魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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13章 賢者の塔

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ローブの男を倒したアリアとイアンは、塔の記録室を後にし、さらに奥へと進んでいた。

「これで終わり……じゃないよね?」

アリアが剣を収めながら、少し不安げに呟く。

「おそらくな。ここまでたどり着いたのだから、この先に真実が待っているだろう。」

イアンが静かに答える。

二人が歩を進めると、目の前には一枚の巨大な扉が現れた。その扉には、これまでのどの結界よりも強烈な魔力が込められているのが感じられる。

「これが……最奥部か。」

アリアが剣を手にしながら扉を睨む。

イアンが扉に近づき、注意深く観察する。

「この扉もまた、選ばれし刃と魔族の血の力を必要とする仕掛けだ。」

「じゃあ、また協力して開けるしかないってことね!」

アリアが剣を構え直し、イアンも杖を手にした。

二人が力を合わせると、剣と魔力の共鳴が扉に流れ込み、刻まれた魔法陣が輝き始める。

だが、扉が完全に開く直前、強烈な魔力の逆流が二人に襲いかかった。

「くっ……!」

「負けるもんか!」

アリアが剣を振り、逆流を押し返そうとするが、強大な力に圧され、膝をつきそうになる。

「アリア、私が支える。君は剣に集中しろ!」

イアンが自身の魔力をさらに解放し、剣の力を補助する。その結果、扉の逆流が徐々に弱まり、ついに扉が開かれた。

「やった……開いた!」

アリアが息を切らしながら微笑むと、イアンは静かに頷いた。

二人が扉の先に踏み込むと、そこには広大な空間が広がっていた。中心には黒曜石の台座があり、その上には古びた書物が一冊置かれている。

「これが……塔の秘密か。」

イアンが書物に近づき、注意深くその表紙を観察する。

「『調停の書』……?」

「調停の書って何?」

アリアが首をかしげると、イアンは慎重にページをめくり始めた。

「これは……魔族と人間の間で結ばれた契約に関する記録だ。この塔が建てられた理由、そして選ばれし刃の存在意義が記されている。」

「剣の存在意義って……?」

アリアが真剣な表情で尋ねる。

「選ばれし刃は、魔族と人間の力を結びつけるために作られた道具だ。だが、同時に、その力が暴走しないよう『調停』するための鍵でもある。」

「調停……?」

「そうだ。この剣は、魔族と人間の力を統合し、制御するために作られた。だが、それには代償が伴う。」

イアンが険しい表情で言葉を続ける。

「剣を使うたびに持ち主の命が削られるのは、剣がその力を維持するためにエネルギーを必要としているからだ。そして、そのエネルギーの本質は――。」

イアンがページをめくる手を止め、アリアを見つめた。

「持ち主の『魂』だ。」

「魂を……削るって……?」

アリアが剣を見つめながら呟く。

「君が剣を使えば使うほど、その力は強大になる。だが、それと引き換えに君自身の魂が削られ、いずれ存在そのものが消滅する危険がある。」

イアンの言葉に、アリアは目を見開いた。

「そんな……でも、剣を使わなきゃ、戦えないよ……。」

彼女の声は震えていたが、その目には決意の色も宿っていた。

「アリア……。」

「私は、この剣を手放すつもりはないよ。だって、この剣があればみんなを守れる。イアンだって、街のみんなだって!」

彼女の言葉に、イアンは一瞬だけ言葉を失った。しかし、すぐに静かに頷いた。

「君の決意は分かった。だが、その代償が君の命そのものであることを忘れるな。」

「うん……分かってる。」

二人が調停の書を調べ終えたその時、塔全体が揺れるような轟音が響いた。

「何……!?」

アリアが剣を構えると、暗闇の中から新たな影が現れる。それは、以前現れたローブの男とは異なる、より巨大で圧倒的な威圧感を持つ存在だった。

「こいつ……!」

イアンが杖を構えながら低く呟く。

「選ばれし刃と調停の書を手にするつもりか……!」

影の正体が誰なのかはまだ分からない。しかし、その存在は、アリアとイアンに新たな試練をもたらすことは確実だった。
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