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1章 私がガチなのは内緒である
23話 忍耐って大事
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同居生活が始まってから半月ほど経ち、いくつか新発見がある。
まず、萌恵ちゃんと二人きりの私生活は事前に予想していたより遥かに甘美であるということ。
次に、萌恵ちゃんはお風呂で最初に洗髪を済ませ、首筋から徐々に下の方へと丁寧に洗っていくということ。
さらに、寝相がよく寝息も静かで寝顔は天使だということ。
そして、私の理性に対する破壊力が規格外であるということ。これが非常に厄介だ。
生活の中で問題点として挙げられる要素は数あれど、それらはすべて最後の一つに帰結する。
節約という枷はあるものの順風満帆で幸せな日々。
最大の敵となるのは、他ならぬ私自身の本能である。
まぁ仮に私が萌恵ちゃんを力づくで手籠めにしようとしても身体能力の差から確実に未遂で終わるんだけど、そういう問題ではない。
私が嫌がる萌恵ちゃんを襲うなんて、どんな犯罪よりも許されざる悪行だ。
結果的に被害が出なかったとしても、謝って済むことではないし、私の命ぐらいで償える罪でもない。
ゆえに、様々な誘惑に打ち勝つ忍耐力を身に付けることは、最低限の条件であり、最重要な課題でもある。
相手にその気がなく、至って普通に暮らしているだけなのに、なぜそこまで深刻に思案しなければならないのか?
答えは単純明快。
「ん~、癒されるな~。真菜がいれば、抱き枕なんていらないよね」
萌恵ちゃんはスマホをいじる私に後ろからそっと抱き着き、お腹に腕を回して肩に頭を乗せた。
密着したことで伝わる温もりや匂いが脳を刺激し、体の奥が熱くなるのを感じる。
彼女にとっては自然な行動であり、私を欲情させようとする意図はない。
「もう、私は抱き枕じゃないよ」
無難な返答の裏で己の本能と死闘を繰り広げているなんて、萌恵ちゃんは知る由もない。
「このまま寝てもいい?」
「間違いなく寝違えるけど、それでもいいならどうぞ」
「う~ん、それは困るなぁ。名残惜しいけど、少し休憩するだけにしとくよ。邪魔だったら言ってね~」
あぁ、ふにゃっとした声もかわいい。
たとえ動きづらくても萌恵ちゃんを邪魔だと感じるわけもなく、こちらから離れてほしいと訴えることはまずないだろう。
むしろ永遠にこうしていたいと思えるんだけど、だからこそ危ない。
背中に伝わる柔らかくて弾力のある豊かな膨らみがもたらす心地よさといったら、筆舌に尽くし難いというか一から十まで説明していたら人間の寿命じゃ足りないというか。
とにかく、平常心を保つので精一杯だ。
さっきから何食わぬ顔でスマホを操作し続けてるけど、画面に表示されている情報が一切頭に入ってこない。
「あっ、真菜。これおいしそう」
「ひぅんっ!」
肩にあごを乗せた状態で囁かれ、反射的に変な声を漏らしてしまった。
萌恵ちゃんはスマホに映ったグルメサイトの料理に対する感想を述べただけなのに、声が快楽に変換され耳から全身へと駆け巡る。
もし吐息が耳にかかっていたら、骨抜きにされていたに違いない。
「そ、そうだね。盛り付けもきれいだから、視覚でも楽しめるね」
改めて画面に目を落とすと、海鮮料理専門店の看板メニューであるお造りの盛り合わせが掲載されていた。
見るからに新鮮な魚介類が居並ぶ様は、圧巻の一言に尽きる。
「ってこの体勢、あたしって普通に邪魔じゃん。ごめん真菜、動きづらいし気が散るよね!」
ハッとなった萌恵ちゃんが、慌てて退く。
そろそろ理性がピンチだったので、惜しくはあるけど助かった。
「ううん、気にしないで。全然邪魔じゃなかったし、ポカポカして気持ちよかったよ」
しかし、至近距離での囁きがあんなに強力だったとは。
今後はさらなる予測と警戒が必要だ。
「あたしも気持ちよかった。雪山で遭難しても、ぎゅ~って抱き合えば生き残れそうだね!」
「できれば遭難したくないなぁ。怖くて動けなくなるかも」
「大丈夫だよ、なにがあっても真菜はあたしが守るから」
私のお嫁さん、かっこよすぎない?
いや、婚約どころか告白もまだだけども。
まったく、どこまで私を惚れさせれば気が済むのだろう。すべて無自覚なのだから恐ろしい。
「じゃあ、萌恵ちゃんのことは私が守るね」
「お~、真菜がかっこよく見える」
「それって、普段はかっこよくな――」
同じ姿勢で座り続けていたのが災いした。
立ち上がって振り返ろうとした瞬間、足が痺れて体勢を崩してしまう。
「おっと。大丈夫?」
萌恵ちゃんの胸に飛び込む形で支えられ、転倒を免れる。
「あ、ありがとう。ごめん、足が痺れちゃって」
「んふふっ、触ったら大変なことになるね~」
なんてことを言いながら、萌恵ちゃんは私の足には触れないよう細心の注意を払いつつ、お尻の辺りに腕を回してそっと座らせてくれた。
「ありがとう……」
なんでそんなに素敵なの萌恵ちゃん!
