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第97話 人域を超える
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(遂に捕まえたッ!! この必中の間合いで打ち合えば確実に僕が勝利するッ)
ディーノが放った渾身の一撃を堪えきり、ゴンザレスは凶暴な笑顔を覗かせた。
レフェリーが存在しない実際の殺し合いでは、一度互いに踏み込めば確定で乱打戦が発生する間合いがある。
回避の択が出現する余地も無い程の至近距離で、物理的にどのように動いても確実に攻撃が命中してしまうのだ。
その為互いに殴り合いから逃れる事が出来ず、一方が倒れるまで永遠に攻撃を放ち続ける事になる。
そして其れこそが今の状況であり、ゴンザレスが最も得意とする間合いであった。
ディーノのパンチを則の鎧を用いる事によってほぼノーダメージに抑え、逆に返しの攻撃では則を纏わせた拳によって大ダメージを与える事が出来る。
攻防一体の則の力を最大限に生かせる間合いであった。
(フルガードで距離を詰めてノーガードで殴り合う。こうすれば唯一僕が負けているスピードの要素を完全に排除して、圧倒している攻撃力と防御力で一歩的に叩き潰す事が出来る)
そう心の中で叫び、ゴンザレスは決着の一撃と成る筈でだったパンチを受け止められ顔面蒼白となっているディーノ目掛けて拳を振り上げる。
それから後方に倒していた重心を前方へ一気に倒し、身体をまるで巨大なハンマーの様に用いてお返しの一撃をディーノの顔面に見舞った。
「ゴフ……ッ!!」
ディーノの口から嗚咽が零れて拳から骨にヒビが入るピシリッという感触が伝わる。
そして互いに同じ渾身の一発を撃ち合ったはずなのに、先程のゴンザレスとは大きく異なりディーノの身体は吹き飛ばされて宙を舞った。
パンチの威力が桁違いである。本気を出したゴンザレスとディーノの間には、圧倒的なステータス差が存在していたのだ。
(何が起きた……ッ!? 急に攻撃が効かなく成って、パンチの威力が跳ね上がった……)
ディーノは首が折れそうな程の衝撃を受けて目眩を感じ、鼓膜が破れたのか聴覚はもう聞き慣れたキーンッという音で埋まった。
身体が急に重くなり、身体がこのまま眠らせてくれと懇願する中、ディーノはヘソに力を入れて無理身立ち上がって拳を握る。
再び現われたゴンザレスとの巨大な差を感じディーノの気持ちは折れそうになるが、自らで立てた信念に背中を支えられて何と視線をゴンザレスに向けた。
するとその絶望は驚愕に変わる。
何故ならゴンザレスの身体の周りに則が纏わり付き、真っ赤なオーラが身体を包んでいたからだ。
「ディーノ、もう手は抜かない。全力で行くッ」
ディーノはその言葉を聞いて漸く理解した。
そして絶望から驚愕へと推移してきた感情は、此処で遂に歓喜へと昇華する。
「ああ、ありがとうッ」
ディーノは返答し、微かな笑みを浮かべた。
ディーノは突然自分とゴンザレスの間に巨大な差が出現したと思っていたが実際は逆。
知らず知らずの内に追い詰めていたのである、ゴンザレスが全力を出して則を用いなければ成らない程に。
つまり裏を返せば、ディーノは遂にゴンザレスと対等に戦えるレベルにまで到達したという事。
(長かった、遂にお前を本気にさせれたんだなッ。種の違いレベルの巨大な差を感じていたけど、命擦り減らして藻掻いた分だけ差は縮まってたッ)
ディーノは歓喜の渦のただ中で拳を強く握った。
しかし其れ以上に飢えていた。此処は未だ通過点、足を止めるには未だ早すぎる。
(強欲で醜い感情かも知れねえがッ、俺はお前と肩を並べるくらいじゃ満足しねえぞ。勝ちたいッ勝ってその先の景色が見たい!! 俺はお前の隣程度で足を止める訳にはいかねえんだよッ!!)
