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第十六章 神ティアとアルマ
第百三十四話 闇の躍動
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森から離れた戦場では、状況が一変していた。
追撃に出た勇者隊は、気づけば四方を人型アルマに囲まれ、逃げ場を失っていた。
「ミ、ミンデ……どうするのよ!」
ミナンザが叫び、背中合わせに構え直す。
「まずい……数が多すぎる……!」
ホールディも歯を噛み締める。
ミンデは呼吸を整え、剣を握った。
(落ち着け……勇者だろ……!)
「……まだだ。
まだ終わりじゃない。」
しかし、応戦するも劣勢に変わりなく。
アルマの腕が振り下ろされる。
刃が迫る。
その瞬間――
「遅れての救援、お許しを。」
淡い蒼光が戦場に咲いた。
次の刹那、包囲していた数体のアルマの首が無音で落ちていた。
風のように軽く、死神のように正確な動き。
そこに立つのは、一人。
蒼炎神ティアの使徒セリア。
「せ、セリアさん!?」
ミンデが驚く。
「主様の命により参りました。
勇者ミンデ、ここを維持する力はもう無いはず。後退します。」
「で、でも――」
「あなたが死んでしまっては『守る』も何もありませんよ。」
一点の揺らぎもなく言い切る声。
セリアは蒼炎を纏った細剣をひらりと構えた。
「私が前に出ます。
あなた達は背中だけ守りなさい。」
「……任せろ!」
ミンデは叫び、再び剣を掲げる。
「全員!
退却だッ!!」
その声を合図に、冒険者達も一斉に動き出す。
セリアはまるで踊るように戦場を裂き、退路を切り開く。
人型アルマ達は彼女に触れた瞬間、蒼い光となって消えていく。
「な、なんだあの女……」
城壁の上の兵士達は息を呑んだ。
「勇者の仲間……じゃないよな……?」
「いや、あれは……神に仕える者の……」
セリアの気配は、どこまでも冷静で美しく。
そして、圧倒的。
「ミンデ、息を乱さないで下さい。
まだ戻り切っていませんよ。」
「う、うん!」
「はぁぁぁ……」
ミナンザは感嘆とも悲鳴ともつかない声で言う。
「やっぱり神様の使徒って規格外なんだなぁ……」
全員が城門内に戻ると、門が固く閉じられた。
兵士や冒険者達は息を飲み。
そして、歓声が湧き起こる。
「勇者が、戻ったぞ!!」
しかし、ミンデの顔に喜びはなかった。
「……俺が……判断を誤った。
深追いしなければ……包囲される事はなかった……」
拳が震える。
その横で、セリアは静かに言った。
「反省は、死なずに次へ生かす者だけに許される特権です。
勇者ミンデ、あなたはまだ終わっていません。
次があります。」
ミンデは顔を上げた。
「……ええ、必ず取り返します。」
ミンデの決意は新たな成長への一歩となった。
闇の者を祓い終えたティアは、蒼炎の剣を消し、静かに息を吐いた。
既に戦場での緊張はない。
街までティアは転送して上空からその状況を見ると、街ではまだアルマの残党を相手に魔法が飛び交っていた。
「主様。
勇者ミンデは無事です。」
戦場を見下ろすティアの隣に、セリアが転移して並ぶ。
「そう…よかった。」
ティアは肩の力を少し抜いた。
「もうアルマは増えないから、人間達でも押せるわ。
さて、私達は寮に戻るわよ。」
「学園に、ですか。」
「ええ。
今日バイトなの。
時給は裏切らないのよ。」
「御意。」
セリアは一切の突っ込みをせず、いつも通り頭を下げた。
蒼い光が揺らぎ、二人は戦場から掻き消える。
数時間後。
街では作戦の立て直しと奮戦が功を奏し、ついにアルマは殲滅された。
勇者達と冒険者の表情には、ようやく安堵が戻る。
一方その頃。
「はあ……戦闘からのバイト勤務って、切り替え激しすぎない?」
制服に着替えながら、ティアは小さく伸びをする。
バイト先の休憩室へ入ると、扉ががらりと開いた。
「ティアちゃん!
