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第116話 重心を掴む
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先ず始めはフーマが行っていたコマの回し方を真似して小さな皿の上にコマを置き、両手でそれを挟んで素早く回転させた。
すると最初はコマの質量が想像以上に重くて回すのに失敗したが、2回目で直ぐに修正して上手に回転させる事に成功する。
「凄え、本当に回転がブレねえ……」
初めて自らの手で上手く回ったコマを見て、ディーノの口から自然とそう言葉が漏れ出た。
キューンッという静かで研ぎ澄まされた音が零れ、平面では一切揺らぐ事無く一点に留まって回転を続けて居る。
この状態であれば本当に1時間位回り続けていそうだ。
「おしッ、じゃあ次行くか」
ディーノはずっとコマの回転を眺めていたいという感情も覚えたが、其れでも修行の為の時間が一秒でも削れる事に口惜しさを感じた。
其処で次の段階、指にコマを乗せるという段階に至る為にコマが乗っている小皿を持ち上げる。
そして指先目掛けて皿を傾け、ゆっくり慎重にコマを移動させて無事指の先にコマを乗せることに成功した。
(予想はしてたけど、想像以上に重いなッ)
指先から伝わるズッシリとした重さに顔をしかめなが、ディーノは全神経を指先に注いで回転にブレが生じないよう耐え続けた。
その時、フーマが開けっぱなしにしていた窓から風が吹き込んできて、コマが小さく左側に状態が崩れる。
ディーノは慌ててそのブレを修正する為に自らの指自体を左側に移動させた。
しかしその加減を見誤ってしまったのか、今度は逆に右側へブレてしまう。
「クッ……フ、うおッ……ぐぬぬ……」
立て直せば立て直すほどブレが大きくなり、結局ディーノはコマに振り回される形となって忙しなく指を動かす事となった。
しかし幾ら立て直してもブレが大きく成るばかりである。
そしてそのタイミングで再び風が吹きトドメとなった、立て直しが不可能なほど揺らいだコマ指からこぼれ落ちる。
そしてガンッガンという落下音を響かせて床を転がったのだった。
「はあ、クッソ難しい……何分保った?」
ディーノは部屋に付けられていた時計を見て、自分が何分間コマをキープできたのかチェックする。
すると時計の長針は指の上で回し始めた時に比べて1メモリしか進んでいなかったのだ。
想像の何倍も進んでいなかった時間にディーノは絶句する。
「嘘だろ、60分の1じゃねえか……!!」
そう言ってディーノは凄まじい脱力感を覚えてベッドに背中を預ける。
この修行が一筋縄ではいかないと悟り、何か戦略を立てて挑まなければ確実に達成出来ないと理解したからだ。
天井に付いている鼠色の染みを眺めながらジックリと思考を開始する。
(コマが揺らいだらその方向に指を動かせば良いって話じゃない、一回一回の揺らぎ毎にブレの具合が違う。そして其れに対応する匙加減で帳尻を合わせねえと逆にブレが大きくなる……)
正直最初の感覚だけで言えば蝋燭の修行と同等の難易度に感じた。
此れが初歩の初歩だというが、この先に待っているアノ超スピードを手に入れるまでの課程にどれだけの苦難が待っているのだろうか。
この世の幸福は有限だが、苦難には限りが無いらしい。
しかし幾ら悲観的になっても仕方が無い。
この数日間の修行でどれだけ早足でも階段は一歩ずつしか上れないという事を学んだ、先ずは自分の熟すべき課題を具体化しよう。
そして一つずつ消化していくのだ。
(必要なのは軸のブレ具合を即座に察する感覚、そしてそのブレに合わせて最適な身体の動きを実現する指の細やかな動き……)
この瞬間、自分が目指すべきゴールがハッキリと見えた。
そして同時に分かったのは、そのゴールに到達する為に必要なのは頭を捻る事でも目を瞑って身体を休める事でも無い。
とにかく我武者羅にコマを回し続け、重心の感覚と指先の感覚を掴む事が最優先事項であるという事。
若干現実逃避の為に一人作戦会議を開いたわけだが、結局体当たりで考え無しに手を伸ばすのが自分は一番向いているらしい。
何も差し出さずに済む裏技を探すより、時間と身体を削ってその対価に成長を得る方がギブアンドテイクがしっかりしていて安心できる。
「仕方ねえ、一先ず日が沈んで眠く成るまでコマを回し続けるか。今日はぐっすり眠れるぞ~」
静か過ぎる部屋に一人の声が響き、ディーノは返って寂しさが増す。
しかしその感情を振り切りコマと向かい合って真っ向勝負を挑むその目には迷いがなかった。
師匠達が示してくれる修行に対して疑念は一切無い、何故なら今まで与えてくれた修行全てが目覚ましい成果を自分に与えてくれたから。
その実績と信頼があるから、迷わずどんな修行にでも向き合う事ができる。
この数日間で彼等とディーノの間には強固な信頼関係が出現していたのだ。
その夜、結局ディーノは日が落ちても無心でコマを回し続け、真っ暗になった建物の中でコマの回転するシャーッという音と、コマが床に落ちたゴトッという音が響き続けた。
