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3章 公爵令嬢の救い方 編
ハーレムキングは旅立った
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ついにオレとサラが出発する日。
エルネス領に朝の鐘が響くころ、オレとサラは館の正門へと向かっていた。
客人として数日間の滞在をしたが、馬車の用意も何もなく、見送る者などいない……はずだったのだが。
「……おい、そこの“王様”とやら」
嫌な声が聞こえた。
屋敷の玄関扉が開き、姿を現したのは、ルシアの義兄だった。名は忘れた。いや、聞いたことすらなかったか?
相変わらず整った顔だが、薄く笑う口元と濁った瞳が、その人間性を雄弁に物語っていた。
「ずいぶん勝手なことをしてくれたな。使用人を脅し、騒動を起こし……まるでここが貴様の領地であるかのような酷い振る舞いだったじゃないか」
義兄の周囲には、数人の取り巻きの使用人が控えている。
だが、いずれも目を伏せ、無言だった。
もう“誰が王なのか”を理解しているのだ。
だが、義兄だけは気づけない。
だからこそ、滑稽だ。
「いいか、二度と来るな。今後、敷居をまたぐことは絶対に許さん。義妹にも二度と関わるな。あいつなエルネス家の令嬢だからな。次に現れたときは……容赦はしない」
その言葉に、サラが少し眉をひそめるが、オレはただ余裕綽々で首を傾げた。
「ふむ……二度と来るな、か」
オレは一歩だけ、義兄に近づいた。
しかし、威圧は一切せず静かに言い放つ。
「安心しろ。ここに来る理由はない。君の役目はもう終わったからな」
「……なに?」
「次にここを訪れる者がいるとしたら、それは裁定者だろう。現当主が亡くなったのち、君は当主になる。しかし、あっという間に公爵の座を奪われ、領民に背を向けた君に、いずれ“応報”が訪れる。王であるオレが動くまでもない。勝手に滅びていけ」
「なっ……貴様……!」
「ふははははっ! 怒るな怒るな。君にはまだ、気高く吠える自由だけは残されている。それを最後まで楽しんでいけ」
オレはそれだけを残し、踵を返した。
サラが無言でついてくる。彼女の横顔にも、もう怒りはない。哀れみすら浮かんでいた。
歩いて門をくぐりながら、オレは最後にもう一度、後ろを振り返る。
「……ああ、そうそう。これは余談だが——」
オレはちらりと義兄を一瞥し、口角を上げた。
「オレのような王が来たという“記憶”だけは、どうか大切にするといい! 君のような偽物とは訳が違う、本物の王を間近で見れたのだからな!」
それは、宣言だった。
この屋敷に現れた“本物”を見逃し続けた者たちへの、王からの惜別の一撃。
彼らは無言だった。何も返さない。否、返せない。
口元を眺めることしかできない。実に無様だ、情けない。
踵を返して改めて立ち去ると、サラが小声で言う。
「……ほんとに、王様って最後までカッコつけますよね」
「ふははははっ! 王とは去り際にこそ気を配るものだからな! 君の方こそ館で数日過ごすうちにお淑やかになったのではないか? 最近は得意のツッコミを聞いていないが?」
「はぁ!? もともと私はツッコミ担当じゃないんですけどー!」
「懐かしい感覚だ! やはり、嫌な空気を過ごすよりずっといい! さあ、今度は朗らかな旅を始めよう! 次なるヒロインを求めて!」
「え、ルシアさんを堕としたばかりなのにまだ別の人にアプローチするつもりなの!?」
「当然! ハーレムキングは人数を制限することはない! オレの力が及ぶ限り、オレの目が届く限り、全てを守る覚悟がある! これこそが王が王たる所以なのだ! 行くぞ!」
そうして、エルネス公爵家の門が閉じられた。
ルシアの姿は、そこにはなかった。
だがそれでいい。
夜が来て、星が瞬く頃——彼女は、自らの意思で、あの館を去る。
その道を開いたのは、王の誇りと意志だ。
エルネス領に朝の鐘が響くころ、オレとサラは館の正門へと向かっていた。
客人として数日間の滞在をしたが、馬車の用意も何もなく、見送る者などいない……はずだったのだが。
「……おい、そこの“王様”とやら」
嫌な声が聞こえた。
屋敷の玄関扉が開き、姿を現したのは、ルシアの義兄だった。名は忘れた。いや、聞いたことすらなかったか?
