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第10章 騎士の誓い
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街道の先で、突然、馬が高くいなないた。
「っ!?」
殿下の馬が驚いて前足を上げ、隣を走る俺の馬も巻き込まれるように暴れ出す。
反射的に手綱を引いた――が、間に合わなかった。
視界が傾き、世界がぐるりと回転する。
地面が迫る。
(うわ、落ちる落ちる落ち――!)
その瞬間、ぐっと腕を掴まれた。
衝撃の代わりに、強い力が体を引き寄せる。
「……危ない。」
低く落ち着いた声。
気づけば俺は、殿下の腕の中だった。
風の音が遠ざかる。
金の瞳が、間近にある。
まっすぐ、俺を見ている。
(ちょ、ちょっと待って! 近い近い近い!!)
息が詰まる距離。
肩に置かれた手は、驚くほど熱い。
外套越しでも体温が伝わってくる。
「怪我はないか。」
「だ、大丈夫です! はい、全然! ピンピンしてます!」
「そうか。」
殿下はゆっくりと手を離す。
けれど、指先がかすかに遅れた。
名残惜しむように、ほんの一瞬だけ。
(や、やめてくださいその間! 意味深すぎますから!!)
顔が熱くなるのを、風のせいにした。
絶対そうだ。日差しが強いからだ。
「君は、自分より他人を優先しすぎる。」
「え?」
「落ちる寸前、手綱ではなく、私の馬を気にしていた。」
(え、そんなとこ見てたの!?)
「……それが、君の良いところでもあり、危ういところでもある。」
金の瞳がまっすぐ俺を射抜く。
言葉が出ない。
視線を外せば負けな気がして、逆に固まる。
「……殿下、もしかして俺、怒られてます?」
「いいや。」
ゆっくりと、微笑んだ。
その笑みは、どこまでも穏やかで、どこまでも優しかった。
「ただ――君を見ていると、危険を忘れそうになる。」
「……は?」
殿下はそれ以上何も言わず、手綱を握り直す。
再び動き出した馬の足音が、鼓動と重なった。
(いや、だから近いし、その台詞は何!?
俺、守られた側なのになんでこっちが心拍数バグってるんですか!?)
風が吹き抜ける中、
俺の胸だけ、妙に暑かった。
「っ!?」
殿下の馬が驚いて前足を上げ、隣を走る俺の馬も巻き込まれるように暴れ出す。
反射的に手綱を引いた――が、間に合わなかった。
視界が傾き、世界がぐるりと回転する。
地面が迫る。
(うわ、落ちる落ちる落ち――!)
その瞬間、ぐっと腕を掴まれた。
衝撃の代わりに、強い力が体を引き寄せる。
「……危ない。」
低く落ち着いた声。
気づけば俺は、殿下の腕の中だった。
風の音が遠ざかる。
金の瞳が、間近にある。
まっすぐ、俺を見ている。
(ちょ、ちょっと待って! 近い近い近い!!)
息が詰まる距離。
肩に置かれた手は、驚くほど熱い。
外套越しでも体温が伝わってくる。
「怪我はないか。」
「だ、大丈夫です! はい、全然! ピンピンしてます!」
「そうか。」
殿下はゆっくりと手を離す。
けれど、指先がかすかに遅れた。
名残惜しむように、ほんの一瞬だけ。
(や、やめてくださいその間! 意味深すぎますから!!)
顔が熱くなるのを、風のせいにした。
絶対そうだ。日差しが強いからだ。
「君は、自分より他人を優先しすぎる。」
「え?」
「落ちる寸前、手綱ではなく、私の馬を気にしていた。」
(え、そんなとこ見てたの!?)
「……それが、君の良いところでもあり、危ういところでもある。」
金の瞳がまっすぐ俺を射抜く。
言葉が出ない。
視線を外せば負けな気がして、逆に固まる。
「……殿下、もしかして俺、怒られてます?」
「いいや。」
ゆっくりと、微笑んだ。
その笑みは、どこまでも穏やかで、どこまでも優しかった。
「ただ――君を見ていると、危険を忘れそうになる。」
「……は?」
殿下はそれ以上何も言わず、手綱を握り直す。
再び動き出した馬の足音が、鼓動と重なった。
(いや、だから近いし、その台詞は何!?
俺、守られた側なのになんでこっちが心拍数バグってるんですか!?)
風が吹き抜ける中、
俺の胸だけ、妙に暑かった。
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