7 / 15
第6話 譲れない気持ち
しおりを挟む
春の風が冷たく変わり始めた夕暮れ。
学園の門を出ると、通りに見慣れぬ馬車が停まっていた。
その脇に立つのは、昼間エリナに声をかけた上級生――エドワードだった。
「偶然だね、エリナ嬢。よければ送ろうか?」
軽やかに差し出される手。
エリナは思わず一歩下がった。
けれど、断る言葉を探すより早く、横から伸びた手が彼女の肩をしっかりと引き寄せた。
「必要ありません」
レオンの声は低く、よく通った。
穏やかさをまとっていたはずの声音が、一瞬で空気を変える。
「彼女は、俺と一緒に帰る」
強い響きに、エドワードは眉をひそめ、肩をすくめるように笑う。
「……なるほど。失礼した」
興味を失ったように馬車に乗り込むと、すぐに走り去っていった。
*
門を離れ、並木道に入ってからも、エリナの心臓は早鐘を打っていた。
隣を歩くレオンの横顔は、夕陽に照らされて影が濃い。
その表情が、なぜか遠く感じられる。
「あ、あの……ごめんね。わたし、ちゃんと断れなくて」
「君が謝ることじゃない」
レオンは短く答える。
「でも――」
「俺は譲らないよ」
歩みを止め、レオンはまっすぐにエリナを見た。
普段の穏やかな瞳ではなく、強い光を宿した視線。
彼女の胸を突き刺すように、静かに言葉が落ちる。
「誰にも、君を渡すつもりはない」
あまりに短く、強い言葉。
それはこれまで聞いたことのないレオンの声だった。
「……レオン?」
エリナは息を呑む。
胸が熱くなり、足元がふわりと浮くような感覚。
彼はすぐに表情を和らげ、肩をすくめて笑った。
「……驚かせたね。ごめん」
けれど、エリナの胸にはもう、その言葉が深く残ってしまっていた。
“安心できる幼馴染”――そう思っていた彼が見せた、知らなかった一面。
心臓の鼓動が、どうしてか止まらない。
帰り道の風景は変わらないのに、隣にいる彼が今までとは少し違って見えた。
学園の門を出ると、通りに見慣れぬ馬車が停まっていた。
その脇に立つのは、昼間エリナに声をかけた上級生――エドワードだった。
「偶然だね、エリナ嬢。よければ送ろうか?」
軽やかに差し出される手。
エリナは思わず一歩下がった。
けれど、断る言葉を探すより早く、横から伸びた手が彼女の肩をしっかりと引き寄せた。
「必要ありません」
レオンの声は低く、よく通った。
穏やかさをまとっていたはずの声音が、一瞬で空気を変える。
「彼女は、俺と一緒に帰る」
強い響きに、エドワードは眉をひそめ、肩をすくめるように笑う。
「……なるほど。失礼した」
興味を失ったように馬車に乗り込むと、すぐに走り去っていった。
*
門を離れ、並木道に入ってからも、エリナの心臓は早鐘を打っていた。
隣を歩くレオンの横顔は、夕陽に照らされて影が濃い。
その表情が、なぜか遠く感じられる。
「あ、あの……ごめんね。わたし、ちゃんと断れなくて」
「君が謝ることじゃない」
レオンは短く答える。
「でも――」
「俺は譲らないよ」
歩みを止め、レオンはまっすぐにエリナを見た。
普段の穏やかな瞳ではなく、強い光を宿した視線。
彼女の胸を突き刺すように、静かに言葉が落ちる。
「誰にも、君を渡すつもりはない」
あまりに短く、強い言葉。
それはこれまで聞いたことのないレオンの声だった。
「……レオン?」
エリナは息を呑む。
胸が熱くなり、足元がふわりと浮くような感覚。
彼はすぐに表情を和らげ、肩をすくめて笑った。
「……驚かせたね。ごめん」
けれど、エリナの胸にはもう、その言葉が深く残ってしまっていた。
“安心できる幼馴染”――そう思っていた彼が見せた、知らなかった一面。
心臓の鼓動が、どうしてか止まらない。
帰り道の風景は変わらないのに、隣にいる彼が今までとは少し違って見えた。
0
あなたにおすすめの小説
優しすぎる王太子に妃は現れない
七宮叶歌
恋愛
『優しすぎる王太子』リュシアンは国民から慕われる一方、貴族からは優柔不断と見られていた。
没落しかけた伯爵家の令嬢エレナは、家を救うため王太子妃選定会に挑み、彼の心を射止めようと決意する。
だが、選定会の裏には思わぬ陰謀が渦巻いていた。翻弄されながらも、エレナは自分の想いを貫けるのか。
国が繁栄する時、青い鳥が現れる――そんな伝承のあるフェラデル国で、優しすぎる王太子と没落令嬢の行く末を、青い鳥は見守っている。
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。
だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。
異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。
失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。
けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。
愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。
他サイト様でも公開しております。
イラスト 灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様
冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
森本イチカ
恋愛
妹じゃなくて、女として見て欲しい。
14歳年下の凛子は幼馴染の優にずっと片想いしていた。
やっと社会人になり、社長である優と少しでも近づけたと思っていた矢先、優がお見合いをしている事を知る凛子。
女としてみて欲しくて迫るが拒まれてーー
★短編ですが長編に変更可能です。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
セイレーンの家
まへばらよし
恋愛
病気のせいで結婚を諦めていた桐島柊子は、叔母の紹介で建築士の松井卓朗とお見合いをすることになった。卓朗は柊子の憧れの人物であり、柊子は彼に会えると喜ぶも、緊張でお見合いは微妙な雰囲気で終えてしまう。一方で卓朗もまた柊子に惹かれていく。ぎこちなくも順調に交際を重ね、二人は見合いから半年後に結婚をする。しかし、お互いに抱えていた傷と葛藤のせいで、結婚生活は微妙にすれ違っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる