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第95話 現在の勢力図
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そう言うとフーマは小走りで書斎から繋がっている物置に入り、其処から横幅2メートルは有りそうな程大きな紙を持って出て来た。
そしてテープを幾つか千切って腕に付けると、真っ白な壁に向かいそのテープを使って壁に紙を貼り付けていく。
「此れは……地図か?」
ディーノは大昔に見た記憶を思い出して紙に描かれている蜂の巣の様な、色取り取りのブロックが密集している絵を見てそう思った。
しかし記憶に残っている地図とは至る所が異なり、ブロックの色が違っていたり大きさが変わっている場所が幾つもある。
「その通りだ、若しかして昔見たことがあったかな? だとすると結構変わってて驚いただろ」
フーマの言葉にディーノは首を縦に振って応じる。
彼が一番驚いたこと、其れは昔見た時デカデカと描かれてたレヴィアスファミリーの支配領が跡形も無く消滅している事だ。
確か裏社会の三分の一程度を支配していた筈だが、今ではその名前すら載っていない。
「本当にレヴィアスファミリーは跡形も無く消えたんだな……」
「ああ、我々の力不足だ。済まない」
何故か頭を下げたフーマを見てディーノは慌てて顔を上げる様に促す。
もし非難される人間が存在するとすれば其れは命の限り戦い続けてくれたフーマ達兵士では無く、全ての責任から逃れてのほほんと過ごしていた自分である。
しかしフーマを攻める気は無いとしても、流石に父が作った巨大ファミリーが跡形も無いのは寂しく感じてしまった。
その複雑な表情を見たフーマが話を続ける。
「8年前のルチアーノ暗殺事件以来、レヴィアスファミリーは主に二つのファミリーに分裂した。一つがクーデターを起こしたオーウェンのファミリーである、アモンドファミリ。もう一つがアモンドに従う事を拒絶したディオンさんを中心とする、ファブラファミリー」
どうやらルチアーノの死後全員がオーウェンの元に寝返った訳ではなく、ディオンを中心とした反抗勢力は存在している様だ。
若しかするとファブラファミリーとは手を結べるかも知れない。
「そうか、じゃあそれぞれ何区ずつ所有してるんだ?」
「アモンドはついこないだ戦争に敗れて今は13区、ファブラファミリーが7区だね」
各ファミリーの支配区数を聞かされたディーノは即座におかしいと気が付く。
元々のレヴィアスの支配区数に比べて、二つのファミリーの合計区数が余りにも少ないのだ。
「おい待てよ、二つのファミリーの支配区数を足し合わせてもたった20区にしか成らねえじゃねえか! 確か昔聞いた話だと配下のファミリーを加えて41はあった筈だッ、残り21は何処行った?」
ディーノは昔トムハットに教えて貰った41という支配区数をしっかり覚えていた。
レヴィアスファミリーの後釜であるアモンドとファブラを合わせて20区という数字は余りに小さすぎる。
「他のビッグネーム達に奪われていった。オーウェンの余りに人道に反した行いによってファミリーを二分する戦争が起こり、その混乱を着いてグレイズとベリアスに攻め込まれた。一夜で15の区を奪われ、今ではこの有様だ」
フーマから受けた説明にディーノの怒りが爆発した。
「何だよッ……何だよそれッ!! 余りにも無様過ぎるだろッ親父からファミリーを強奪しておいて奪った区すら守れねえのかよ!!」
「見通しが甘かったとしか言いようが無い。結局あの一件で最も得をしたのは他のビッグネーム達で、現在グレイズが42区、ベリアスが39区、ガイムが20区となっている。この数年間で完全にトップファミリーの座は奪われてしまった」
「訳が分かんねえ、それじゃ何の為に親父が死んだのか分からねえじゃねえか……」
ディーノは言い様の無い虚しさと、その現実を前にしても未だ何の力も持っていない自分に苛立ちを覚えた。
