「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」

だって、これも愛なの。

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第6話 譲れない気持ち

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春の風が冷たく変わり始めた夕暮れ。
学園の門を出ると、通りに見慣れぬ馬車が停まっていた。
その脇に立つのは、昼間エリナに声をかけた上級生――エドワードだった。

「偶然だね、エリナ嬢。よければ送ろうか?」

軽やかに差し出される手。
エリナは思わず一歩下がった。
けれど、断る言葉を探すより早く、横から伸びた手が彼女の肩をしっかりと引き寄せた。

「必要ありません」

レオンの声は低く、よく通った。
穏やかさをまとっていたはずの声音が、一瞬で空気を変える。

「彼女は、俺と一緒に帰る」

強い響きに、エドワードは眉をひそめ、肩をすくめるように笑う。
「……なるほど。失礼した」
興味を失ったように馬車に乗り込むと、すぐに走り去っていった。



門を離れ、並木道に入ってからも、エリナの心臓は早鐘を打っていた。
隣を歩くレオンの横顔は、夕陽に照らされて影が濃い。
その表情が、なぜか遠く感じられる。

「あ、あの……ごめんね。わたし、ちゃんと断れなくて」

「君が謝ることじゃない」
レオンは短く答える。

「でも――」
「俺は譲らないよ」

歩みを止め、レオンはまっすぐにエリナを見た。
普段の穏やかな瞳ではなく、強い光を宿した視線。
彼女の胸を突き刺すように、静かに言葉が落ちる。

「誰にも、君を渡すつもりはない」

あまりに短く、強い言葉。
それはこれまで聞いたことのないレオンの声だった。

「……レオン?」
エリナは息を呑む。
胸が熱くなり、足元がふわりと浮くような感覚。

彼はすぐに表情を和らげ、肩をすくめて笑った。
「……驚かせたね。ごめん」

けれど、エリナの胸にはもう、その言葉が深く残ってしまっていた。
“安心できる幼馴染”――そう思っていた彼が見せた、知らなかった一面。
心臓の鼓動が、どうしてか止まらない。

帰り道の風景は変わらないのに、隣にいる彼が今までとは少し違って見えた。
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