お疲れ~!」
やってきたのは先輩バイトのマイク。
明るいがちょっと単純な男だ。
「お疲れ様です。
上がりですか?」
ティアは接客スマイルで返す。
「そそ。
今日はそんなに忙しくないっぽいよ~。
ティアちゃん、もう仕事慣れた?」
「はい!
もう一通りひとりで回せるようになりました!」
「はっや!
俺なんて三ヶ月は注文間違えまくってたのに!」
「そうなんですか?
私は……覚えるの得意なので……多分。」
(あと、戦闘で高速処理に慣れてるので……とは言わない。)
「いや~かわいい上に仕事できるとか最強かよティアちゃん。」
マイクが満足げに頷く。
「ティアちゃんさ、彼氏とかいんの?」
「えっ?」
ティア、目をぱちぱち。
(人型アルマより厄介な質問きたわね……)
「い、いませんね。」
「そ、そっか……じゃ、じゃあ、ど、どんな男がタイプとか……?」
「優しくて、かっこよくて、頼りになる人……ですかね?」
「りょ、了解……!
いや了解って何だ俺!
じゃあ頑張るわ!」
マイクは謎に自分を鼓舞しながら退室した。
「……え?
何を頑張るの?」
ティアは小首をかしげる。
その姿が、破壊的に可愛い。
「ティアちゃん、マイクに口説かれた?」
マイクが出て行った直後、今度は先輩のアリサが休憩室にすっと入ってきた。
「は、はは…まあ……たぶん、そういう感じだった…かも…?」
ティアは微妙な顔で笑う。
「だろうね。
あいつ誰にでも”俺イケる”っていくタイプだから、嫌ならバシッと言ったほうがいいよ?
調子に乗るから。」
「は、はい…あ、あの、私、もう仕事入りますね!」
ティアは逃げるようにその場を後にした。
(まさか口説かれてたなんて……)
(あれは仕事のコミュニケーションだと思ってたわ…!)
ティアの胸に「人間界コミュ力難しい」の旗が立った。
バイト終了後
着替えて帰ろうとしたところに――
「ティアちゃん、お疲れさま。」
店長のクレスンと、ばったり目が合う。
「お疲れ様です。」
ティアは反射的に完璧スマイル(好感度+30)を発動。
「ずいぶん仕事慣れたね。
それでなんだけど、今度ティアちゃんの歓迎会をやろうって皆で話しててね。
来週の金曜でどうかな?」
「は、はい!
もちろん大丈夫です!
あの、バイト終わり…ですよね?」
神なのにスケジュールを気にする。
「そうそう。
金曜は18時で店締めて、全員で行こうと思うんだ。」
「そ、そんな……ありがとうございます。」
ティアはこくんと頭を下げる。頬がほんのり赤い。
「いやいや、こちらこそ。
接客も覚えるの早いし、お客さんからの人気が高いからね。
感謝してるのはこっちだよ。」
「そんな……ちょっと…恥ずかしいです…。」
(※実際は神格によるカリスマ補正100%)
「じゃあ金曜日、よろしくね。」
「はい。
失礼します。」
ティアは丁寧に挨拶し、店を後にした。
屋敷へ帰宅
玄関前でメイドのマーガレットが完璧な所作で一礼する。
「お嬢様。
お帰りなさいませ。」
「ただいま。
身体は疲れないけど……精神的にすっごい疲れた…。」
「え?
何かございましたか?」
「バイト先で先輩に口説かれたり、歓迎会決まったり、店長と会話して、愛想笑いして……。
戦場より神経使うわ。」
「戦場と比較されるお仕事とは…」
マーガレットはまばたきだけでツッコミを表現した。
「まあ、歓迎会は楽しめると良いですね。」
「そうね。
人付き合いって、ほんとエネルギー持っていかれるわ。」
ティアはソファーに、溶けるように沈み込んだ。
無言で背もたれに倒れ込むその姿は、
「戦場に立つ蒼炎神」ではなく
「バイト終わりの女子高生」そのものだった。
追撃に出た勇者隊は、気づけば四方を人型アルマに囲まれ、逃げ場を失っていた。
「ミ、ミンデ……どうするのよ!」
ミナンザが叫び、背中合わせに構え直す。
「まずい……数が多すぎる……!」
ホールディも歯を噛み締める。
ミンデは呼吸を整え、剣を握った。
(落ち着け……勇者だろ……!)
