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第五章 闇の王国編 闇の住人達
第三十七話 囚われのティア
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ティアは転送されると、どこかの暗い部屋に立たされていた。
生徒会室で拘束されていた魔力を帯びた鎖が天井から垂れて両手首を吊り上げられ、身体中に巻きついて足も拘束されている。
いわゆる動きを封じられた状態になっている。
「ん~……どうやら、捕まっちゃったみたいね。」
状況を冷静に分析しながらも、声はどこか余裕めいていた。
ティアは目を閉じて、意識を澄ませる。
心の奥に念話を飛ばした。
ーーセリア。ーー
『はい、主よ。どうされましたか?』
ーーザザルンの暗殺部隊が動き出したわ。
私はいま縛られて囚われの身よ。ーー
『なるほど。それで如何なさいますか?』
ーー勇者ロイスに、ちょっと頑張ってもらおうと思ってる。
どうやら奴ら、私を餌にして勇者を誘き寄せ、暗殺するつもりみたい。
だから、ロイスに「頑張って」って伝えておいて。ーー
『御意。……ところで、主様ご自身は?
拘束など容易く抜け出せるでしょうに。』
ーーん~、ロイスが来るまでは“可哀想な女の子”を演じるつもりよ。ーー
『……御意。』
と言う内容をそのまま、ロイスの部屋に行って伝えた。
「……は? “可哀想な女の子”って……。
ティアさんなら簡単に壊滅させられるでしょう?」
「そうですね。」とセリアは淡々と答える。
「私の見解ですが――主様はロイス様に助け出されたい“演出”に酔いしれているのだと思います。
ですので……主様のわがままに、少し付き合っていただけると。」
「……わ、わかりました。
恐らく、そのうち誰かが俺に『ティアさんを捕られた』と知らせに来るでしょう。
その時は、俺が何とかします。」
「よろしくお願いいたします。
まあ、最悪主様が自力でどうにかされるでしょう。」
セリアは小さく一礼すると、その場から掻き消えた。
薄暗い部屋。
天井から吊るされた鎖が、ティアの両腕を高く縛り上げていた。
微かに開いた扉の向こうから、重い靴音が響いてくる。
入ってきたのは――彼女を捕らえた張本人、暗殺部隊の男メザウスだった。
「おお……囚われの姫様、ってところだな。」
メザウスはいやらしく笑いながら、鎖に縛られたティアを眺める。
「殺してしまうには惜しい女だ。
勇者も……必死に助けに来てくれるといいんだがな。」
ティアは睨み返し、挑発めいた声を返した。
「ふん! ロイスを甘く見ないことね。
あなた達が考えているより、彼はずっと強いわよ。」
「それは楽しみだな。」
メザウスの口元がにやりと歪む。
「我らが開発した機動兵器――“オメガ”。
その性能試験に、勇者はうってつけの相手だ。」
「……オメガ?」
ティアは眉をひそめた。
「そんなものを作っていたなんて。」
「オメガはすでにバザルトン王国を破壊させた。
それだけでも十分な戦果だが……規格外の勇者に通用すれば、世界は我らのものとなる。」
ティアは小さく鼻で笑った。
「上手くいくわけないわ。あなた達の思い通りには、絶対にね。」
「強気だな。」
メザウスは肩をすくめる。
「まあいい。……お前には、特等席を用意してある。
勇者が死んでいく様を、この目でじっくり見させてやる。」
その言葉を残し、メザウスは不気味な笑みを浮かべながら部屋を出ていった。
暗闇に残されたティアは、ふぅと息を吐き、吊られた姿のまま目を細めた。
「……ふふ。いよいよ舞台が整ってきたわね。」
放課後の学園。
セスは落ち着かない様子で校舎を駆け回っていた。
「ティアを見なかったか?」
メリルに声をかけると、彼女は少し不思議そうに答える。
「ティアなら……生徒会室に行ったわよ。」
セスは胸騒ぎを覚え、そのまま生徒会室へ向かった。
ゆっくりと扉を押し開ける。
……誰もいない。
「……?」
不審に思い、隣室の扉を開けた瞬間――息を呑んだ。
床に倒れ込む、生徒会役員たち。皆、気を失っている。
「……ティア!」
咄嗟に名を叫ぶが、彼女の姿はどこにもなかった。
嫌な予感に突き動かされ、セスは駆け出した。
向かう先は、寮のロイスの部屋。
勢いよく扉を開け放ち、飛び込む。
「おい! ティアがいない!
