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6章 魔力異常
⑤
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※イアン視点
遺跡の部屋で床が崩れたあの瞬間、冷静でいなければならないはずの自分が、わずかに動揺していたのをイアンは覚えている。
「落ちる!?イアン、しっかり掴まって!」
アリアの声が耳に響いた。
そして次の瞬間、何の迷いもなく彼女は自分を抱き寄せた。その腕は力強く、迷いがなかった。気付けばイアンの体はアリアの腕の中に包まれていた。
自分を守るように抱きしめる――それは、イアンがこれまで経験したことのない感覚だった。
落下の衝撃が止まり、彼女の腕から解放されると、イアンは胸の奥に小さな違和感が生まれていることに気付いた。
「ねえ、イアン、大丈夫?」
アリアが明るい声で問いかける。
「……問題ありません。」
彼は何でもないふりをして答えた。
だが、心の中では落ち着かない感情が渦巻いていた。
(何だったのだ、この感覚は。)
これまでイアンの人生において、誰かに抱きしめられることなど一度もなかった。彼の「呪い」が触れる相手を傷つけてしまうため、それは禁忌だった。触れることすら避けられてきた彼にとって、あの瞬間はあまりにも異質だった。
アリアにとって、それはきっと「助ける」という自然な行動だったのだろう。彼女の無邪気な表情からは特別な意図を感じることはできない。
だが、イアンにはそう割り切ることができなかった。
(彼女だけが、私に触れることができる存在。)
その事実が、呪いに縛られてきた彼の心を揺さぶる。触れることを恐れず、迷いなく抱きしめてくれたこと。――それが、かつて抱いたことのない温かさを彼にもたらしていた。
数歩後ろを歩くアリアの笑顔がふと目に入る。
「ねえ、イアン!ぼーっとしてないで早く来なよ!」
彼女が振り返って手を振る。
「……すぐに。」
短く答える。
だがその一言に、自分でも驚くほど多くの感情が混じっていた。
アリアの存在は、自分の過去とはあまりに異質で、恐ろしいほど明るい光を放っている。だが、それを嫌だとは思えない。むしろ、その光に触れてみたい――そんな淡い感情が胸の奥で生まれ始めていることに、イアンは気付き始めていた。
(この気持ちは何なのだろう。)
その答えを探しながら、イアンは前を行くアリアの背中を見つめ続けた。
遺跡の部屋で床が崩れたあの瞬間、冷静でいなければならないはずの自分が、わずかに動揺していたのをイアンは覚えている。
「落ちる!?イアン、しっかり掴まって!」
アリアの声が耳に響いた。
そして次の瞬間、何の迷いもなく彼女は自分を抱き寄せた。その腕は力強く、迷いがなかった。気付けばイアンの体はアリアの腕の中に包まれていた。
自分を守るように抱きしめる――それは、イアンがこれまで経験したことのない感覚だった。
落下の衝撃が止まり、彼女の腕から解放されると、イアンは胸の奥に小さな違和感が生まれていることに気付いた。
「ねえ、イアン、大丈夫?」
アリアが明るい声で問いかける。
「……問題ありません。」
彼は何でもないふりをして答えた。
だが、心の中では落ち着かない感情が渦巻いていた。
(何だったのだ、この感覚は。)
これまでイアンの人生において、誰かに抱きしめられることなど一度もなかった。彼の「呪い」が触れる相手を傷つけてしまうため、それは禁忌だった。触れることすら避けられてきた彼にとって、あの瞬間はあまりにも異質だった。
アリアにとって、それはきっと「助ける」という自然な行動だったのだろう。彼女の無邪気な表情からは特別な意図を感じることはできない。
だが、イアンにはそう割り切ることができなかった。
(彼女だけが、私に触れることができる存在。)
その事実が、呪いに縛られてきた彼の心を揺さぶる。触れることを恐れず、迷いなく抱きしめてくれたこと。――それが、かつて抱いたことのない温かさを彼にもたらしていた。
数歩後ろを歩くアリアの笑顔がふと目に入る。
「ねえ、イアン!ぼーっとしてないで早く来なよ!」
彼女が振り返って手を振る。
「……すぐに。」
短く答える。
だがその一言に、自分でも驚くほど多くの感情が混じっていた。
アリアの存在は、自分の過去とはあまりに異質で、恐ろしいほど明るい光を放っている。だが、それを嫌だとは思えない。むしろ、その光に触れてみたい――そんな淡い感情が胸の奥で生まれ始めていることに、イアンは気付き始めていた。
(この気持ちは何なのだろう。)
その答えを探しながら、イアンは前を行くアリアの背中を見つめ続けた。
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