没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊

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第12章 学院への準備

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衣装部屋に運び込まれた木箱の山が、次々と開けられていく。
鮮やかな刺繍を施されたドレス、父レオポルトから贈られた装飾品、そして護身魔導銃。

「……これで、ようやく領主一族としての形が整いましたね」

グレーテが目を細めて言った。
鏡の中で、絹のリボンを結ばれた私は――見慣れぬ華やかさに、思わず息を呑む。

(……これでもう、逃げられない。学院に行くんだ、私……)

胸の奥がきゅっと引き締まる。

そのとき、執務室から顔を出したリヒャルトが、書類を抱えたままおずおずと尋ねてきた。

「エレオノーラ様。領主一族であれば、学院には一人だけ大人を同行させられます。……どなたをお選びになりますか?」

「えっ……」

思わず固まる。学院、つまり“領地外”へ出る。たったひとりの同行者を決めるだなんて、想像もしていなかった。

「……じゃあ、グレーテに」

即答すると、乳母は首を横に振った。

「申し訳ありません、お嬢様。わたくしがついていけば――その瞬間に、エレオノーラ様の出生が……知られてしまいます」

「……っ」

心臓がずきんと跳ねた。確かに、母の専属であり、幼少から世話をしてきた彼女が学院に同行すれば、周囲が察するに違いない。

となったら護衛?
文官のリヒャルトを連れていくと、領政が止まってしまう。

「では、ヴィルヘルムは……?」

「私は旧王都派のまとめ役。クロイツと言えば王都ではすぐに正体がわかります。
エレオノーラ様に忠誠を誓っていることが広まれば、むしろ狙われましょう」

「じゃ、じゃあリヒャルト……?」

「わ、私ですか!?」

眼鏡をずり落としながら慌てる彼に、グレーテがさらりと言葉を添えた。

「未婚の文官がご一緒するのは、外聞が悪うございます」

「……あれ……?」

途方に暮れた私の前に、すっと声が響いた。

「――でしたら、私が」

顔を上げると、イルマがきりりと背筋を伸ばして立っていた。
すでに学院を卒業している彼女は、私よりもずっと年上で、凛とした姿は大人の騎士そのものに見えた。

「イルマ?」

「護衛として、お傍に参ります。身の回りのお世話は得意ではありませんが……エレオノーラ様には、守りが必要です」

その言葉に、胸がじんと温かくなる。
思わず頷きながら笑みを返した。

「……そうね。私、服ぐらい自分で着られるし。なら、護衛がいい。イルマ、よろしくね」

「必ずや」

彼女の返事は短く、けれど剣よりも鋭い力強さがあった。

「私は、ディートフリート様の親戚筋です。傍系ですので、下位貴族ですが、名前で繋がりがわかります。後ろ盾の明示にもちょうど良いかと思われます」

グレーテもほっと息をつき、リヒャルトも安堵の笑みを浮かべる。

こうして、私の学院への旅立ちは――イルマという護衛を伴って、ようやく形を成したのだった。
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