相変わらず整った顔だが、薄く笑う口元と濁った瞳が、その人間性を雄弁に物語っていた。
「ずいぶん勝手なことをしてくれたな。使用人を脅し、騒動を起こし……まるでここが貴様の領地であるかのような酷い振る舞いだったじゃないか」
義兄の周囲には、数人の取り巻きの使用人が控えている。
だが、いずれも目を伏せ、無言だった。
もう“誰が王なのか”を理解しているのだ。
だが、義兄だけは気づけない。
だからこそ、滑稽だ。
「いいか、二度と来るな。今後、敷居をまたぐことは絶対に許さん。義妹にも二度と関わるな。あいつなエルネス家の令嬢だからな。次に現れたときは……容赦はしない」
その言葉に、サラが少し眉をひそめるが、オレはただ余裕綽々で首を傾げた。
「ふむ……二度と来るな、か」
オレは一歩だけ、義兄に近づいた。
しかし、威圧は一切せず静かに言い放つ。
「安心しろ。ここに来る理由はない。君の役目はもう終わったからな」
「……なに?」
「次にここを訪れる者がいるとしたら、それは裁定者だろう。現当主が亡くなったのち、君は当主になる。しかし、あっという間に公爵の座を奪われ、領民に背を向けた君に、いずれ“応報”が訪れる。王であるオレが動くまでもない。勝手に滅びていけ」
「なっ……貴様……!」
「ふははははっ! 怒るな怒るな。君にはまだ、気高く吠える自由だけは残されている。それを最後まで楽しんでいけ」
オレはそれだけを残し、踵を返した。
サラが無言でついてくる。彼女の横顔にも、もう怒りはない。哀れみすら浮かんでいた。
歩いて門をくぐりながら、オレは最後にもう一度、後ろを振り返る。
「……ああ、そうそう。これは余談だが——」
オレはちらりと義兄を一瞥し、口角を上げた。
「オレのような王が来たという“記憶”だけは、どうか大切にするといい! 君のような偽物とは訳が違う、本物の王を間近で見れたのだからな!」
それは、宣言だった。
この屋敷に現れた“本物”を見逃し続けた者たちへの、王からの惜別の一撃。
彼らは無言だった。何も返さない。否、返せない。
口元を眺めることしかできない。実に無様だ、情けない。
踵を返して改めて立ち去ると、サラが小声で言う。
「……ほんとに、王様って最後までカッコつけますよね」
「ふははははっ! 王とは去り際にこそ気を配るものだからな! 君の方こそ館で数日過ごすうちにお淑やかになったのではないか? 最近は得意のツッコミを聞いていないが?」
「はぁ!? もともと私はツッコミ担当じゃないんですけどー!」
「懐かしい感覚だ! やはり、嫌な空気を過ごすよりずっといい! さあ、今度は朗らかな旅を始めよう! 次なるヒロインを求めて!」
「え、ルシアさんを堕としたばかりなのにまだ別の人にアプローチするつもりなの!?」
「当然! ハーレムキングは人数を制限することはない! オレの力が及ぶ限り、オレの目が届く限り、全てを守る覚悟がある! これこそが王が王たる所以なのだ! 行くぞ!」
そうして、エルネス公爵家の門が閉じられた。
ルシアの姿は、そこにはなかった。
だがそれでいい。
夜が来て、星が瞬く頃——彼女は、自らの意思で、あの館を去る。
その道を開いたのは、王の誇りと意志だ。
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