父の死体を足蹴にされているのを指を咥えて見ている様な気分である。
「申し分け無いが悪い話は続く。現在旧レヴィアス系ファミリーの全てが厳しい現状にあり、このまま何も手を打たなければ確実にアモンドもファブラも滅ぶ。我々が仲間割れをしている間に他のファミリーは着実に力を蓄え、その気に成れば簡単に二つのファミリーを滅ぼせる武力を揃えてしまった」
フーマの発言は余りにも救いの無い内容であった。
想像していた何倍も酷い現状にディーノは声を荒げる。
「それじゃあもう手遅れって事か? 俺に何をやっても無駄だだから指咥えて見てろって言いてえのかッ!!」
「そうは言っていない、希望は有る。其れが君だ」
ディーノの激情を正面から受け止めてもフーマは一切表情を変えず、落ち着いた表情のままディーノ目掛けて真っ直ぐに人差し指を向けた。
突然指差されたディーノは困惑し、驚きの表情を浮かべる。
「俺が……希望?」
「そうだ、君が最後の希望だ。今の現状をひっくり返せる力はオーウェンにもディオンさんにも、そしてアンベルトさんにも無い。もしこの世にその力を持っている人間が存在しているとすれば、其れはディーノ君しか居ないんだよ」
フーマは冗談っ気が一切含まれていない本気のトーンで言い切る。
しかし当の本人であるディーノには全くその実感は湧いてこなかった。
幼い頃の記憶で父の弟子達がどれ程の実力を秘めているのかは知っているし、アンベルトに関しては実物を見てその桁違いっぷりを体幹している。
その男達が出来なかった事を、自分が出来るとはとても思えなかった。
「……具体的に、何をすれば良い?」
「そうだな、決定権を持つのは君だからあくまで指示ではなく助言だが……何を差し置いても先ずは分裂したレヴィアスファミリーを一つに統一すべきだろうね。他のビッグファミリーが本格的に潰しに来る前に」
現在の巨大化したビッグファミリー達を迎え撃つには、間違い無く旧レヴィアス勢力全てが一丸となり全戦力を差し向けなければ勝てない。
そして一丸となる為には王を一つに絞らなければならない。
オーウェンからファミリーを奪い返す、そして最悪の場合ディオンとも刃を交える事に成りそうであった。
復讐に拘らないつもりでいたが、どうやらオーウェンとの対決は避けられない様である。
「他のビッグネームが動き出すまでどれ位猶予がある?」
「ビッグネームと言えども我々を完全に潰すとなると多くの兵力を動員する必要が出てくる。その間他ファミリーに攻められないよう条約を結ぶ必要が有るから、早くて数ヶ月、遅くて2,3年だね」
最悪の場合を考えると数ヶ月以内にオーウェンとの因縁に決着を付けて、旧レヴィアス勢力を纏め上げ戦争の準備をしなくては成らないのだ。
恐ろしい程残された時間が少ない、全力で修業に取り組んでも間に合うかどうか。
途端に不安が濁流の様に押し寄せてくる。
「俺にッ、そんなことが出来るのかよ?」
「分からない。君が唯一可能性を秘めている人物というだけであって、出来なければレヴィアスの因子は完全にこの世から消滅するだけだ。生かすも殺すも君次第だよ」
「俺、次第……」
ディーノは自分に何か他人を遙かに凌駕する力が有ると思ってこの裏社会に入った訳では無い、自分が生まれ持った使命を自分勝手に全うしようと思っただけだ。
しかし今、気付かぬ内に多くの物を背負う立場になってしまった。
この瞬間、生まれて始め父親から受け継いだ多くの物に重さを感じたのである。
しかしその重さに音を上げて投げ出せる程ディーノは楽な生き方をしていない。
背負った運命の重さに押し潰されるその瞬間まで這いずってでも前に進み続ける、寧ろ最後まで這いずり回った先で息絶えられるのなら満足である。
(……出来るか如何かの問題じゃねえ、やらねえとッ!! 唯言われるがままに修業を受け身で行っていた俺が馬鹿だった、自分の才能に自信がないなら責めて時間と労力を捧げなきゃダメだろッ!!)