何度も死にかけ、何度も自分の限界という殻を破り羽化を繰り返したディーノは遂に一つの山の頂へ王手を掛けた。
しかしその場所に立って分かったのが、その頂を遙か上空から見下ろしている無数の山々。
オーウェンからファミリーを奪い返しレヴィアスを復活させる為にはこの程度の力では足りない。
今後確実に待ち受けている海千山千のビッグネーム達との戦いでは話に成らない。
世界を実際に変えるにしても、今の自分が数万人集まって対峙したとして訳無く全員弾き返されるだろう。
まだ足りないのだ、登る前には万物の頂点の様に思えた今の山でも未だ足りない。
しかもその頂きには未だゴンザレスという男が居座っている、今だ頂点を極める事すら出来ていないのだ。
ならば、立ち止まっている時間は無い。
今この瞬間この場所で、ゴンザレスを倒さなくては成らない。
「勝負だゴンザレス……ッ!! 俺はお前を超えてッその先へ行くぞォォッ!!」
先程の攻撃はディーノの全力であった、それ以上の攻撃は持ち得ていないにも関わらず完璧に防ぎきられてしまったのだ。
正に万事休すの状況、しかしこの数日間で幾つもの限界を超えたディーノは其れでも信じ続ける。
今この瞬間に新たな壁を自分が打ち壊す事を。
ディーノは心の中から不安や絶望を追い出し、ゴンザレスを倒したいという思いとそれを実現したビジョンで埋め尽くす。
其処から過剰なまでに拳を握り締め、再びカウンターを恐れず全体重を乗せた一撃を放った。
そしてその拳の命中寸前、一瞬だけ拳から紅のオーラが溢れ出し則と共鳴して鉄壁の防御を突き抜ける。
重く確かな衝撃が伝わり、ゴンザレスが大きく身体を仰け反らせて後退った。
確かに拳は届いたのである、先程は渾身の一撃でも仰け反らせる事すら叶わなかったゴンザレスにダメージを与える事に成功したのだ。
「ブフゥ……ッ!?」
ゴンザレスは確実にエネルギーの鎧で身体を包み込んでいたにも関わらず、歯が砕ける程の衝撃を受けた事に驚愕する。
しかしその驚愕と同時に歓喜もあった。
彼もまた確信していたのだ、自分がどれだけ万全な状況を作り出しどれだけ防御を固めたとしても、その全てを打ち砕く進化をディーノが掴み取ると。
そして今、いともたやする限界を一つこじ開けて見せたのだ。
(今一瞬、拳に則を纏わせていた。無意識に則との共鳴力が上昇しているッ! 最高だよッ君は本当に凄まじい速度で成長していくな!!)
ゴンザレスの目から感動で涙が溢れた。教え子の成長していく姿がこれ程感動的だとは想像もしていなかったのである。
だが其れでもこの戦いの勝者を譲る気は無いし、彼が全力でぶつかればディーノは更なる進化をみせてくれるだろう。
少しでも長くディーノの超えるべき壁としての役割を果たせるように、ゴンザレスは全身全霊で戦いに向き合う。
「ウオオオオオオッ!!」
叫びながら拳を振り上げ、ゴンザレスは則と共鳴しながら右腕にエネルギーを注ぎ込む。
そして地鳴りがする程力強く足下を蹴り付けてディーノとの距離を無に帰し、岩の様に巨大な拳を一切の手加減無しに叩き付けた。
しかし命中した瞬間、拳から伝わって来た衝撃に凄まじい違和感を覚える。
(エネルギーが……散らされたッ!?)