そして日付が変わった頃、ようやくディーノの集中が限界を迎えて気絶する様に眠ったのである。
すると最初はコマの質量が想像以上に重くて回すのに失敗したが、2回目で直ぐに修正して上手に回転させる事に成功する。
「凄え、本当に回転がブレねえ……」
初めて自らの手で上手く回ったコマを見て、ディーノの口から自然とそう言葉が漏れ出た。
キューンッという静かで研ぎ澄まされた音が零れ、平面では一切揺らぐ事無く一点に留まって回転を続けて居る。
この状態であれば本当に1時間位回り続けていそうだ。
「おしッ、じゃあ次行くか」
ディーノはずっとコマの回転を眺めていたいという感情も覚えたが、其れでも修行の為の時間が一秒でも削れる事に口惜しさを感じた。
其処で次の段階、指にコマを乗せるという段階に至る為にコマが乗っている小皿を持ち上げる。
そして指先目掛けて皿を傾け、ゆっくり慎重にコマを移動させて無事指の先にコマを乗せることに成功した。
(予想はしてたけど、想像以上に重いなッ)
指先から伝わるズッシリとした重さに顔をしかめなが、ディーノは全神経を指先に注いで回転にブレが生じないよう耐え続けた。
その時、フーマが開けっぱなしにしていた窓から風が吹き込んできて、コマが小さく左側に状態が崩れる。
ディーノは慌ててそのブレを修正する為に自らの指自体を左側に移動させた。
しかしその加減を見誤ってしまったのか、今度は逆に右側へブレてしまう。
「クッ……フ、うおッ……ぐぬぬ……」
立て直せば立て直すほどブレが大きくなり、結局ディーノはコマに振り回される形となって忙しなく指を動かす事となった。
しかし幾ら立て直してもブレが大きく成るばかりである。
そしてそのタイミングで再び風が吹きトドメとなった、立て直しが不可能なほど揺らいだコマ指からこぼれ落ちる。
そしてガンッガンという落下音を響かせて床を転がったのだった。
「はあ、クッソ難しい……何分保った?」
ディーノは部屋に付けられていた時計を見て、自分が何分間コマをキープできたのかチェックする。
すると時計の長針は指の上で回し始めた時に比べて1メモリしか進んでいなかったのだ。
想像の何倍も進んでいなかった時間にディーノは絶句する。
「嘘だろ、60分の1じゃねえか……!!」
そう言ってディーノは凄まじい脱力感を覚えてベッドに背中を預ける。
この修行が一筋縄ではいかないと悟り、何か戦略を立てて挑まなければ確実に達成出来ないと理解したからだ。
天井に付いている鼠色の染みを眺めながらジックリと思考を開始する。
(コマが揺らいだらその方向に指を動かせば良いって話じゃない、一回一回の揺らぎ毎にブレの具合が違う。そして其れに対応する匙加減で帳尻を合わせねえと逆にブレが大きくなる……)
正直最初の感覚だけで言えば蝋燭の修行と同等の難易度に感じた。
此れが初歩の初歩だというが、この先に待っているアノ超スピードを手に入れるまでの課程にどれだけの苦難が待っているのだろうか。
この世の幸福は有限だが、苦難には限りが無いらしい。
しかし幾ら悲観的になっても仕方が無い。
この数日間の修行でどれだけ早足でも階段は一歩ずつしか上れないという事を学んだ、先ずは自分の熟すべき課題を具体化しよう。
そして一つずつ消化していくのだ。
(必要なのは軸のブレ具合を即座に察する感覚、そしてそのブレに合わせて最適な身体の動きを実現する指の細やかな動き……)
この瞬間、自分が目指すべきゴールがハッキリと見えた。
そして同時に分かったのは、そのゴールに到達する為に必要なのは頭を捻る事でも目を瞑って身体を休める事でも無い。
とにかく我武者羅にコマを回し続け、重心の感覚と指先の感覚を掴む事が最優先事項であるという事。
若干現実逃避の為に一人作戦会議を開いたわけだが、結局体当たりで考え無しに手を伸ばすのが自分は一番向いているらしい。
何も差し出さずに済む裏技を探すより、時間と身体を削ってその対価に成長を得る方がギブアンドテイクがしっかりしていて安心できる。
「仕方ねえ、一先ず日が沈んで眠く成るまでコマを回し続けるか。今日はぐっすり眠れるぞ~」
静か過ぎる部屋に一人の声が響き、ディーノは返って寂しさが増す。
しかしその感情を振り切りコマと向かい合って真っ向勝負を挑むその目には迷いがなかった。
師匠達が示してくれる修行に対して疑念は一切無い、何故なら今まで与えてくれた修行全てが目覚ましい成果を自分に与えてくれたから。
その実績と信頼があるから、迷わずどんな修行にでも向き合う事ができる。
この数日間で彼等とディーノの間には強固な信頼関係が出現していたのだ。
その夜、結局ディーノは日が落ちても無心でコマを回し続け、真っ暗になった建物の中でコマの回転するシャーッという音と、コマが床に落ちたゴトッという音が響き続けた。
そして日付が変わった頃、ようやくディーノの集中が限界を迎えて気絶する様に眠ったのである。
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