生徒会室で役員たちも倒れていた。……ティアはどこだ!?」
部屋の主――ロイスは、椅子に腰掛けたまま冷静に顔を上げる。
「おいおい、ノックぐらいしろよ。」
「何を呑気なこと言ってやがる!」
セスは声を荒げ、机を叩く。
「ティアはどうしたんだ!」
「ティアさんなら、暗殺部隊に捕まった。」
「……なに!?」
セスは目を見開いた。
「知ってて、なんでそんな落ち着いてやがる!」
「慌てても仕方ない。」
ロイスは静かに答える。
「奴らの目的は俺だ。俺を誘き寄せるために捕らえたのだろう。
近いうちに、何かしら連絡が来るはずだ。……それまでは、ティアさんに危害は加えられない。」
「甘い!」
セスは怒りに震え、勇者を睨みつけた。
「あいつらを甘く見過ぎだ、勇者!」
しかしロイスは動じない。
「大丈夫だ。
ティアさんはいざとなれば、自分で自分を守れる。
……お前こそ、そんなに慌てて、ティアさんに何か想いでもあるのか?」
セスは一瞬言葉を詰まらせ――そして唇を噛む。
「そんなんじゃねぇ。……ただ、放っておけないだけだ!」
ロイスの返答を待たず、踵を返す。
「お前が動かないなら、俺は俺で動く!」
乱暴に扉を閉め、セスは夜の学園へと駆け出していった。
重苦しい空気の満ちる薄暗い部屋。
そこへ数人の男たちが乱暴に入ってきた。
「おお……これが貴族のお嬢様か。」
「なるほど、気位が高そうだな。」
そのうちの一人が顔を近づけると、ティアは鋭い視線を突き刺した。
「……誰なの、あなた達。」
挑むような声色。
だが男は気にした様子もなく、にやりと笑う。
「生きがいいな。
さて、これから楽しいことを始めるとするか。
この魔道具で録画して……勇者に見せてやるんだ。
お前が無様に泣き叫ぶ姿をな。」
ティアはわずかに眉を動かす。
(なるほど……私を辱める映像を送りつけて、ロイスを揺さぶるつもりね。
慌てて駆けつける彼を待ち構えて“オメガ”をぶつける――そういう筋書きか。)
男たちが魔道具を構え、録画が始まった瞬間。
ティアの瞳が怪しく光り、精神干渉の力が解き放たれた。
「……っ!?」
数人の男たちは魂を抜かれたかのように動きを止め、その場で人形のように立ち尽くす。
次の瞬間、ティアを縛る魔力の鎖は粉砕され、砕け散った鎖の欠片が床に散らばった。
ティアはゆっくりと魔道具の前に歩み寄り、カメラの視線を正面から受け止める。
「ロイス。
あなた、きっと私のことを心配なんてしてないでしょうけど――」
わざと囚われの姫のように、か弱い声音を作りながら笑みを浮かべる。
「私はここで待ってるわ。
囚われの姫様を、どうか勇者様に助け出してほしいの。
それと……“機動兵器オメガ”っていうのが、あなたを出迎えるそうよ。
あれがバザルトン王国を滅ぼしたらしいわ。
――さあ、無事に助けに来てね。」
そう囁き、映像は終わった。
ティアは砕いた魔力の鎖を再構築し、再び自らの両手を縛らせて“囚われの演技”を完成させる。
そして、精神干渉を解いた。
「へへへ……」
解放された男たちは、つい先ほどまでの記憶に酔いしれていた。
「可愛らしく悶えてくれて、いい映像が撮れたぜ。
これを勇者が見たら……どうなるかな。」
彼らは勘違いしたまま、ティアを舐め回すような視線を残して部屋を後にする。
間もなく、その魔道具はロイスのもとへ届けられるのだった――。
生徒会室で拘束されていた魔力を帯びた鎖が天井から垂れて両手首を吊り上げられ、身体中に巻きついて足も拘束されている。
いわゆる動きを封じられた状態になっている。
「ん~……どうやら、捕まっちゃったみたいね。」