拳がディーノの肌まで数メートル先という所まで迫った時、突如水中で拳を打ち出しているかのような謎の重さを感じたのである。
いや、正確には謎の重さでは無い。ゴンザレスこの重さに身覚えが有ったのだ。
ディーノに達するダメージを軽減させた謎の重さの正体、其れは彼自身も使用している則の鎧であった。
恐らくディーノが無意識に発した『防御』という指示を世界に満ちあふれている則が勝手に受け取りあらゆる法則をフル活用してゴンザレスの攻撃を弱めたのだ。
その結果ディーノが受けるダメージは大きく軽減され、前回は大きく吹っ飛んだにも関わらず今回は数歩後ろに後退った程度である。
しかし驚いたのはゴンザレスだけでは無い、それ所かディーノが感じたのは驚きというより混乱であった。
(何だ、急にパンチの威力が低下した。ゴンザレスが手を抜いてくれたのか? いやッ其れは有り得ない……)
ディーノは微かに痺れる程度のダメージしか受けなかった頬を押させ、呆然と立ち尽くす。
再び頭がもげる程の衝撃を覚悟していたにも関わらず、今回の攻撃は拍子抜けする程威力が低かったのだ。
当然ゴンザレスが故意に手を抜く事は有り得ないので、異変が起こったのは当然自分の身体という事になる。
その事に気が付いて、漸くディーノは自分の身体に大量の則が纏わり付いている事に気が付いた。
そして頼んでいないにも関わらず大量のエネルギーが身体に流れ込み、身体から色取り取りの雷光が漏れ出している。
「何だこれ……ッ!?」
ディーノは自分の両腕を瞳孔が開いた目で見詰め、確実に普通じゃ無い事が起こっているという事実に言葉を失う。
しかしその変化に驚く隙も与えず、更なる異変が襲い掛かった。
突如深海に裸で放り出された様なもの凄い圧力を四方から受け、全身の骨がギギギシッと悲鳴を上げ始めたのである。
そして気付いてしまった、今自分は意図せずに集めた大量の則によって圧死寸前であると。
想像もしていなかった訳の分からない死が近づき、長生きは出来ないと覚悟していたディーノであっても流石に取り乱した。
戦いに敗れて死ぬ覚悟は出来ていても、流石に自分の力で押し潰されペシャンコになる覚悟はしていない。
(ふざけんなッ何だよこれ!! こんな訳の分からねえ死に方で死んで溜まるかッ! 此れで死んだら恥ずかしくてあの世の親父達に顔向け出来ねえぞ!!)
ディーノは突然出現した圧死の恐怖に、若干パニックに陥る。
しかしディーノが幾ら心の中で毒づいても一切身体を押し潰す圧力は弱まらず、それどころか時間に比例してますます力が強くなっていった。
そしてこの訳の分からない死因を受け入れ無念の中で死ぬ覚悟を決めたその時、突如耳にゴンザレスの叫び声が飛び込んで来くる。
「地面を殴るんだァーッ!! とにかく全力で思いっきり、地面を殴れェーーッ!!」
「じッ地面を、殴れだと?? 何でそんな事をッ」
突拍子も無い状況で突拍子も無い指示を出されたディーノは大いに混乱し、地面とゴンザレスを交互に見返す。
しかし非常に差し迫った状況で有り、唯一刻一刻と事態が悪化しているという事だけが分かったので、ディーノは半ばヤケクソでその指示に従う。
「クソッ!! もうどうとでも成りやがれ、オラアアアアアッ!!」
そして全集中を地面に向け、謎の力で殺され掛けている八つ当たりも含めて全力の一撃を地面に撃ち放った。
その瞬間ディーノの地面を粉々に粉砕して苛立ち発散したいという思いを則が汲み取り、全身を包んでいた肉体を押し潰す程のエネルギーを全て腕伝いに地面へ流し込む。
ディーノの拳が発した衝突はまるで落雷が如くであった。
一瞬で地面に蜘蛛の巣状の亀裂が迸り、その亀裂の間を有り余ったエネルギーが閃光を撒き散らしながら駆け抜けた。
