君と運命になっていく

やらぎはら響

文字の大きさ
17 / 18

17

しおりを挟む

まだ昼間だったけれど、そのあとはお互い無言で帰宅してシャワーを浴びた。
 先にシャワーを浴びた伊織はリルトの寝室でベッドに腰掛けていた。
 寝室は心を通わせてからまた同じにしていたけれど、今日はパジャマではなくバスローブだ。
 緊張で口から心臓を吐き出しそうだった。
 風呂は最初の頃は一緒に入っていたけれど、意識してからは入っていない。
 怪我をしたリルトは湯舟はやめた方がいいということで、寝室は一緒に戻したけれど風呂は別々のままだった。
 膝に置いた手でバスローブをぎゅっと握る。
 乏しい体験はリルトに慰められた一度だけだから、嫌でもその時のことが思い出された。

「前舐められたけど、ああいうことするんだよな……ちゃんとできるかな」

 その時のことを思い出してしまい頬を赤くしたとき、タイミングがいいのか悪いのか部屋の扉が開いた。
 バスローブ姿に髪が湿ったままのリルトが部屋に入ってくる。
 普段のパジャマと違って、なんだか色気が凄かった。
 鼻血を吹かないか心配になる伊織だ。
 ゆっくりと伊織の前までやってきたリルトの右手がそっと頬を撫でた。
 それにぴくりと反応しながらも、バスローブ越しにそっと包帯の巻かれている腕に触れる。

「腕大丈夫?傷開いちゃわないかな」
「傷が開いても本望だ」
「何それ」

 軽口に笑ってしまい、緊張がほぐれた。
 ほっとしてリルトがゆっくりと伊織をベッドに押し倒すのに、体を任せた。
 広いベッドがキシリとかすかに揺れる。
 のしかかってきたリルトの体は、やっぱり大きくて伊織はすっぽりと隠されてしまいそうだった。
 そっと顔を覗き込んできたので、覚悟は出来ているのだとぎゅっと目を閉じる。
 すると吐息で笑う気配がして、キスの雨が降ってきた。
 柔らかく何度も唇が押し当てられる。
 それがふわふわとして、そっと伊織は目を開けた。

「あの……また、その、舐めるの?」

 おそるおそる聞くと、リルトはキョトンとした顔を浮かべたあとに、ひどく蠱惑的に微笑んだ。

「舐めるよ」

 言うなり、バスローブの紐がほどかれる。
 待ってと言う間もなく前が開かれた。
 全裸をベッドの上で晒していると思うと恥ずかしくて仕方がない。
首筋から鎖骨と唇が触れるたびに、熱い手のひらが体を辿るたびにびくびくと腰や背中が跳ねた。
胸元の突起に息がかかった時には大げさに体が震えた。

「ひゃっや、あ」

 乳首を甘噛みされて舌で嬲られれば、甘ったるい声が伊織の喉から漏れた。
そんなところを触られると思っていなかった伊織はすでに半泣きだ。

「そんなとこ、まで、や、なめる、の?」
「舐めるよ。全部、全身、キスして舐めるから、覚悟して」

 予想外の言葉に、伊織は眉を下げてひんひん泣いた。
 上半身だけでなく、背中も足先までキスマークを残しながら唇で辿られて、息も絶え絶えだ。
 しかも体力がもたないだろうからと、唇の愛撫だけで勃ち上がった性器を握られて射精をさせてもらえていない。
 頭は熱で茹っていっぱいいっぱいだった。

「や、いかせて、もう、いかせて」

 泣きじゃくったら。

「そうだね、そろそろいいかな」

 と言ったのでほっとしたのも束の間。
 最初に宣言したとおり、すっかり勃ち上がった性器を唇に迎えられた。

「や、まって、あ、やぁ」

 舐めしゃぶる音が卑猥に部屋に響いても、伊織にそれを気にしている余裕はなかった。
 限界はあっという間に訪れて、びゅくびゅくと腰が震えて白濁をリルトの口に放っていた。
 放心したようにぼんやりと荒い息を繰り返していると、体をころりとうつぶせにされる。
 されるがままになっていると腰を持ち上げられて足を開かされた。
 最奥まで見える体勢にさすがに恥ずかしすぎるけれど、すでに抵抗する体力は伊織にはなかった。