「……まだだ。
まだ終わりじゃない。」
しかし、応戦するも劣勢に変わりなく。
アルマの腕が振り下ろされる。
刃が迫る。
その瞬間――
「遅れての救援、お許しを。」
淡い蒼光が戦場に咲いた。
次の刹那、包囲していた数体のアルマの首が無音で落ちていた。
風のように軽く、死神のように正確な動き。
そこに立つのは、一人。
蒼炎神ティアの使徒セリア。
「せ、セリアさん!?」
ミンデが驚く。
「主様の命により参りました。
勇者ミンデ、ここを維持する力はもう無いはず。後退します。」
「で、でも――」
「あなたが死んでしまっては『守る』も何もありませんよ。」
一点の揺らぎもなく言い切る声。
セリアは蒼炎を纏った細剣をひらりと構えた。
「私が前に出ます。
あなた達は背中だけ守りなさい。」
「……任せろ!」
ミンデは叫び、再び剣を掲げる。
「全員!
退却だッ!!」
その声を合図に、冒険者達も一斉に動き出す。
セリアはまるで踊るように戦場を裂き、退路を切り開く。
人型アルマ達は彼女に触れた瞬間、蒼い光となって消えていく。
「な、なんだあの女……」
城壁の上の兵士達は息を呑んだ。
「勇者の仲間……じゃないよな……?」
「いや、あれは……神に仕える者の……」
セリアの気配は、どこまでも冷静で美しく。
そして、圧倒的。
「ミンデ、息を乱さないで下さい。
まだ戻り切っていませんよ。」
「う、うん!」
「はぁぁぁ……」
ミナンザは感嘆とも悲鳴ともつかない声で言う。
「やっぱり神様の使徒って規格外なんだなぁ……」
全員が城門内に戻ると、門が固く閉じられた。
兵士や冒険者達は息を飲み。
そして、歓声が湧き起こる。
「勇者が、戻ったぞ!!」
しかし、ミンデの顔に喜びはなかった。
「……俺が……判断を誤った。
深追いしなければ……包囲される事はなかった……」
拳が震える。
その横で、セリアは静かに言った。
「反省は、死なずに次へ生かす者だけに許される特権です。
勇者ミンデ、あなたはまだ終わっていません。
次があります。」
ミンデは顔を上げた。
「……ええ、必ず取り返します。」
ミンデの決意は新たな成長への一歩となった。
闇の者を祓い終えたティアは、蒼炎の剣を消し、静かに息を吐いた。
既に戦場での緊張はない。
街までティアは転送して上空からその状況を見ると、街ではまだアルマの残党を相手に魔法が飛び交っていた。
「主様。
勇者ミンデは無事です。」
戦場を見下ろすティアの隣に、セリアが転移して並ぶ。
「そう…よかった。」
ティアは肩の力を少し抜いた。
「もうアルマは増えないから、人間達でも押せるわ。
さて、私達は寮に戻るわよ。」
「学園に、ですか。」
「ええ。
今日バイトなの。
時給は裏切らないのよ。」
「御意。」
セリアは一切の突っ込みをせず、いつも通り頭を下げた。
蒼い光が揺らぎ、二人は戦場から掻き消える。
数時間後。
街では作戦の立て直しと奮戦が功を奏し、ついにアルマは殲滅された。
勇者達と冒険者の表情には、ようやく安堵が戻る。
一方その頃。
「はあ……戦闘からのバイト勤務って、切り替え激しすぎない?」
制服に着替えながら、ティアは小さく伸びをする。
バイト先の休憩室へ入ると、扉ががらりと開いた。
「ティアちゃん!