最終的に行き場を失ったエネルギーは地下へと流れ、コンクリートで覆われた床は小規模の地殻変動によってある場所は隆起しある場所は陥没する。
とても一人に人間が身一つで起こしたとは考えられない破壊。
しかし其れが彼自身の身体から発せられた破壊であると証明するかの様にディーノの身体からエネルギーが抜け落ち、圧力から解放されて力なく膝を着いたのだった。
ディーノが放った渾身の一撃を堪えきり、ゴンザレスは凶暴な笑顔を覗かせた。
レフェリーが存在しない実際の殺し合いでは、一度互いに踏み込めば確定で乱打戦が発生する間合いがある。
回避の択が出現する余地も無い程の至近距離で、物理的にどのように動いても確実に攻撃が命中してしまうのだ。
その為互いに殴り合いから逃れる事が出来ず、一方が倒れるまで永遠に攻撃を放ち続ける事になる。
そして其れこそが今の状況であり、ゴンザレスが最も得意とする間合いであった。
ディーノのパンチを則の鎧を用いる事によってほぼノーダメージに抑え、逆に返しの攻撃では則を纏わせた拳によって大ダメージを与える事が出来る。
攻防一体の則の力を最大限に生かせる間合いであった。
(フルガードで距離を詰めてノーガードで殴り合う。こうすれば唯一僕が負けているスピードの要素を完全に排除して、圧倒している攻撃力と防御力で一歩的に叩き潰す事が出来る)
そう心の中で叫び、ゴンザレスは決着の一撃と成る筈でだったパンチを受け止められ顔面蒼白となっているディーノ目掛けて拳を振り上げる。
それから後方に倒していた重心を前方へ一気に倒し、身体をまるで巨大なハンマーの様に用いてお返しの一撃をディーノの顔面に見舞った。
「ゴフ……ッ!!」
ディーノの口から嗚咽が零れて拳から骨にヒビが入るピシリッという感触が伝わる。
そして互いに同じ渾身の一発を撃ち合ったはずなのに、先程のゴンザレスとは大きく異なりディーノの身体は吹き飛ばされて宙を舞った。
パンチの威力が桁違いである。本気を出したゴンザレスとディーノの間には、圧倒的なステータス差が存在していたのだ。
(何が起きた……ッ!? 急に攻撃が効かなく成って、パンチの威力が跳ね上がった……)
ディーノは首が折れそうな程の衝撃を受けて目眩を感じ、鼓膜が破れたのか聴覚はもう聞き慣れたキーンッという音で埋まった。
身体が急に重くなり、身体がこのまま眠らせてくれと懇願する中、ディーノはヘソに力を入れて無理身立ち上がって拳を握る。
再び現われたゴンザレスとの巨大な差を感じディーノの気持ちは折れそうになるが、自らで立てた信念に背中を支えられて何と視線をゴンザレスに向けた。
するとその絶望は驚愕に変わる。
何故ならゴンザレスの身体の周りに則が纏わり付き、真っ赤なオーラが身体を包んでいたからだ。
「ディーノ、もう手は抜かない。全力で行くッ」
ディーノはその言葉を聞いて漸く理解した。
そして絶望から驚愕へと推移してきた感情は、此処で遂に歓喜へと昇華する。
「ああ、ありがとうッ」
ディーノは返答し、微かな笑みを浮かべた。
ディーノは突然自分とゴンザレスの間に巨大な差が出現したと思っていたが実際は逆。
知らず知らずの内に追い詰めていたのである、ゴンザレスが全力を出して則を用いなければ成らない程に。
つまり裏を返せば、ディーノは遂にゴンザレスと対等に戦えるレベルにまで到達したという事。
(長かった、遂にお前を本気にさせれたんだなッ。種の違いレベルの巨大な差を感じていたけど、命擦り減らして藻掻いた分だけ差は縮まってたッ)
ディーノは歓喜の渦のただ中で拳を強く握った。
しかし其れ以上に飢えていた。此処は未だ通過点、足を止めるには未だ早すぎる。
(強欲で醜い感情かも知れねえがッ、俺はお前と肩を並べるくらいじゃ満足しねえぞ。勝ちたいッ勝ってその先の景色が見たい!! 俺はお前の隣程度で足を止める訳にはいかねえんだよッ!!)
