異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

文字の大きさ
44 / 56
ぼっちと幼女と邪神

ぼっちと邪神とユキ+幕間

しおりを挟む
 この剣、どうするか……。
 亜空間に仕舞っておいて、何かあったときに取り出せばいいか。

「まあ、考えても分からないから一旦保留だな」
「そうじゃのう。ユキ、お主はこの先どうするのじゃ?」

 ユキ……? 雪ん子のことか?
 呼び名が付くと、急に“誰か”として部屋に馴染む。悪くない。

「私、行くとこないの……」
「安心しろ、ユキ。お前のことは雪の女王から頼まれている」
「おかあさん……」

 頼まれてしまったからなぁ……。
 シロとミドリにも賛成かどうか聞こうとしたが――。

 リビングのど真ん中で、シロが大の字になって寝ている。
 腕も脚も投げ出して、毛皮の上で堂々とした寝相だ。
 その右上あたりでミドリが丸まって寝ている……大じゃなくて、犬の字だな、こりゃ。
 丸まってるのに、しっかりと場所は取っている。

 寝ていると、本当に静かだ。
 普段の「おにく!」だの「めし!」だのが嘘みたいで、聞こえるのは呼吸と、どこかの木が軋む音ぐらいだ。

 ユキはその光景を、少し離れたところからじっと見ていた。
 手元のかき氷の器はもう空で、白い指先が縁をなぞるみたいに触れている。

 ……まずは、暮らしに慣れさせる。
 剣のことは、それからだ。


 ~幕話~ 幼女のお散歩


 人類にとって最も危険な場所である『魔の森』の最深部。
 常人なら空気を吸うだけで死ぬと言われる土地で――今日も、危険度に見合わないほど、のんびりとした空気が流れていた。

「にーにーー!!」
「なぁ、シロ。耳元で叫ばなくても聞こえてるからな?」
「おそといきたい!」

 シュウは手元の作業を止め、短く息を吐いてからシロを見た。
 シロは両手を上げて、跳ねる寸前の猫みたいに待ち構えている。

「外って街か?」
「おにわ!」
「いいぞ、行ってこい」

 許可が下りた瞬間、シロはシュウの腕から「トウッ!」と声をあげて飛び降りた。
 着地は上手い。踵からいかず、足裏全体でぺたっと受けて、すぐに走り出す。

 それを見送ったシュウが、指先だけで何やら魔力を練り始めた。
 空気が一瞬、薄く張る。見えない膜が、家の外周へ流れていくような感覚。

「(庭って言っても何もないが、一応対物理障壁と魔法障壁を全力で掛けておこう)」

 こうしてシロの冒険は始まった。
 ……始まる前から、ほぼ完璧な安全対策つきで。

「おにわ! みどり!」
「おねーちゃ……ねむい……」

 元気なシロとは対照に、ミドリのテンションは低い。
 瞼が重そうで、歩くたびにまつ毛がゆっくり上下する。

 夜更かしの痕跡は、目のこすり方に出る。
 どうやら昨夜、クレバスと話し込んでいたらしい。

 ミドリにも、物理障壁と魔法障壁はしっかり展開されていた。
 体の輪郭に沿うように、薄い膜が何層も重なる。触れてもわからない程度の存在感なのに、通すものは通さない。

「なにしよーねー?」
「ひなたぼっこ……」
「やだ! ねちゃう!」

 外に出たいと言って外に出てきたが、何をするかは決めていなかったようだ。
 シロはとにかく“動きたい”だけで、ミドリは“眠たい”が先に立つ。

「いもむしごっこ……?」
「それもねちゃう」
「さなぎ……」
「ちょうちょ!」

 シロの案が、勝手に進化していく。
 ミドリはぼんやりした顔のまま、シロの言葉だけを追っている。

 次の瞬間。
 ミドリの目が、ぱちりと開いた。

「おねーちゃ……」
「なぁにー?」
「あるいて、みつけよ?」
「いいねー! じゃあ、あっち!」

 ぽてぽてと歩き始めた2人。
 庭は広い。2km四方ほどある。
 地面は柔らかく少し湿っていて、踏むと小さく沈む。足跡が残るのが楽しいのか、シロはわざと少しだけ強く踏む。

 周囲には魔物除けの結界と、悪意ある侵入者を迎撃する自動迎撃魔法が展開されている。
 龍王でも攻めてこない限り、この“お庭”の平和は揺るがないだろう。

「みみずだ……」
「にょろにょろしてるね!」

 ミドリがミミズを見つけるや否や、シロがしゃがんで、そのまま素手でつまみ上げた。
 ミミズは「離してくれ」と言わんばかりに、シロの手の中でうねっている。指の隙間を探して、するりと逃げようとする。

「はなしてあげて…」
「なんでー?」
「おしごとちゅうなんだって」

 前にシュウが言っていた――ミミズは土を良くしてくれる仕事をしている。
 ミドリの説明は短いが、要点は外さない。

 シロはミミズを見下ろし、ミミズはシロを見上げない。
 でも、ちょっとだけ止まった。

「そっかー……めんねー?」
「がんばってね……」

 そう言って、シロはミミズをそっと元の場所へ戻した。
 ミミズは一度だけ身をくねらせて、土の中へ潜っていく。最後に見えたのは、つやつやした背中の一部だけだった。

 2人は顔を上げ、また同じ歩幅で歩き出す。
 草の匂いと、冷たい土の匂いが、ふわっと鼻をくすぐった。

 2人の散歩はまだまだ続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...