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3章 公爵令嬢の救い方 編
幕間ルシア視点 ハーレムキングを知った日
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昔から、私は“あの家”に居場所がなかった。
正妻の子ではなかったから、それが理由だった。
私は“公爵家の養女”だった。それが私のすべてを縛っていた。
与えられた部屋は北棟の使用人区画の近く。
食事は家族とは別。冷たい床、冷たい皿、冷たい視線。
兄様からも毎日のように暴言を浴びせられ、時には暴力を振るわれることもあった。
それでも、頼れる使用人も三人いた。
彼らは誰にもバレないように私に尽くしてくれた。相談に乗ってくれた。しかし、それに気がついた兄様は彼らと私を遠ざけてきた。
もう、絶望しかなかった。頼れる存在をなくし、まさに袋小路状態。館にいる限り、私の居場所はどこにもなかった。
——それ以来、私は決して涙を見せないと誓った。
“仮面”を被ることが、唯一の生き残る術だったから。
そんな日々が、永遠に続くとさえ思っていた。
けれど——
「王、推参ッ!!」
空から降ってきた彼は、あまりに荒唐無稽で、あまりに眩しかった。
助けられた日、私の中で何かが音を立てて崩れた。
その後も、何度も暗殺未遂や嫌がらせがあったけれど、彼はすべてを見抜き、そして笑って、堂々と撥ね退けた。
なぜ、そんなにまっすぐなの?
なぜ、私のことなんて気にしてくれるの?
答えは、決まっていた。
「王だから!」
彼は王だったから。
でもそれ以上に、彼は私を「女」として見ていた。
公爵家の養女という表面的な称号ではなくて、画面の奥の私の本音を見抜いてくれた。引き出してくれた。寄り添ってくれた。
あの夜、月明かりの下で。
自分の仮面が剥がれかけたことに気づいたとき、彼は笑っていた。それはもう嬉しそうに……
本当にそうだったのだろう。
不思議と嫌じゃなかった。
“目的”で始まったはずなのに、あの人の言葉には、“私”がいた。
本当の私を、見てくれている気がした。
そして今日、私はこの地を去る。
新たな名前、新たな戸籍、新たな人生。
もう、養女でも、道具でもない。
私は、私として生きていく。
あの人に導かれて。
そして——
恋を、知ったから。
(……ありがとう、デイビッドさん)
馬車に揺られながら、私は小さく呟いた。
風が、涙をひと雫だけさらっていった。
それは、仮面の内側に隠していた、最後の涙だった。
これからはもう仮面なんて必要ない!
デイビッドさんが私の未来を切り開いてくれたから!
正妻の子ではなかったから、それが理由だった。
私は“公爵家の養女”だった。それが私のすべてを縛っていた。
与えられた部屋は北棟の使用人区画の近く。
食事は家族とは別。冷たい床、冷たい皿、冷たい視線。
兄様からも毎日のように暴言を浴びせられ、時には暴力を振るわれることもあった。
それでも、頼れる使用人も三人いた。
彼らは誰にもバレないように私に尽くしてくれた。相談に乗ってくれた。しかし、それに気がついた兄様は彼らと私を遠ざけてきた。
もう、絶望しかなかった。頼れる存在をなくし、まさに袋小路状態。館にいる限り、私の居場所はどこにもなかった。
——それ以来、私は決して涙を見せないと誓った。
“仮面”を被ることが、唯一の生き残る術だったから。
そんな日々が、永遠に続くとさえ思っていた。
けれど——
「王、推参ッ!!」
空から降ってきた彼は、あまりに荒唐無稽で、あまりに眩しかった。
助けられた日、私の中で何かが音を立てて崩れた。
その後も、何度も暗殺未遂や嫌がらせがあったけれど、彼はすべてを見抜き、そして笑って、堂々と撥ね退けた。
なぜ、そんなにまっすぐなの?
なぜ、私のことなんて気にしてくれるの?
答えは、決まっていた。
「王だから!」
彼は王だったから。
でもそれ以上に、彼は私を「女」として見ていた。
公爵家の養女という表面的な称号ではなくて、画面の奥の私の本音を見抜いてくれた。引き出してくれた。寄り添ってくれた。
あの夜、月明かりの下で。
自分の仮面が剥がれかけたことに気づいたとき、彼は笑っていた。それはもう嬉しそうに……
本当にそうだったのだろう。
不思議と嫌じゃなかった。
“目的”で始まったはずなのに、あの人の言葉には、“私”がいた。
本当の私を、見てくれている気がした。
そして今日、私はこの地を去る。
新たな名前、新たな戸籍、新たな人生。
もう、養女でも、道具でもない。
私は、私として生きていく。
あの人に導かれて。
そして——
恋を、知ったから。
(……ありがとう、デイビッドさん)
馬車に揺られながら、私は小さく呟いた。
風が、涙をひと雫だけさらっていった。
それは、仮面の内側に隠していた、最後の涙だった。
これからはもう仮面なんて必要ない!
デイビッドさんが私の未来を切り開いてくれたから!
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