何度も死にかけ、何度も自分の限界という殻を破り羽化を繰り返したディーノは遂に一つの山の頂へ王手を掛けた。
しかしその場所に立って分かったのが、その頂を遙か上空から見下ろしている無数の山々。
オーウェンからファミリーを奪い返しレヴィアスを復活させる為にはこの程度の力では足りない。
今後確実に待ち受けている海千山千のビッグネーム達との戦いでは話に成らない。
世界を実際に変えるにしても、今の自分が数万人集まって対峙したとして訳無く全員弾き返されるだろう。
まだ足りないのだ、登る前には万物の頂点の様に思えた今の山でも未だ足りない。
しかもその頂きには未だゴンザレスという男が居座っている、今だ頂点を極める事すら出来ていないのだ。
ならば、立ち止まっている時間は無い。
今この瞬間この場所で、ゴンザレスを倒さなくては成らない。
「勝負だゴンザレス……ッ!! 俺はお前を超えてッその先へ行くぞォォッ!!」
先程の攻撃はディーノの全力であった、それ以上の攻撃は持ち得ていないにも関わらず完璧に防ぎきられてしまったのだ。
正に万事休すの状況、しかしこの数日間で幾つもの限界を超えたディーノは其れでも信じ続ける。
今この瞬間に新たな壁を自分が打ち壊す事を。
ディーノは心の中から不安や絶望を追い出し、ゴンザレスを倒したいという思いとそれを実現したビジョンで埋め尽くす。
其処から過剰なまでに拳を握り締め、再びカウンターを恐れず全体重を乗せた一撃を放った。
そしてその拳の命中寸前、一瞬だけ拳から紅のオーラが溢れ出し則と共鳴して鉄壁の防御を突き抜ける。
重く確かな衝撃が伝わり、ゴンザレスが大きく身体を仰け反らせて後退った。
確かに拳は届いたのである、先程は渾身の一撃でも仰け反らせる事すら叶わなかったゴンザレスにダメージを与える事に成功したのだ。
「ブフゥ……ッ!?」
ゴンザレスは確実にエネルギーの鎧で身体を包み込んでいたにも関わらず、歯が砕ける程の衝撃を受けた事に驚愕する。
しかしその驚愕と同時に歓喜もあった。
彼もまた確信していたのだ、自分がどれだけ万全な状況を作り出しどれだけ防御を固めたとしても、その全てを打ち砕く進化をディーノが掴み取ると。
そして今、いともたやする限界を一つこじ開けて見せたのだ。
(今一瞬、拳に則を纏わせていた。無意識に則との共鳴力が上昇しているッ! 最高だよッ君は本当に凄まじい速度で成長していくな!!)
ゴンザレスの目から感動で涙が溢れた。教え子の成長していく姿がこれ程感動的だとは想像もしていなかったのである。
だが其れでもこの戦いの勝者を譲る気は無いし、彼が全力でぶつかればディーノは更なる進化をみせてくれるだろう。
少しでも長くディーノの超えるべき壁としての役割を果たせるように、ゴンザレスは全身全霊で戦いに向き合う。
「ウオオオオオオッ!!」
叫びながら拳を振り上げ、ゴンザレスは則と共鳴しながら右腕にエネルギーを注ぎ込む。
そして地鳴りがする程力強く足下を蹴り付けてディーノとの距離を無に帰し、岩の様に巨大な拳を一切の手加減無しに叩き付けた。
しかし命中した瞬間、拳から伝わって来た衝撃に凄まじい違和感を覚える。
(エネルギーが……散らされたッ!?)