状況を冷静に分析しながらも、声はどこか余裕めいていた。
ティアは目を閉じて、意識を澄ませる。
心の奥に念話を飛ばした。
ーーセリア。ーー
『はい、主よ。どうされましたか?』
ーーザザルンの暗殺部隊が動き出したわ。
私はいま縛られて囚われの身よ。ーー
『なるほど。それで如何なさいますか?』
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拘束など容易く抜け出せるでしょうに。』
ーーん~、ロイスが来るまでは“可哀想な女の子”を演じるつもりよ。ーー
『……御意。』
と言う内容をそのまま、ロイスの部屋に行って伝えた。
「……は? “可哀想な女の子”って……。
ティアさんなら簡単に壊滅させられるでしょう?」
「そうですね。」とセリアは淡々と答える。
「私の見解ですが――主様はロイス様に助け出されたい“演出”に酔いしれているのだと思います。
ですので……主様のわがままに、少し付き合っていただけると。」
「……わ、わかりました。
恐らく、そのうち誰かが俺に『ティアさんを捕られた』と知らせに来るでしょう。
その時は、俺が何とかします。」
「よろしくお願いいたします。
まあ、最悪主様が自力でどうにかされるでしょう。」
セリアは小さく一礼すると、その場から掻き消えた。
薄暗い部屋。
天井から吊るされた鎖が、ティアの両腕を高く縛り上げていた。
微かに開いた扉の向こうから、重い靴音が響いてくる。
入ってきたのは――彼女を捕らえた張本人、暗殺部隊の男メザウスだった。
「おお……囚われの姫様、ってところだな。」
メザウスはいやらしく笑いながら、鎖に縛られたティアを眺める。
「殺してしまうには惜しい女だ。
勇者も……必死に助けに来てくれるといいんだがな。」
ティアは睨み返し、挑発めいた声を返した。
「ふん! ロイスを甘く見ないことね。
あなた達が考えているより、彼はずっと強いわよ。」
「それは楽しみだな。」
メザウスの口元がにやりと歪む。
「我らが開発した機動兵器――“オメガ”。
その性能試験に、勇者はうってつけの相手だ。」
「……オメガ?」
ティアは眉をひそめた。
「そんなものを作っていたなんて。」
「オメガはすでにバザルトン王国を破壊させた。
それだけでも十分な戦果だが……規格外の勇者に通用すれば、世界は我らのものとなる。」
ティアは小さく鼻で笑った。
「上手くいくわけないわ。あなた達の思い通りには、絶対にね。」
「強気だな。」
メザウスは肩をすくめる。
「まあいい。……お前には、特等席を用意してある。
勇者が死んでいく様を、この目でじっくり見させてやる。」
その言葉を残し、メザウスは不気味な笑みを浮かべながら部屋を出ていった。
暗闇に残されたティアは、ふぅと息を吐き、吊られた姿のまま目を細めた。
「……ふふ。いよいよ舞台が整ってきたわね。」
放課後の学園。
セスは落ち着かない様子で校舎を駆け回っていた。
「ティアを見なかったか?」
メリルに声をかけると、彼女は少し不思議そうに答える。
「ティアなら……生徒会室に行ったわよ。」
セスは胸騒ぎを覚え、そのまま生徒会室へ向かった。
ゆっくりと扉を押し開ける。
……誰もいない。
「……?」
不審に思い、隣室の扉を開けた瞬間――息を呑んだ。
床に倒れ込む、生徒会役員たち。皆、気を失っている。
「……ティア!」
咄嗟に名を叫ぶが、彼女の姿はどこにもなかった。
嫌な予感に突き動かされ、セスは駆け出した。
向かう先は、寮のロイスの部屋。
勢いよく扉を開け放ち、飛び込む。
「おい! ティアがいない!
