開いた。
「おねーちゃ……」
「なぁにー?」
「あるいて、みつけよ?」
「いいねー! じゃあ、あっち!」
ぽてぽてと歩き始めた2人。
庭は広い。2km四方ほどある。
地面は柔らかく少し湿っていて、踏むと小さく沈む。足跡が残るのが楽しいのか、シロはわざと少しだけ強く踏む。
周囲には魔物除けの結界と、悪意ある侵入者を迎撃する自動迎撃魔法が展開されている。
龍王でも攻めてこない限り、この“お庭”の平和は揺るがないだろう。
「みみずだ……」
「にょろにょろしてるね!」
ミドリがミミズを見つけるや否や、シロがしゃがんで、そのまま素手でつまみ上げた。
ミミズは「離してくれ」と言わんばかりに、シロの手の中でうねっている。指の隙間を探して、するりと逃げようとする。
「はなしてあげて…」
「なんでー?」
「おしごとちゅうなんだって」
前にシュウが言っていた――ミミズは土を良くしてくれる仕事をしている。
ミドリの説明は短いが、要点は外さない。
シロはミミズを見下ろし、ミミズはシロを見上げない。
でも、ちょっとだけ止まった。
「そっかー……めんねー?」
「がんばってね……」
そう言って、シロはミミズをそっと元の場所へ戻した。
ミミズは一度だけ身をくねらせて、土の中へ潜っていく。最後に見えたのは、つやつやした背中の一部だけだった。
2人は顔を上げ、また同じ歩幅で歩き出す。
草の匂いと、冷たい土の匂いが、ふわっと鼻をくすぐった。
2人の散歩はまだまだ続く。
亜空間に仕舞っておいて、何かあったときに取り出せばいいか。
「まあ、考えても分からないから一旦保留だな」
「そうじゃのう。ユキ、お主はこの先どうするのじゃ?」
ユキ……? 雪ん子のことか?
呼び名が付くと、急に“誰か”として部屋に馴染む。悪くない。
「私、行くとこないの……」
「安心しろ、ユキ。お前のことは雪の女王から頼まれている」
「おかあさん……」
頼まれてしまったからなぁ……。
シロとミドリにも賛成かどうか聞こうとしたが――。
リビングのど真ん中で、シロが大の字になって寝ている。
腕も脚も投げ出して、毛皮の上で堂々とした寝相だ。
その右上あたりでミドリが丸まって寝ている……大じゃなくて、犬の字だな、こりゃ。
丸まってるのに、しっかりと場所は取っている。
寝ていると、本当に静かだ。
普段の「おにく!」だの「めし!」だのが嘘みたいで、聞こえるのは呼吸と、どこかの木が軋む音ぐらいだ。
ユキはその光景を、少し離れたところからじっと見ていた。
手元のかき氷の器はもう空で、白い指先が縁をなぞるみたいに触れている。
……まずは、暮らしに慣れさせる。
剣のことは、それからだ。
~幕話~ 幼女のお散歩
人類にとって最も危険な場所である『魔の森』の最深部。
常人なら空気を吸うだけで死ぬと言われる土地で――今日も、危険度に見合わないほど、のんびりとした空気が流れていた。
「にーにーー!!」
「なぁ、シロ。耳元で叫ばなくても聞こえてるからな?」
「おそといきたい!」
シュウは手元の作業を止め、短く息を吐いてからシロを見た。
シロは両手を上げて、跳ねる寸前の猫みたいに待ち構えている。
「外って街か?」
「おにわ!」
「いいぞ、行ってこい」
許可が下りた瞬間、シロはシュウの腕から「トウッ!」と声をあげて飛び降りた。
着地は上手い。踵からいかず、足裏全体でぺたっと受けて、すぐに走り出す。
それを見送ったシュウが、指先だけで何やら魔力を練り始めた。
空気が一瞬、薄く張る。見えない膜が、家の外周へ流れていくような感覚。
「(庭って言っても何もないが、一応対物理障壁と魔法障壁を全力で掛けておこう)」
こうしてシロの冒険は始まった。
……始まる前から、ほぼ完璧な安全対策つきで。
「おにわ! みどり!」
「おねーちゃ……ねむい……」
元気なシロとは対照に、ミドリのテンションは低い。
瞼が重そうで、歩くたびにまつ毛がゆっくり上下する。
夜更かしの痕跡は、目のこすり方に出る。
どうやら昨夜、クレバスと話し込んでいたらしい。
ミドリにも、物理障壁と魔法障壁はしっかり展開されていた。
体の輪郭に沿うように、薄い膜が何層も重なる。触れてもわからない程度の存在感なのに、通すものは通さない。
「なにしよーねー?」
「ひなたぼっこ……」
「やだ! ねちゃう!」
外に出たいと言って外に出てきたが、何をするかは決めていなかったようだ。
シロはとにかく“動きたい”だけで、ミドリは“眠たい”が先に立つ。
「いもむしごっこ……?」
「それもねちゃう」
「さなぎ……」
「ちょうちょ!」
シロの案が、勝手に進化していく。
ミドリはぼんやりした顔のまま、シロの言葉だけを追っている。
次の瞬間。
ミドリの目が、ぱちりと開いた。
「おねーちゃ……」
「なぁにー?」
「あるいて、みつけよ?」
「いいねー! じゃあ、あっち!」
ぽてぽてと歩き始めた2人。
庭は広い。2km四方ほどある。
地面は柔らかく少し湿っていて、踏むと小さく沈む。足跡が残るのが楽しいのか、シロはわざと少しだけ強く踏む。
周囲には魔物除けの結界と、悪意ある侵入者を迎撃する自動迎撃魔法が展開されている。
龍王でも攻めてこない限り、この“お庭”の平和は揺るがないだろう。
「みみずだ……」
「にょろにょろしてるね!」
ミドリがミミズを見つけるや否や、シロがしゃがんで、そのまま素手でつまみ上げた。
ミミズは「離してくれ」と言わんばかりに、シロの手の中でうねっている。指の隙間を探して、するりと逃げようとする。
「はなしてあげて…」
「なんでー?」
「おしごとちゅうなんだって」
前にシュウが言っていた――ミミズは土を良くしてくれる仕事をしている。
ミドリの説明は短いが、要点は外さない。
シロはミミズを見下ろし、ミミズはシロを見上げない。
でも、ちょっとだけ止まった。
「そっかー……めんねー?」
「がんばってね……」
そう言って、シロはミミズをそっと元の場所へ戻した。
ミミズは一度だけ身をくねらせて、土の中へ潜っていく。最後に見えたのは、つやつやした背中の一部だけだった。
2人は顔を上げ、また同じ歩幅で歩き出す。
草の匂いと、冷たい土の匂いが、ふわっと鼻をくすぐった。
2人の散歩はまだまだ続く。
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