「はずかし、よぉ」
「大丈夫、綺麗だよ」

 何も大丈夫じゃない。
 背中にちゅっちゅっとキスの感触が降ってきてくすぐったい。
 体を震わせていると、その唇がどんどん下がっていき伊織はまさかと身構えた。

「りる、まって、ああっ」

 制止はしたけれど、聞いてはもらえなかった。
 腰を抱え上げられ、後孔へと舌が這わされる。
 ぬるりとした濡れた感触に肌が粟立った。

「ひゃ、や、あっああ」

 泣きぬれた甘ったれた声しか出てこない。
必死でシーツを握りしめるしか伊織には出来なかった。
そのあいだに舐めしゃぶられた後孔に指が差し込まれる。
痛いとか苦しいとかそういったものはなかったけれど、リルトの指が入っていると思うだけで恥ずかしさに伊織はぐすぐすと泣き出した。
指を増やしながらも、そんな伊織にリルトが顔を寄せて耳を舐めてしゃぶる。

「泣かないで伊織」
「はずか、しい、ぁっ、へんに、なっちゃ」
「変になって」

 外耳にかしりと歯を立てられて背筋が震えた。
 優しいのに優しくない。
 手も唇も声も優しいのに、猛攻はゆるめてくれなくて伊織は何度も意地悪と泣いた。
 何本入っていたのかわからない指が抜かれた。
肩越しに振り返るとリルトがバスローブを脱ぎ落した。
 その性器は腹に反り返るくらいついていて、はち切れそうだ。

「伊織、俺を受け入れて」

 そっとこめかみにキスをされて、こくこくと必死に頷く。
 リルトが柔く瞳をしならせてから、性器を二、三度しごくと後孔に熱いものがピタリと当てられた。
ふわりと甘い匂いがして、優しく包まれたことに安堵する。

「ゆっくり入れるから力を抜いて」
「ん」

 右手をシーツの上でさまよわせたら、リルトの右手が重ねられて握られた。
 それにほっとして体の力が抜ける。
 その瞬間、熱い楔が伊織のなかに挿いってきた。

「ん、う」

 ゆっくりと、何度も少しずつ腰を揺らしながらリルトの性器が挿いってくる。
 指なんかとは比べ物にならなくて苦しい。

「は、伊織、伊織」

 名前を呼ばれるたびにキュウキュウとリルトの性器を締め上げて、そのたびに自分にも甘やかな刺激がもたらされた。

「全部、はいったよ」

 ちゅっと項にキスをされる。
 ビリビリとした快感が背筋を走った。

「ああ、ん、そこ、やあ」
「はは、ここは敏感だもんな。やっと噛める」

 満干の想いを込めたような声に、泣きそうになった。
 ずっと待っててくれた伊織のアルファ。
 早く、噛まれたいと思った。

「りる、りる、はやく、かまれたい」
「そういう可愛い事いわないでくれ。必死で理性を繋ぎとめてるんだ」
「や、だって、あ」

ゆるゆるとリルトが動き出すと、意味のある言葉は紡げなくなった。
必死に振り返ると、リルトの眉が寄せられ熱い眼差しが降ってくる。
最初は大型犬なんて思った。
認識が子犬になってからは可愛いとしか思ってなかった。
ギラギラとした眼差し。
今は狼だ。
食べられる。
パチュパチュと水音と互いの呼吸だけが部屋に籠っていく。
限界まで広げられている後孔が、さらにぐぐっと広がる感触がした。

「や、やあっ、なに」
「亀頭球だ、大丈夫、根本が膨らんで抜けなくするだけだ」

 ハッハッと呼吸の合間に説明をされても、伊織の茹った頭にはまともに届かなかった。
 ぐっとリルトの性器が質量を増した瞬間。

「俺のだ」

 熱い飛沫が体内にぶちまけられるのと、項に硬い歯が突き立てられて快感に頭が焼き切れたのは同時だった。

「あ、う」

 ひくひくと過ぎる快感に体が言うことを聞かない。
 最後の一滴まで出し切るように腰が揺らされたあとずるりと性器が抜かれる感触に、腰が跳ねて声が漏れた。
 リルトに体を抱き上げられて、あぐらをかいた膝へと抱えあげられた。
 ようやくそこで自分も射精していたことを、ドロリと汚れた下腹部を見て気づく。
 ゆるゆると閉じていた瞼を上げれば、満ち足りたような顔でリルトが笑っていた。

「伊織、ありがとう。幸せだ」

 ぎゅっと抱きしめてくる肩は少し震えていて、リルトの目元が当たっている首筋がかすかに濡れていく。
 その頭を、伊織は両腕で抱え込んでよしよしと撫で続けた。

「俺を待っててくれて、ありがとうリル」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

恋が始まる日

一ノ瀬麻紀
BL
幼い頃から決められていた結婚だから仕方がないけど、夫は僕のことを好きなのだろうか……。 だから僕は夫に「僕のどんな所が好き?」って聞いてみたくなったんだ。 オメガバースです。 アルファ×オメガの歳の差夫夫のお話。 ツイノベで書いたお話を少し直して載せました。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

処理中です...