死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

藤原遊

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IFループの中であったかもしれない世界

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医務室に静寂が訪れていた。
スフィアが息を引き取った瞬間、誰もがその場で立ち尽くし、動けなくなっていた。

カインはスフィアの冷たくなった手を握りしめ、震える声で彼女の名を呼び続けていた。
レオンはスフィアの髪から落ちたリボンを握りしめ、涙を流していた。

エリオットは、ただ静かにその場を見守っていた。

(泣くのは……まだ早い。)

彼はそう自分に言い聞かせ、立ち上がった。

「……俺が、お墓の手配をする。」

その言葉に、カインが顔を上げた。
赤く腫れた目、涙の跡――普段の彼からは想像もつかない姿だった。

「……頼む、エリオット。」

エリオットは無言で頷くと、ギルドを後にした。

ギルドの受付に行くと、既にスフィアの最期の話は街中に広まっていた。

「スフィアさんが……街を守るために……。」

受付の女性が震える声でそう言うのを聞いても、エリオットは淡々と手続きを進めた。

「墓地の手配をお願いします。冒険者としての埋葬を。」

「……すぐに手配いたします。」

すべてが形式的なやり取りだったが、それが今のエリオットにとっては救いだった。
感情を挟む余地がない方が、彼は平静を保てた。

手続きを終えたエリオットは、ユリウスと共にスフィアの家へ向かった。

「……一人で来るつもりだったのか?」

玄関先でユリウスが問いかけると、エリオットは小さく頷いた。

「こういうのは、俺の役目だと思ってた。」

ユリウスは静かに首を振った。

「一人で抱え込むな。スフィアのことは、俺たち全員の問題だ。」

その言葉に、エリオットは微かに眉を下げた。

「……ありがとう。」

二人は家の中へ入ると、部屋に漂うスフィアの香りがふわりと鼻をかすめた。
机の上には、読みかけの本や刺繍の練習用布地が並んでいる。

ユリウスは部屋を見回し、淡々と物を片付け始めた。

「……彼女のものは、一つ残らず墓地へ運ぼう。」

「そうだな。」

エリオットも本を手に取り、彼女のメモ書きを確認する。

「こういうの……残しておくのは、酷だよな。」

「そうだな。」

二人は無言で作業を進め、静かに物を片付けていった。
まるで何かを一つ一つ、丁寧に見送るかのように。

すべての作業が終わる頃、日はすっかり暮れていた。
最後にスフィアのペンダントの空箱を棚に戻すと、ユリウスが窓を開けた。

「風を入れておこう。……これで、終わりだな。」

エリオットは小さく頷いた。

「ありがとう、ユリウス。」

ユリウスは微笑み、軽く彼の肩を叩いた。

「無理するなよ、エリオット。」

「……分かってる。」

ユリウスが部屋を出た瞬間、エリオットはその場に立ち尽くした。
部屋にはもう、スフィアの姿はなかった。

エリオットは机の前に座り、両手で顔を覆った。
やるべきことはすべて終えた。

それでも――

「……スフィア……。」

その名を呼んだ瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出した。
これまで抑えていた感情が、胸の奥から押し寄せてくる。

「……ありがとう……約束守れなくてごめんね……幸せになってね……。」

スフィアの最後の言葉が、何度も耳に蘇る。

「……俺に向けて言ったんだよな……?」

エリオットは震える声で呟き、拳を握りしめた。

「……幸せになんて……なれるわけがないだろ……。」

涙が机の上にぽつりと落ちる。
彼は肩を震わせながら、声を押し殺して泣き続けた。
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