今更自分の歩む道の多くの障害と責任が待ち受けていると分かった所で、諦めるという選択肢はとうの昔に投げ捨ててしまった。
自分がその偉業を達成できる器では無かった場合は、恐らく無様に死ぬだろう。
ならば責めて、無様に死んであの世に行った時に胸を張って『全力で生ききった』と言える様に足掻けるだけ足掻こうと心に決める。
其れが自らの目の前に現われた運命に対する全力の嫌がらせであった。
「あぁもうッ!! 悩んでる時間も勿体ない、結局結末が決まってたとしても泥塗れで流れに逆らってやる。犬死に上等でやれる事は全部やるぞッ!! フーマ授業の続きだ、休憩も一切挟まずぶっ通しで俺に教えてくれッ!!」
自分の考える限界を遙かに上回る過酷な修業が次から次へと押し寄せ、気付くと何事に対してでも受け身に成っていたディーノの目の色が変わる。
その目の光は焦りと自暴自棄と、飢えを含んでいた。
一瞬で引き締まったその表情を見たフーマは少し驚いた様な表情を見せる。
彼は正直言ってディーノが自分に与えられた運命を呪う、若しくは先に待ち構える困難に思い悩み足を止めると思っていた。
しかし結果はその真逆で、ディーノは歩みを止める所か走り出してしまう。
道の果てしなさを知って何故努力出来るのか、フーマにはそれが理解出来なかった。
「何故だ、教えてくれディーノッ。結末が予め決められていて、全ての努力が無駄になると知った上で何故お前は努力が出来る? 全てを投げ出して逃げたいとは思わないのか??」
その声は僅かに震えていた。
彼には理解出来なかったのだ、いかなる努力も生まれた瞬間に与えられた器と運命の前では何の意味も成さないと分かった上で尚努力を続けられるその心が。
一方ディーノは突然口調が変わったフーマに少し驚きながらも、その口調から彼が返答を渇望している事を感じ取って頭を捻る。
そして運良く自分の考えを上手に表せる言葉を見つけ、其れを声に変換した。
「唯の自己満足だよ。どうせ誰にも賞賛されず無駄に死ぬんなら、自分くらいはあの世で褒めてやれる自分で居たいからなッ」
この言葉こそ全てであった。
そしてフーマはその言葉を受け取って満足と諦めが入り交じった笑顔を浮かべる。
「凄いな格好いいよ、私も出来る事ならそう生きたかった……よしッ! じゃあ勉強を続けようか。お望み通り休み無しで知識を叩き込んであげるよ!!」
「おしッ! 宜しくお願いします!!」
こうしてディーノは新たな覚悟を手に入れ、フーマは新たな劣等感を手に入れる。
結局授業は8時間ぶっ通しで続き、ディーノ・フーマ共にその日はヘトヘトになって気絶する様に床へ着いたのだった。
そしてテープを幾つか千切って腕に付けると、真っ白な壁に向かいそのテープを使って壁に紙を貼り付けていく。
「此れは……地図か?」
ディーノは大昔に見た記憶を思い出して紙に描かれている蜂の巣の様な、色取り取りのブロックが密集している絵を見てそう思った。
しかし記憶に残っている地図とは至る所が異なり、ブロックの色が違っていたり大きさが変わっている場所が幾つもある。
「その通りだ、若しかして昔見たことがあったかな? だとすると結構変わってて驚いただろ」
フーマの言葉にディーノは首を縦に振って応じる。
彼が一番驚いたこと、其れは昔見た時デカデカと描かれてたレヴィアスファミリーの支配領が跡形も無く消滅している事だ。
確か裏社会の三分の一程度を支配していた筈だが、今ではその名前すら載っていない。
「本当にレヴィアスファミリーは跡形も無く消えたんだな……」
「ああ、我々の力不足だ。済まない」
何故か頭を下げたフーマを見てディーノは慌てて顔を上げる様に促す。
もし非難される人間が存在するとすれば其れは命の限り戦い続けてくれたフーマ達兵士では無く、全ての責任から逃れてのほほんと過ごしていた自分である。
しかしフーマを攻める気は無いとしても、流石に父が作った巨大ファミリーが跡形も無いのは寂しく感じてしまった。
その複雑な表情を見たフーマが話を続ける。
「8年前のルチアーノ暗殺事件以来、レヴィアスファミリーは主に二つのファミリーに分裂した。一つがクーデターを起こしたオーウェンのファミリーである、アモンドファミリ。もう一つがアモンドに従う事を拒絶したディオンさんを中心とする、ファブラファミリー」