拳がディーノの肌まで数メートル先という所まで迫った時、突如水中で拳を打ち出しているかのような謎の重さを感じたのである。
いや、正確には謎の重さでは無い。ゴンザレスこの重さに身覚えが有ったのだ。
ディーノに達するダメージを軽減させた謎の重さの正体、其れは彼自身も使用している則の鎧であった。
恐らくディーノが無意識に発した『防御』という指示を世界に満ちあふれている則が勝手に受け取りあらゆる法則をフル活用してゴンザレスの攻撃を弱めたのだ。
その結果ディーノが受けるダメージは大きく軽減され、前回は大きく吹っ飛んだにも関わらず今回は数歩後ろに後退った程度である。
しかし驚いたのはゴンザレスだけでは無い、それ所かディーノが感じたのは驚きというより混乱であった。
(何だ、急にパンチの威力が低下した。ゴンザレスが手を抜いてくれたのか? いやッ其れは有り得ない……)
ディーノは微かに痺れる程度のダメージしか受けなかった頬を押させ、呆然と立ち尽くす。
再び頭がもげる程の衝撃を覚悟していたにも関わらず、今回の攻撃は拍子抜けする程威力が低かったのだ。
当然ゴンザレスが故意に手を抜く事は有り得ないので、異変が起こったのは当然自分の身体という事になる。
その事に気が付いて、漸くディーノは自分の身体に大量の則が纏わり付いている事に気が付いた。
そして頼んでいないにも関わらず大量のエネルギーが身体に流れ込み、身体から色取り取りの雷光が漏れ出している。
「何だこれ……ッ!?」
ディーノは自分の両腕を瞳孔が開いた目で見詰め、確実に普通じゃ無い事が起こっているという事実に言葉を失う。
しかしその変化に驚く隙も与えず、更なる異変が襲い掛かった。
突如深海に裸で放り出された様なもの凄い圧力を四方から受け、全身の骨がギギギシッと悲鳴を上げ始めたのである。
そして気付いてしまった、今自分は意図せずに集めた大量の則によって圧死寸前であると。
想像もしていなかった訳の分からない死が近づき、長生きは出来ないと覚悟していたディーノであっても流石に取り乱した。
戦いに敗れて死ぬ覚悟は出来ていても、流石に自分の力で押し潰されペシャンコになる覚悟はしていない。
(ふざけんなッ何だよこれ!! こんな訳の分からねえ死に方で死んで溜まるかッ! 此れで死んだら恥ずかしくてあの世の親父達に顔向け出来ねえぞ!!)
ディーノは突然出現した圧死の恐怖に、若干パニックに陥る。
しかしディーノが幾ら心の中で毒づいても一切身体を押し潰す圧力は弱まらず、それどころか時間に比例してますます力が強くなっていった。
そしてこの訳の分からない死因を受け入れ無念の中で死ぬ覚悟を決めたその時、突如耳にゴンザレスの叫び声が飛び込んで来くる。
「地面を殴るんだァーッ!! とにかく全力で思いっきり、地面を殴れェーーッ!!」
「じッ地面を、殴れだと?? 何でそんな事をッ」
突拍子も無い状況で突拍子も無い指示を出されたディーノは大いに混乱し、地面とゴンザレスを交互に見返す。
しかし非常に差し迫った状況で有り、唯一刻一刻と事態が悪化しているという事だけが分かったので、ディーノは半ばヤケクソでその指示に従う。
「クソッ!! もうどうとでも成りやがれ、オラアアアアアッ!!」
そして全集中を地面に向け、謎の力で殺され掛けている八つ当たりも含めて全力の一撃を地面に撃ち放った。
その瞬間ディーノの地面を粉々に粉砕して苛立ち発散したいという思いを則が汲み取り、全身を包んでいた肉体を押し潰す程のエネルギーを全て腕伝いに地面へ流し込む。
ディーノの拳が発した衝突はまるで落雷が如くであった。
一瞬で地面に蜘蛛の巣状の亀裂が迸り、その亀裂の間を有り余ったエネルギーが閃光を撒き散らしながら駆け抜けた。
最終的に行き場を失ったエネルギーは地下へと流れ、コンクリートで覆われた床は小規模の地殻変動によってある場所は隆起しある場所は陥没する。
とても一人に人間が身一つで起こしたとは考えられない破壊。
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