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第5話 優しさの裏で
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その日の夕暮れ。
教室の窓から差し込む橙色の光が、机や椅子を柔らかく染めていた。
エリナはノートを広げたまま、ため息をこぼしている。
「……わたし、やっぱり苦手だな」
レオンが椅子を引き、隣に腰を下ろす。
「さっきのこと?」
「うん。悪い人じゃないって分かってるんだけど……
急に近づかれると、どうしていいか分からなくなっちゃうの」
エリナの声は小さく震えていた。
レオンは静かに頷き、その震えを包み込むように言葉を紡ぐ。
「無理しなくていい。困ったら、俺の後ろに隠れればいいんだ」
「……でも、それじゃわたし、子どもみたいじゃない?」
「いいよ。君が安心できるなら、それでいい」
いつもの調子で、やわらかく言う。
その言葉に、エリナは目を細め、ふっと笑った。
「やっぱりレオンって、お兄様に似てる。安心する」
何度も繰り返されてきたその一言。
エリナにとっては褒め言葉でしかない。
けれどレオンの胸の奥には、かすかな痛みが生まれる。
――安心できる“似ている人”。
それだけで、いいのだろうか。
彼女が笑うたび、その痛みと愛しさが同時に広がる。
守りたい、安心させたい。
けれどそれ以上に――。
レオンは机に置かれたエリナのノートに視線を落とした。
小さな字が並んでいる。花の名前のメモ、ささやかな日常の記録。
その一つ一つが彼女の無邪気さを表していて、たまらなく愛おしい。
「……俺は、君が思っているより強欲かもしれないな」
小さな声は、夕陽に溶けてエリナには届かない。
彼女は安心しきった笑顔を見せながら、「ありがとう、レオン」と告げた。
その笑みを守りたいと同時に、誰にも渡したくないと願ってしまう。
優しさの裏で芽生えた感情が、静かに大きくなっていくのを、レオンははっきりと感じていた。
教室の窓から差し込む橙色の光が、机や椅子を柔らかく染めていた。
エリナはノートを広げたまま、ため息をこぼしている。
「……わたし、やっぱり苦手だな」
レオンが椅子を引き、隣に腰を下ろす。
「さっきのこと?」
「うん。悪い人じゃないって分かってるんだけど……
急に近づかれると、どうしていいか分からなくなっちゃうの」
エリナの声は小さく震えていた。
レオンは静かに頷き、その震えを包み込むように言葉を紡ぐ。
「無理しなくていい。困ったら、俺の後ろに隠れればいいんだ」
「……でも、それじゃわたし、子どもみたいじゃない?」
「いいよ。君が安心できるなら、それでいい」
いつもの調子で、やわらかく言う。
その言葉に、エリナは目を細め、ふっと笑った。
「やっぱりレオンって、お兄様に似てる。安心する」
何度も繰り返されてきたその一言。
エリナにとっては褒め言葉でしかない。
けれどレオンの胸の奥には、かすかな痛みが生まれる。
――安心できる“似ている人”。
それだけで、いいのだろうか。
彼女が笑うたび、その痛みと愛しさが同時に広がる。
守りたい、安心させたい。
けれどそれ以上に――。
レオンは机に置かれたエリナのノートに視線を落とした。
小さな字が並んでいる。花の名前のメモ、ささやかな日常の記録。
その一つ一つが彼女の無邪気さを表していて、たまらなく愛おしい。
「……俺は、君が思っているより強欲かもしれないな」
小さな声は、夕陽に溶けてエリナには届かない。
彼女は安心しきった笑顔を見せながら、「ありがとう、レオン」と告げた。
その笑みを守りたいと同時に、誰にも渡したくないと願ってしまう。
優しさの裏で芽生えた感情が、静かに大きくなっていくのを、レオンははっきりと感じていた。
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