ハーレムキング

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1章 ハーレムキングの目覚め 編

ハーレムキングは問題を知る

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 しばらくして、神官少女が戻ってきた。手には、折り畳まれた男物の服と下着。

「……これ、村の人がいらなくなった古着だそうです。小さくても文句は言わないでください」

「女の子が用意してくれた服に文句などあるものか!」

 オレは満面の笑みでそれを受け取った。さっそく身に着けると、ようやく人間らしくなった。
 元の持ち主は小柄だったのか、オレが着るとはち切れそうなほどパツパツになった。
 いや、違うな。オレが大きすぎるのか。
 身長は190cm程度あるし、体重も100kgを超えているだろう。筋肉で武装された肉体は規格外だ。
 ふむ、王に相応しい肉体だ!

「……それはさておき、助かった、お嬢さん。君の名前を教えてくれないか? オレは全裸の王、改め——」

「サラです。別に名乗らなくていいです。……あの、もうどこか行ってください。というか、出て行ってください!」

「出ていけとな?」

「はい。今すぐに」

「それは……難儀なお願いだ。服に続いて申し訳ないのだが、オレには住処もないのだ。これがどういうことかわかるか?」

「……どうして偉そうなんですか? それって住所不定の不審者だと自白しているだけですよね?」

 冷たい、冷たいな! 
 だが、こんなことでへこたれる王ではない!

「頼む! 少しだけ、この村に滞在させてくれ!」

 オレは腕を組み胸を張った。
 こうする以外に道はない。この世界の常識を何も知らない以上は、最初はおんぶに抱っこで生きていくのみだ!

「……情けないですね。そもそもそれは人に頼む態度ですか?」

「お願いだ! せめて、次に雨が降るまで……いや、次の恋が芽生えるまででいい! 頼む!」

「意味が分かりませんし、ますます出て行ってほしいんですが……」

 サラがあきれたようにため息をついた、その時だった。

 ——くぐもった声が耳に入る。

「……また昨日も見たらしいよ。森の奥で黒い影が動いたって……」
「神官様がいてもダメなんじゃ、もう……」
「夜は外に出ない方がええな」
「こんな変質者が出たのも悪霊の仕業かね?」

 井戸の方から聞こえてきたのは、村人たちの不安げな話し声だった。

 オレだけでなく、サラも怪訝そうにその方向に目をやる。

「……なあ、サラ。今の話はなんだ?」

 オレが問うと、サラはしばし躊躇うように黙って、それから言葉を選ぶようにぽつりと答えた。

「部外者のあなたに教えても無駄でしょうけど、最近、この村の近くにある森で“悪霊”が出るんです」

「悪霊?」

「姿を見たという村人の証言が増えていて……子どもが高熱を出したり、畑の作物が全て枯れたり。直接の被害は少ないけど、徐々に飢饉に近づいています。私も神聖魔法で結界を張っていますが、効果は長く持たなくて……」

 サラの表情は真剣だった。さっきまでのツッコミ体質な姿とは違い、神官としての顔がそこにあった。ツッコミ神官からジョブチェンジを果たしたようだ。

「ツッコミだけでなく神聖魔法とやらも扱えるのだな」

「見ての通り神官ですし、ツッコミ専門じゃないんですけど!?」

 サラの鋭利なツッコミは置いておくとして、訳を知ったオレは少しだけ心の奥がざわめいた。

「……話は戻すが、それで皆、余計にピリピリしてるわけか。変質者というのも気になるな」

「はぁぁぁ……変質者はあなたなんですけどね、まあ、だから、構ってる暇はないんです。ご理解を」

 そう言って、サラは踵を返そうとする……が。

「待て、サラ」

 オレは一歩、彼女の前に出た。堂々と胸を張り、王の風格を持って宣言する。

「ならばオレが悪霊を退治しよう」

「……は?」

 完全に呆けた顔をされる。でも気にしない。いや、むしろそれがいい。こういう時こそ、決め台詞の見せどころだ。

「困っている女の子を放っておけないのが、ハーレムキングの流儀だ! さあ、いくぞ! 服を着たオレは敵なしだ!」

 風が吹いた。なぜか髪がなびいた。

 全裸の王改め、服あり王デイビッド! 
 ついにオレがその第一歩を踏み出す時が来たのだ!

「ちょ、どこに向かってるんですか! 悪霊が出る森はこっちですから! っというか、そもそもあなたを連れていくつもりなんてありませんし!」

「ふはははははっ! 王は一度決めたら最後までやり遂げるものだ! そのような言葉は右から左!」

 オレはサラを引っ張って悪霊が出るという森へと向かうのだった!

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