どうやらルチアーノの死後全員がオーウェンの元に寝返った訳ではなく、ディオンを中心とした反抗勢力は存在している様だ。
若しかするとファブラファミリーとは手を結べるかも知れない。
「そうか、じゃあそれぞれ何区ずつ所有してるんだ?」
「アモンドはついこないだ戦争に敗れて今は13区、ファブラファミリーが7区だね」
各ファミリーの支配区数を聞かされたディーノは即座におかしいと気が付く。
元々のレヴィアスの支配区数に比べて、二つのファミリーの合計区数が余りにも少ないのだ。
「おい待てよ、二つのファミリーの支配区数を足し合わせてもたった20区にしか成らねえじゃねえか! 確か昔聞いた話だと配下のファミリーを加えて41はあった筈だッ、残り21は何処行った?」
ディーノは昔トムハットに教えて貰った41という支配区数をしっかり覚えていた。
レヴィアスファミリーの後釜であるアモンドとファブラを合わせて20区という数字は余りに小さすぎる。
「他のビッグネーム達に奪われていった。オーウェンの余りに人道に反した行いによってファミリーを二分する戦争が起こり、その混乱を着いてグレイズとベリアスに攻め込まれた。一夜で15の区を奪われ、今ではこの有様だ」
フーマから受けた説明にディーノの怒りが爆発した。
「何だよッ……何だよそれッ!! 余りにも無様過ぎるだろッ親父からファミリーを強奪しておいて奪った区すら守れねえのかよ!!」
「見通しが甘かったとしか言いようが無い。結局あの一件で最も得をしたのは他のビッグネーム達で、現在グレイズが42区、ベリアスが39区、ガイムが20区となっている。この数年間で完全にトップファミリーの座は奪われてしまった」
「訳が分かんねえ、それじゃ何の為に親父が死んだのか分からねえじゃねえか……」
ディーノは言い様の無い虚しさと、その現実を前にしても未だ何の力も持っていない自分に苛立ちを覚えた。
父の死体を足蹴にされているのを指を咥えて見ている様な気分である。
「申し分け無いが悪い話は続く。現在旧レヴィアス系ファミリーの全てが厳しい現状にあり、このまま何も手を打たなければ確実にアモンドもファブラも滅ぶ。我々が仲間割れをしている間に他のファミリーは着実に力を蓄え、その気に成れば簡単に二つのファミリーを滅ぼせる武力を揃えてしまった」
フーマの発言は余りにも救いの無い内容であった。
想像していた何倍も酷い現状にディーノは声を荒げる。
「それじゃあもう手遅れって事か? 俺に何をやっても無駄だだから指咥えて見てろって言いてえのかッ!!」
「そうは言っていない、希望は有る。其れが君だ」
ディーノの激情を正面から受け止めてもフーマは一切表情を変えず、落ち着いた表情のままディーノ目掛けて真っ直ぐに人差し指を向けた。
突然指差されたディーノは困惑し、驚きの表情を浮かべる。
「俺が……希望?」
「そうだ、君が最後の希望だ。今の現状をひっくり返せる力はオーウェンにもディオンさんにも、そしてアンベルトさんにも無い。もしこの世にその力を持っている人間が存在しているとすれば、其れはディーノ君しか居ないんだよ」
フーマは冗談っ気が一切含まれていない本気のトーンで言い切る。
しかし当の本人であるディーノには全くその実感は湧いてこなかった。
幼い頃の記憶で父の弟子達がどれ程の実力を秘めているのかは知っているし、アンベルトに関しては実物を見てその桁違いっぷりを体幹している。
その男達が出来なかった事を、自分が出来るとはとても思えなかった。
「……具体的に、何をすれば良い?」
「そうだな、決定権を持つのは君だからあくまで指示ではなく助言だが……何を差し置いても先ずは分裂したレヴィアスファミリーを一つに統一すべきだろうね。他のビッグファミリーが本格的に潰しに来る前に」
現在の巨大化したビッグファミリー達を迎え撃つには、間違い無く旧レヴィアス勢力全てが一丸となり全戦力を差し向けなければ勝てない。
そして一丸となる為には王を一つに絞らなければならない。
オーウェンからファミリーを奪い返す、そして最悪の場合ディオンとも刃を交える事に成りそうであった。
復讐に拘らないつもりでいたが、どうやらオーウェンとの対決は避けられない様である。
「他のビッグネームが動き出すまでどれ位猶予がある?」
