キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

文字の大きさ
95 / 120

第96話 新たな壁

しおりを挟む
 フーマとの座学に一日を費やして身体を休ませたディーノは、翌日から再びゴンザレスとの格闘訓練に戻った。

 しかしその様は今までと一変しており、ディーノは飢えた獣の様に苦行を求めて貪り喰う様に取り組んでいったのである。

 今まで一日10セットで終わっていたゴンザレスとの殴り合いの回数を20セットに増やし、訓練が終わった後も筋トレや則のコントロール訓練などの自主練を重ねていく。

 その結果今まで以上に人間離れした成長速度を見せ、その様はまるで1日ごとに生まれ変わっているが如くであった。



(凄いッ、もう僕と大差ない位の格闘技術を身につけてる。其れも型に嵌まった訳じゃなく身体に馴染んだ喧嘩闘法の柔軟性を生かし、その隙間を埋める様に僕から学んだ戦闘術を落し込んでいる! 此れは厄介だぞ……)



 ガードを読まれ叩き込まれたボディーブローに僅かな呻きを上げ、ゴンザレスは驚愕と苦しみを顔に映し出す。



 短時間で幾度も死にかけ、幾つものリミッターを故意に外せるまで成長したディーノは既にゴンザレスと対等に戦える程に成長していた。

 今まで放っていた無骨で大振りなストレートでは掠りもしなくなり、逆にカウンターという手痛いしっぺ返しを喰らってしまう。

 一方で元々得意であったカウンターだけが上達した訳では無く、比較的苦手としていたアグレッシブに自分から攻めにいく動きも上達して美しいオールラウンドファイターに成長していた。



(強いッ本当に強く成ったよディーノは!! 僕ももう直感に任せて拳を振り回しているだけじゃ倒すのが厳しくなってきた。もう手を抜いて戦える相手じゃ無くないッ)



 ゴンザレスは一見何も考えず我武者羅に戦っている様に見えるが、実際は毎回ディーノが最も成長出来る様に手を抜いていたのだった。

 しかし今、ゴンザレスは手を抜ける手加減出来るギリギリのラインで戦っているが、一方的にディーノの猛攻を受けて防戦一方である。

 もう子供扱いで着るレベルでは無くなった、目の前に立っている紛れも無い一人の戦士だ。



(おめでとうディーノ、良く此処まで登ってきたね。此れが僕が出せる全力だ……君は才能に溢れている、きっと直ぐに僕を追い越せるよ。僕を喰らってッ更に先へ進むんだ!!)



 ディーノに更なる進化を促すため、ゴンザレスは自らに課していた制限を全て取っ払った。

 その制限とは則の使用である。



 そしてその力を最大限に活用する為、戦略を大きく変更した。

 ゴンザレスは何時でも叩き付けられる様に振り上げていた両腕を顔の前でくっ付け、顔面を鉄壁のガードで守りながらディーノに向かって突進する。

 しかしディーノがその異様な突進を黙って見ている訳も無く、素早く地面を蹴って側方に回避した。

 だがその動きも当然予測済みなゴンザレスは、その巨木の様な足を素早く動かして方向転換を決めて張り付く様に突進を続ける。



(何だこの動きッ!? 今までのガン攻めのスタイルじゃねえ、攻撃を捨てて只管に距離を詰めて来やがるッ)



 始めの頃は飢えた獣の様にガード無視で拳を嵐の様に振り回す姿に恐怖したが、其れに慣れた今では要塞の様にガードを固めて只管突進してくる姿に気味悪さを感じる。

 雰囲気が何時もと大きく異なっていたのだ。



 そしてディーノは依然として相手の意図を確かめる為に逃げを選択し続けたが、遂に痺れを切らし自ら仕掛ける事を決意する。

 狙ったのは確実に足を潰せる場所、ガードの下でガラ空きに成っているボディーだ。



(何を狙ってやがるかは分からねえが、内臓を押し潰される苦しみを味わえば作戦どころじゃ無くなるだろ。上手くボディーが決まれば足も止まる筈だッ!!)



 ディーノはボディーブローの代名詞であるジワジワと来るダメージによって足を奪う作戦を選択した。

 ディーノは身をもって無間地獄の様に続くボディーのダメージを知っている、腹に鉛を入れられた様に動きが鈍る筈だ。

 何やら頻りに距離を詰めようとしてくるが、機動力が無くなれば其れも怖く無い。

 この作戦が決まれば後はヒットアンドアウェイで一方的に仕留める事が出来る。



(10分間の地獄巡りを楽しみなッ!!)



 ディーノはわざと中途半端に回避し、ゴンザレスの方向転換を誘発した。

 すると狙い通りゴンザレスも食いつき、キュッという音と共に方向転換して逃げた方向に追いかけてくる。

 その狙い通りのリアクションにディーノは口端を吊り上げ、素早く地面を蹴り逆に大男を自分から迎えに行く。

 そして互いの身体が纏っている速度全てを破壊力に変え、ガラ空きの腹に全力のブローを打ち込んだ。見事命中、内臓を打ち上げるクリティカルヒットである。



「グゥ……ッ!!」



 ゴンザレスから苦しそうな呻き声が聞こえた。

 ディーノはそのリアクションと拳から伝わって来た衝撃から、確実に決定打となる一撃が叩き込まれたと確信する。

 腹が破裂する様な衝撃と呼吸困難を感じている筈で、あと数秒後には脂汗を吹き出しながら立つ事すらままならなく成ると確信していた。

 しかしそんなディーノの予想はゴンザレスの表情を見た瞬間打ち砕かれる。



 ゴンザレスは血走った目で脂汗を出しながら、確かに笑っていたのだ。

 同時にあれ程固く閉ざし顔面への攻撃を防ぐため専用の盾と化していた両腕が、敵の顔面を貫く矛としての表情を覗かせながら大きく開かれた。



(ダメだ、迷うな虚仮威しだッ!! 後一押しで倒れるッ!!)



 今までゴンザレスに何度も敗北して染みついた負け犬本能が全力で危険信号を発するが、ディーノは迷わず拳をガラ空きになった顔面に撃ち放つ。

 未だたった数日間とはいえ地獄の様な修行に身を置いたのだ、彼にも積み重ねてきた努力と実力にプライドと確信を持っていた。

 あのボディーブローには確実に人間の機動力を奪う力があると。

 そしてたった今打ち出した全体重を乗せた弾丸の様なストレートには、一撃で意識を刈り取る威力があると。



 しかしディーノの前に再び巨大な壁が出現する。

 其れは余りに残酷な光景であった、ディーノがこの数日間地獄の如き修業で手に入れた必殺の一撃はゴンザレスの首を若干反らせる程度のダメージしか発生させる事が出来なかったのである。



 渾身のストレートによって反らされた首が元に戻り、ゴンザレスの顔に着いた双眸に灯るキラリと輝く殺意の光を見た瞬間、ディーノの身体は震え出す。

 ゴンザレスは岩石を砕く渾身の一撃を受けて、其れでも尚嬉々として笑っていたのである。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...