ハーレムキング

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1章 ハーレムキングの目覚め 編

ハーレムキングは第一村人に会う

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 森を抜けると、そこには舗装されていない土の道が一本、緩やかに丘へと続いていた。

「ふむ。つまり、この道を進めば村か町があるってことだな。服さえあれば完璧なんだが」

 とりあえず、腰に大きめの葉っぱを一枚巻いてみた。
 前面のブツはこれで隠せるが、尻の割れ目については丸出しだ。

 どう見ても不審者だ。いや、どう見てもどころじゃない。紛れもなく、完璧な不審者である。

「これは困った……」

 オレは木の幹にもたれて思案した。ハーレムキングに羞恥心はない。
 だが、相手にドン引きされる状況は避けたい。 それはただの非効率だ。

 何度もいうが恋はタイミングが命だ。
 非効率なことをする意味はない。

「……うむ、こうなれば他人の好意に頼るしかないな。ふはははははっ! ハーレム計画、初手は衣装調達といこう!」

 そうして、オレは道を進み始めた。堂々とした姿勢で、王のごとく!




 しばらく歩くと、木々の隙間から瓦屋根の家並みが見えてきた。想像よりも文明の進んだ村だ。

 人影もちらほら見える。農作業をしている男たち。洗濯物を干す老婆。小さな子どもが犬を追いかけて走り回る。

 そして、村の外れ。井戸の前にいたのは、一人の少女だった。

 腰まで伸びる赤茶の髪を三つ編みにして、ごわっとしてそうなワンピースを着ている。
 年の頃は十六、七くらいだろうか。
 うつむきがちにバケツを持っていて、村娘感がすごい。
 これぞ、THE ムラムスメ である。

「ふむ、ちょうどいい」

 オレは一度、深呼吸をしてから歩み寄った。大丈夫。落ち着け。ハーレムキングに躊躇はない。

「お嬢さん、少しよろしいか?」

「……えっ?」

 少女が顔を上げると同時に、オレは全力の笑みを浮かべた。王の微笑みである。

「実は、森で目覚めたら全裸だったのだ。申し訳ないが、服を譲っていただけないだろうか? もちろん、下心はない。いや、嘘をついた。正直に言おう。下心はある。だが、その下心を悪用するつもりはない! 神に誓おう!」

「……」

 少女は一瞬、言葉を失い——それから顔を真っ赤にして、悲鳴を上げた。

 ふむ、ダメだったようだ。

「ぎゃあああああああああああああっ!!???」

 全力で石を投げられた。頭に直撃。

 ついでと言わんばかりに、井戸から汲んだばかりの冷たい水をぶっかけられ、オレはびしょ濡れになった。
 ちょっとしたシャワーだな。このままでは王としての威厳を失ってしまいかねない。

 オレは少女を呼び止めた。

「待ってくれお嬢さん! 話せばわかる! 愛は誠実さの中にこそ——」

「ヘンタイいいいいい!! こっち来ないでえええ!!」

 全力で逃げていく少女。こちらに振り返りながらも、大小様々な石を投げつけてきた。

「……ふははははっ……! 面白い。実に面白いぞ、この世界!」

 何度でも言おう。最初の印象が最悪でも、そこから始まるのが恋というものだ。

 オレはまだ名前も知らない少女に向かって、手を振った。

「次に会う時には、服を借りるだけじゃない。きっと君の笑顔ももらってみせよう!」

 オレの声はおそらく少女の耳には届いていない。だが、それでいい。
 今回はたまたま縁がなかっただけだ。次のチャンスを見つけることにしよう。

「さて、村に入ろうか」

 村の入口まで来て、オレは一度立ち止まった。

 先ほどの少女もこの村の村人だろう。
 村には彼女以外にも人はいる。目立ちすぎないよう、拾った葉っぱを追加で三枚ほど腰に巻いた。
 これで丸出しだった背面の割れ目がしっかりと隠れたぞ。

「完璧だな」

 視線は相変わらず痛いが、気にしない。オレは今、女の子に服をもらうために生きている。

 村の通りを堂々と歩くと、当然のように注目を浴びた。

「あの人、裸……?」
「いや、葉っぱをつけてるぞ?」
「ギリ裸ではないのか?」
「誰か通報してー! 近くの街の騎士を呼んで!」

 泣きそうになっている子どもを、若い母親が慌てて連れ去る。
 おばあさんが手に持った杖でこちらを小突こうとしている。
 野良猫が毛を逆立てて威嚇している。

 ふむ、警戒されているのは明白だな。

「皆、落ち着いてくれ! オレは敵ではない!」

 そう叫んだ瞬間、がつんと音を立てて、背後から何かがオレの頭に当たった。
 今日はよく頭に衝撃が走る日だな。

 今度はどこのかわい子ちゃんだ?

「……なにをしてるんですか、あなたは」

 振り返ると、そこには見習い神官風の少女が立っていた。
 肩まで伸びる艶のある銀髪、白いロングローブ、そして……怒りに震える手に持った木の杖。

「服を……着なさい、今すぐに」

「お嬢さん。すまないが——」

「言い訳は結構。早急に服を着ないと痛い目見ますよ!」

「いや、違うんだ」

「何が違うんですか!」

「正直に言おう。服がないんだ!」

「はぁ!? じゃあ、そんな格好で村に来るなぁぁぁっ!!!」

 今度は真正面から一撃。がつん。
 頭がぐらついたが、心は揺るがない。本日三度目の衝撃だ。

 痛くはない。
 
 王は寛大なのだ。その程度の不敬は許して然るべし。

「落ち着いてくれ。オレは変質者ではない。ただの服なし王だ」

「頭がおかしいの!?」

「オレの頭は誰よりも正常だ。ところで、君のその容姿はとても優れている。神に仕えるその清らかな姿、実に美しい。さらりと流れる銀髪もさることながら、純白のロングローブは清潔感の象徴だろう。ふむ……本当に美しい。惚れ惚れする!」

「な、なんか嫌な気はしないけど……話を逸らそうとしてませんか!?」

「無論だ。折行って相談があるのだが、お嬢さん、余った服があるなら少しだけ、ほんの少しだけでいいんだ……王であるオレに恵んでくれないか?」

 じっと見つめると、少女の顔がぴくりと引きつった。
 惚れられた……というわけではない。単に畏怖されているようだ。言い換えるならドン引きってやつか?

「……もういいです。そこでちょっと待っててください。すぐ、持ってきますから。これ以上あなたを放っておくと村の混乱がおさまりませんので!」

 ぱたぱたと駆けていく後ろ姿を見ながら、オレはそっと拳を握る。

「やったな。これで一歩、ハーレムに近づいた!」

 いや、目的は服だろ。

 そんな心の声がかすかに聞こえた気がしたが、すぐにかき消した。
 そう。服を得ること=信頼を得ること。
 そして、信頼を得ること=女の子との距離を縮める第一歩なのだ!

「ふはははははっ……そうだ、これこそがハーレムキングの歩むべき道!」

 オレは堂々と立ったまま、村人たちの視線を受け止めていた。
 類い稀なる肉体美を見られるのは気持ちが良いな!
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