生徒会室で役員たちも倒れていた。……ティアはどこだ!?」
部屋の主――ロイスは、椅子に腰掛けたまま冷静に顔を上げる。
「おいおい、ノックぐらいしろよ。」
「何を呑気なこと言ってやがる!」
セスは声を荒げ、机を叩く。
「ティアはどうしたんだ!」
「ティアさんなら、暗殺部隊に捕まった。」
「……なに!?」
セスは目を見開いた。
「知ってて、なんでそんな落ち着いてやがる!」
「慌てても仕方ない。」
ロイスは静かに答える。
「奴らの目的は俺だ。俺を誘き寄せるために捕らえたのだろう。
近いうちに、何かしら連絡が来るはずだ。……それまでは、ティアさんに危害は加えられない。」
「甘い!」
セスは怒りに震え、勇者を睨みつけた。
「あいつらを甘く見過ぎだ、勇者!」
しかしロイスは動じない。
「大丈夫だ。
ティアさんはいざとなれば、自分で自分を守れる。
……お前こそ、そんなに慌てて、ティアさんに何か想いでもあるのか?」
セスは一瞬言葉を詰まらせ――そして唇を噛む。
「そんなんじゃねぇ。……ただ、放っておけないだけだ!」
ロイスの返答を待たず、踵を返す。
「お前が動かないなら、俺は俺で動く!」
乱暴に扉を閉め、セスは夜の学園へと駆け出していった。
重苦しい空気の満ちる薄暗い部屋。
そこへ数人の男たちが乱暴に入ってきた。
「おお……これが貴族のお嬢様か。」
「なるほど、気位が高そうだな。」
そのうちの一人が顔を近づけると、ティアは鋭い視線を突き刺した。
「……誰なの、あなた達。」
挑むような声色。
だが男は気にした様子もなく、にやりと笑う。
「生きがいいな。
さて、これから楽しいことを始めるとするか。
この魔道具で録画して……勇者に見せてやるんだ。
お前が無様に泣き叫ぶ姿をな。」
ティアはわずかに眉を動かす。
(なるほど……私を辱める映像を送りつけて、ロイスを揺さぶるつもりね。
慌てて駆けつける彼を待ち構えて“オメガ”をぶつける――そういう筋書きか。)
男たちが魔道具を構え、録画が始まった瞬間。
ティアの瞳が怪しく光り、精神干渉の力が解き放たれた。
「……っ!?」
数人の男たちは魂を抜かれたかのように動きを止め、その場で人形のように立ち尽くす。
次の瞬間、ティアを縛る魔力の鎖は粉砕され、砕け散った鎖の欠片が床に散らばった。
ティアはゆっくりと魔道具の前に歩み寄り、カメラの視線を正面から受け止める。
「ロイス。
あなた、きっと私のことを心配なんてしてないでしょうけど――」
わざと囚われの姫のように、か弱い声音を作りながら笑みを浮かべる。
「私はここで待ってるわ。
囚われの姫様を、どうか勇者様に助け出してほしいの。
それと……“機動兵器オメガ”っていうのが、あなたを出迎えるそうよ。
あれがバザルトン王国を滅ぼしたらしいわ。
――さあ、無事に助けに来てね。」
そう囁き、映像は終わった。
ティアは砕いた魔力の鎖を再構築し、再び自らの両手を縛らせて“囚われの演技”を完成させる。
そして、精神干渉を解いた。
「へへへ……」
解放された男たちは、つい先ほどまでの記憶に酔いしれていた。
「可愛らしく悶えてくれて、いい映像が撮れたぜ。
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