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第12章 学院への準備
4
マリアンナと談笑していたとき、不意にその言葉が出た。
「……子どもがいますので、なかなか動けませんが」
「……え?」
耳を疑い、私は思わず固まった。
さらりと告げられたその一言は、まるで雷のように胸を貫いた。
「ヴィルヘルムの……?」
「ええ」
マリアンナは涼しい顔で頷く。
その隣でヴィルヘルムも、当然だと言わんばかりに淡々としている。
衝撃のあまり、言葉が出なかった。
――ヴィルヘルムに、子どもがいる。
「エレオノーラ様」
リヒャルトが静かに口を挟む。
「洗礼式前の子どもの存在は、決して口外してはいけません。ユルゲン様のことも同様です」
「……どうして?」
問いかけると、答えたのはハルトマンだった。
「毒殺ですよ」
短く放たれた言葉に、背筋が凍った。
「領主一族を目指す者が複数いれば――それは必ず争いを生む。弱みと見なされれば、子どもの命はあっという間に狙われるのです」
ぞっとするほど冷たい現実。
私は息を呑んだ。
(……そうか。私が“レオポルトの子”として生き延びたのも……同じ理由……)
頭の中に、勝手な想像が浮かんでしまう。
――赤子の私を、イザベラお姉様の横に寝かせて。
「うちの子です」と微笑みながら乗り切った姿。洗礼式前で存在が知られていないからこそ、そういった無理が通ったのだろう。
彼らも命懸けだったはずなのに。
そんな危うい策で、守ろうとしたのだ。
(なんて……なんてお人好しな家族なんだろう)
胸がぎゅっと熱くなる。
……と同時に、気づいてしまった。
ヴィルヘルムは旧王都派をまとめる顔役であり、なおかつ私に忠誠を誓った。
だからこそ、敵対派閥から見れば、彼の存在そのものが格好の標的になる。
(部下だけじゃない……部下の家族まで、狙われるかもしれないんだ……)
その事実に打ちのめされそうになりながら、私は拳を握りしめた。
――守らなきゃ。
従ってくれる彼らを、そしてその家族まで。
(……秘密と危険に囲まれた世界だけど、私が背負うって決めたんだから)
静かに決意が芽生えていった。
「……子どもがいますので、なかなか動けませんが」
「……え?」
耳を疑い、私は思わず固まった。
さらりと告げられたその一言は、まるで雷のように胸を貫いた。
「ヴィルヘルムの……?」
「ええ」
マリアンナは涼しい顔で頷く。
その隣でヴィルヘルムも、当然だと言わんばかりに淡々としている。
衝撃のあまり、言葉が出なかった。
――ヴィルヘルムに、子どもがいる。
「エレオノーラ様」
リヒャルトが静かに口を挟む。
「洗礼式前の子どもの存在は、決して口外してはいけません。ユルゲン様のことも同様です」
「……どうして?」
問いかけると、答えたのはハルトマンだった。
「毒殺ですよ」
短く放たれた言葉に、背筋が凍った。
「領主一族を目指す者が複数いれば――それは必ず争いを生む。弱みと見なされれば、子どもの命はあっという間に狙われるのです」
ぞっとするほど冷たい現実。
私は息を呑んだ。
(……そうか。私が“レオポルトの子”として生き延びたのも……同じ理由……)
頭の中に、勝手な想像が浮かんでしまう。
――赤子の私を、イザベラお姉様の横に寝かせて。
「うちの子です」と微笑みながら乗り切った姿。洗礼式前で存在が知られていないからこそ、そういった無理が通ったのだろう。
彼らも命懸けだったはずなのに。
そんな危うい策で、守ろうとしたのだ。
(なんて……なんてお人好しな家族なんだろう)
胸がぎゅっと熱くなる。
……と同時に、気づいてしまった。
ヴィルヘルムは旧王都派をまとめる顔役であり、なおかつ私に忠誠を誓った。
だからこそ、敵対派閥から見れば、彼の存在そのものが格好の標的になる。
(部下だけじゃない……部下の家族まで、狙われるかもしれないんだ……)
その事実に打ちのめされそうになりながら、私は拳を握りしめた。
――守らなきゃ。
従ってくれる彼らを、そしてその家族まで。
(……秘密と危険に囲まれた世界だけど、私が背負うって決めたんだから)
静かに決意が芽生えていった。
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