「ビッグネームと言えども我々を完全に潰すとなると多くの兵力を動員する必要が出てくる。その間他ファミリーに攻められないよう条約を結ぶ必要が有るから、早くて数ヶ月、遅くて2,3年だね」
最悪の場合を考えると数ヶ月以内にオーウェンとの因縁に決着を付けて、旧レヴィアス勢力を纏め上げ戦争の準備をしなくては成らないのだ。
恐ろしい程残された時間が少ない、全力で修業に取り組んでも間に合うかどうか。
途端に不安が濁流の様に押し寄せてくる。
「俺にッ、そんなことが出来るのかよ?」
「分からない。君が唯一可能性を秘めている人物というだけであって、出来なければレヴィアスの因子は完全にこの世から消滅するだけだ。生かすも殺すも君次第だよ」
「俺、次第……」
ディーノは自分に何か他人を遙かに凌駕する力が有ると思ってこの裏社会に入った訳では無い、自分が生まれ持った使命を自分勝手に全うしようと思っただけだ。
しかし今、気付かぬ内に多くの物を背負う立場になってしまった。
この瞬間、生まれて始め父親から受け継いだ多くの物に重さを感じたのである。
しかしその重さに音を上げて投げ出せる程ディーノは楽な生き方をしていない。
背負った運命の重さに押し潰されるその瞬間まで這いずってでも前に進み続ける、寧ろ最後まで這いずり回った先で息絶えられるのなら満足である。
(……出来るか如何かの問題じゃねえ、やらねえとッ!! 唯言われるがままに修業を受け身で行っていた俺が馬鹿だった、自分の才能に自信がないなら責めて時間と労力を捧げなきゃダメだろッ!!)
今更自分の歩む道の多くの障害と責任が待ち受けていると分かった所で、諦めるという選択肢はとうの昔に投げ捨ててしまった。
自分がその偉業を達成できる器では無かった場合は、恐らく無様に死ぬだろう。
ならば責めて、無様に死んであの世に行った時に胸を張って『全力で生ききった』と言える様に足掻けるだけ足掻こうと心に決める。
其れが自らの目の前に現われた運命に対する全力の嫌がらせであった。
「あぁもうッ!! 悩んでる時間も勿体ない、結局結末が決まってたとしても泥塗れで流れに逆らってやる。犬死に上等でやれる事は全部やるぞッ!! フーマ授業の続きだ、休憩も一切挟まずぶっ通しで俺に教えてくれッ!!」
自分の考える限界を遙かに上回る過酷な修業が次から次へと押し寄せ、気付くと何事に対してでも受け身に成っていたディーノの目の色が変わる。
その目の光は焦りと自暴自棄と、飢えを含んでいた。
一瞬で引き締まったその表情を見たフーマは少し驚いた様な表情を見せる。
彼は正直言ってディーノが自分に与えられた運命を呪う、若しくは先に待ち構える困難に思い悩み足を止めると思っていた。
しかし結果はその真逆で、ディーノは歩みを止める所か走り出してしまう。
道の果てしなさを知って何故努力出来るのか、フーマにはそれが理解出来なかった。
「何故だ、教えてくれディーノッ。結末が予め決められていて、全ての努力が無駄になると知った上で何故お前は努力が出来る? 全てを投げ出して逃げたいとは思わないのか??」
その声は僅かに震えていた。
彼には理解出来なかったのだ、いかなる努力も生まれた瞬間に与えられた器と運命の前では何の意味も成さないと分かった上で尚努力を続けられるその心が。
一方ディーノは突然口調が変わったフーマに少し驚きながらも、その口調から彼が返答を渇望している事を感じ取って頭を捻る。
そして運良く自分の考えを上手に表せる言葉を見つけ、其れを声に変換した。
「唯の自己満足だよ。どうせ誰にも賞賛されず無駄に死ぬんなら、自分くらいはあの世で褒めてやれる自分で居たいからなッ」
この言葉こそ全てであった。
そしてフーマはその言葉を受け取って満足と諦めが入り交じった笑顔を浮かべる。
「凄いな格好いいよ、私も出来る事ならそう生きたかった……よしッ! じゃあ勉強を続けようか。お望み通り休み無しで知識を叩き込んであげるよ!!」
「おしッ! 宜しくお願いします!!」
こうしてディーノは新たな覚悟を手に入れ、フーマは新たな劣等感を手に入れる。
結局授業は8時間ぶっ通しで続き、ディーノ・フーマ共にその日はヘトヘトになって気絶する様に床へ着いたのだった。
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