君と運命になっていく

やらぎはら響

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※15話と16話のあいだが抜けていたので追加しました。


「番成立おめでとう!」

 リルトの自宅リビングで、にこにこと上機嫌にケリーが笑った。
 テーブルには花と伊織とケリーで準備した料理が並んでいる。
 もう一度、今度はちゃんと味わいたいと前回と同じ林檎のドレッシングとタレを使った料理たちだ。
 リルトの隣を確保したトニエルも機嫌よくグラスを持ち上げた。

「無事に成立してよかった、おめでとう兄さん」

 屈託なく笑うトニエルに、リルトはどう反応したらいいのかといわんばかりの半眼を向けている。
 十歳と十五歳で疎遠になっているから距離を測りかねているらしい。
 弟はそんなことかまわずグイグイ突っ込んでいるが。

「お前帰国しなくていいのか?のんびりしすぎだろ」
「いいんですよ。これからはこの家にもちょくちょく来ますからね」
「いやアメリカだろお前」

 確かにちょくちょくは難しいのではないかと思っていると、ケリーがおかしげに忍び笑いをもらしている。
 何だろうと思っていると、トニウルが自信満々に胸を張った。

「実は数年前から日本支社の準備をしてて軌道に乗ってきたところなんだ。そこの責任者の席をもぎ取ってきたか
ら、しばらく日本に滞在するよ」
「はあ?いつのまに」

 驚いたのはリルトだけでなく伊織も花もだった。
 三人そろって目を丸くしている。
 それをケリーが実はねと笑い混じりに説明し始めた。

「トニエルは数年前から何度も日本に来てるんですよ。なかなか義兄さんに声かけられなかったけど」
「……そうなのか?」

 驚いた顔でリルトがトニエルを見やると、彼は唇を尖らせた。
 リルトの前では、トニエルは少し幼い表情を見せる。

「そうだよ。これからは十三年分かまってもらうつもりだから」
「おい」

 どうやらトニエルは十歳から兄弟仲を取り戻す気らしい。
 微笑ましくて伊織は笑ってしまった。

「やっぱり強火担当だ」

 リルトはあきれたような顔をしているけれど、嫌がる顔はしていないので嬉しいのだろうと伊織は思った。
 リルトのトニエルの前で見せる兄の顔も、伊織は好きなのだ。

「お前、父さんたちは?」
「やることやってれば黙るよあの人達は」
「だからってな」
「だってアメリカに帰る気ないでしょ?」

 トニエルの指摘にリルトは片眉を上げた。
 その顔は、考えたこともないと書いてある。

「まあ伊織次第だな」
「花ちゃんとは離れたくないかな」

 リルトの答えに自分も答えれば、ほらとトニエルがリルトをジト目で見やる。
 我関せずでグラスを傾けていた花が肩をすくめた。

「ふん、私が死ぬまでは日本にいないと承知しないよ」
「俺も花のこと気に入ったからね!」

 花の憎まれ口とケリーの言葉に、したり顔でトニエルが頷いた。

「ね?だからこれが最善だよ。伊織だって先輩番が傍にいれば心強いでしょ」
「それは確かに」

 伊織はまだオメガとして開花したばかりだし、体もまだ不安定だ。
 番としてもオメガとしても先輩がいれば心強いのは当然だ。
 伊織の言葉にぐっと言葉を詰まらせると、リルトは深々とため息を吐いた。

「好きにしろ」
「好きにするよ」

 にんまりとトニエルが笑う。
 疲れたようにトニエルとは反対隣に座る伊織の肩にリルトが寄りかかった。
 肩に乗った頭は少し重いけれど、甘い匂いがふわんと香って顔がほころぶ。

「弟とまた仲良くなれてよかったね」

 こそりと囁くと、苦笑を浮かべてそうだなと返事が返ってきた。

「なあリル」
「うん?」
「日々を重ねて運命になりたいって言ってくれただろ」

 まだ出会って間もない頃に運命に関係なくきっと君を好きになると言われた。
 運命は、きっかけでしかないと言ってくれた。
 あの時、伊織自身を見てくれているのだと嬉しかったのだ。

「楽しい事たくさん重ねていこうな。それ以外も全部」
「もちろん」

紺碧色を覗き込むと、優しく瞳が細められる。
その眼差しに、みんながいるにも関わらず、一瞬だけ二人は唇を重ねた。
しました。すみません。
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みんなの感想(1件)

Arna lluna(雪月花)

初めまして。
年の差溺愛がとても好きなので読ませて頂きました。

スーパーの溺愛笑
スーパーではなくリルトに溺愛され続けて欲しい笑

変換ミスだと思いますが、出来合いの惣菜ですよね?多分
謎にツボに入ってしまい、しばらく笑わせて頂きました。ありがとうございます。

季節の変わり目なので体調にお気をつけ下さい。
これからの更新も楽しみにしてます。

解除

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