お疲れ~!」
やってきたのは先輩バイトのマイク。
明るいがちょっと単純な男だ。
「お疲れ様です。
上がりですか?」
ティアは接客スマイルで返す。
「そそ。
今日はそんなに忙しくないっぽいよ~。
ティアちゃん、もう仕事慣れた?」
「はい!
もう一通りひとりで回せるようになりました!」
「はっや!
俺なんて三ヶ月は注文間違えまくってたのに!」
「そうなんですか?
私は……覚えるの得意なので……多分。」
(あと、戦闘で高速処理に慣れてるので……とは言わない。)
「いや~かわいい上に仕事できるとか最強かよティアちゃん。」
マイクが満足げに頷く。
「ティアちゃんさ、彼氏とかいんの?」
「えっ?」
ティア、目をぱちぱち。
(人型アルマより厄介な質問きたわね……)
「い、いませんね。」
「そ、そっか……じゃ、じゃあ、ど、どんな男がタイプとか……?」
「優しくて、かっこよくて、頼りになる人……ですかね?」
「りょ、了解……!
いや了解って何だ俺!
じゃあ頑張るわ!」
マイクは謎に自分を鼓舞しながら退室した。
「……え?
何を頑張るの?」
ティアは小首をかしげる。
その姿が、破壊的に可愛い。
「ティアちゃん、マイクに口説かれた?」
マイクが出て行った直後、今度は先輩のアリサが休憩室にすっと入ってきた。
「は、はは…まあ……たぶん、そういう感じだった…かも…?」
ティアは微妙な顔で笑う。
「だろうね。
あいつ誰にでも”俺イケる”っていくタイプだから、嫌ならバシッと言ったほうがいいよ?
調子に乗るから。」
「は、はい…あ、あの、私、もう仕事入りますね!」
ティアは逃げるようにその場を後にした。
(まさか口説かれてたなんて……)
(あれは仕事のコミュニケーションだと思ってたわ…!)
ティアの胸に「人間界コミュ力難しい」の旗が立った。
バイト終了後
着替えて帰ろうとしたところに――
「ティアちゃん、お疲れさま。」
店長のクレスンと、ばったり目が合う。
「お疲れ様です。」
ティアは反射的に完璧スマイル(好感度+30)を発動。
「ずいぶん仕事慣れたね。
それでなんだけど、今度ティアちゃんの歓迎会をやろうって皆で話しててね。
来週の金曜でどうかな?」
「は、はい!
もちろん大丈夫です!
あの、バイト終わり…ですよね?」
神なのにスケジュールを気にする。
「そうそう。
金曜は18時で店締めて、全員で行こうと思うんだ。」
「そ、そんな……ありがとうございます。」
ティアはこくんと頭を下げる。頬がほんのり赤い。
「いやいや、こちらこそ。
接客も覚えるの早いし、お客さんからの人気が高いからね。
感謝してるのはこっちだよ。」
「そんな……ちょっと…恥ずかしいです…。」
(※実際は神格によるカリスマ補正100%)
「じゃあ金曜日、よろしくね。」
「はい。
失礼します。」
ティアは丁寧に挨拶し、店を後にした。
屋敷へ帰宅
玄関前でメイドのマーガレットが完璧な所作で一礼する。
「お嬢様。
お帰りなさいませ。」
「ただいま。
身体は疲れないけど……精神的にすっごい疲れた…。」
「え?
何かございましたか?」
「バイト先で先輩に口説かれたり、歓迎会決まったり、店長と会話して、愛想笑いして……。
戦場より神経使うわ。」
「戦場と比較されるお仕事とは…」
マーガレットはまばたきだけでツッコミを表現した。
「まあ、歓迎会は楽しめると良いですね。」
「そうね。
人付き合いって、ほんとエネルギー持っていかれるわ。」
ティアはソファーに、溶けるように沈み込んだ。
無言で背もたれに倒れ込むその姿は、
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