足が痺れてなかったら押し倒してたかもしれないよ!
うわああああっ、萌恵ちゃん大好き! 一生一緒にいて!
「それじゃ、あたしはそろそろ夕飯の準備でもしようかな」
萌恵ちゃんは鼻歌を奏でながら、キッチンへ向かった。
中学生の頃に何度か行ったカラオケで歌唱力の高さは知っているけど、鼻歌でもお金を払いたいぐらい耽美な音色だ。
しっとりとしたメロディーにより、心が落ち着きを取り戻す。
今日は改めて、萌恵ちゃんの魅力を痛感させられた。
色香に対してだけでなく、不意に見せるかっこよさにも耐性を付けないと。
足の痺れに耐えながら、いろんな面で忍耐力が必要だと再認識した。
まず、萌恵ちゃんと二人きりの私生活は事前に予想していたより遥かに甘美であるということ。
次に、萌恵ちゃんはお風呂で最初に洗髪を済ませ、首筋から徐々に下の方へと丁寧に洗っていくということ。
さらに、寝相がよく寝息も静かで寝顔は天使だということ。
そして、私の理性に対する破壊力が規格外であるということ。これが非常に厄介だ。
生活の中で問題点として挙げられる要素は数あれど、それらはすべて最後の一つに帰結する。
節約という枷はあるものの順風満帆で幸せな日々。
最大の敵となるのは、他ならぬ私自身の本能である。
まぁ仮に私が萌恵ちゃんを力づくで手籠めにしようとしても身体能力の差から確実に未遂で終わるんだけど、そういう問題ではない。
私が嫌がる萌恵ちゃんを襲うなんて、どんな犯罪よりも許されざる悪行だ。
結果的に被害が出なかったとしても、謝って済むことではないし、私の命ぐらいで償える罪でもない。
ゆえに、様々な誘惑に打ち勝つ忍耐力を身に付けることは、最低限の条件であり、最重要な課題でもある。
相手にその気がなく、至って普通に暮らしているだけなのに、なぜそこまで深刻に思案しなければならないのか?
答えは単純明快。
「ん~、癒されるな~。真菜がいれば、抱き枕なんていらないよね」
萌恵ちゃんはスマホをいじる私に後ろからそっと抱き着き、お腹に腕を回して肩に頭を乗せた。
密着したことで伝わる温もりや匂いが脳を刺激し、体の奥が熱くなるのを感じる。
彼女にとっては自然な行動であり、私を欲情させようとする意図はない。
「もう、私は抱き枕じゃないよ」
無難な返答の裏で己の本能と死闘を繰り広げているなんて、萌恵ちゃんは知る由もない。
「このまま寝てもいい?」
「間違いなく寝違えるけど、それでもいいならどうぞ」
「う~ん、それは困るなぁ。名残惜しいけど、少し休憩するだけにしとくよ。邪魔だったら言ってね~」
あぁ、ふにゃっとした声もかわいい。
たとえ動きづらくても萌恵ちゃんを邪魔だと感じるわけもなく、こちらから離れてほしいと訴えることはまずないだろう。
むしろ永遠にこうしていたいと思えるんだけど、だからこそ危ない。
背中に伝わる柔らかくて弾力のある豊かな膨らみがもたらす心地よさといったら、筆舌に尽くし難いというか一から十まで説明していたら人間の寿命じゃ足りないというか。
とにかく、平常心を保つので精一杯だ。
さっきから何食わぬ顔でスマホを操作し続けてるけど、画面に表示されている情報が一切頭に入ってこない。
「あっ、真菜。これおいしそう」
「ひぅんっ!」
肩にあごを乗せた状態で囁かれ、反射的に変な声を漏らしてしまった。
萌恵ちゃんはスマホに映ったグルメサイトの料理に対する感想を述べただけなのに、声が快楽に変換され耳から全身へと駆け巡る。
もし吐息が耳にかかっていたら、骨抜きにされていたに違いない。
「そ、そうだね。盛り付けもきれいだから、視覚でも楽しめるね」
改めて画面に目を落とすと、海鮮料理専門店の看板メニューであるお造りの盛り合わせが掲載されていた。
見るからに新鮮な魚介類が居並ぶ様は、圧巻の一言に尽きる。
「ってこの体勢、あたしって普通に邪魔じゃん。ごめん真菜、動きづらいし気が散るよね!」
ハッとなった萌恵ちゃんが、慌てて退く。
そろそろ理性がピンチだったので、惜しくはあるけど助かった。
「ううん、気にしないで。全然邪魔じゃなかったし、ポカポカして気持ちよかったよ」
しかし、至近距離での囁きがあんなに強力だったとは。
今後はさらなる予測と警戒が必要だ。
「あたしも気持ちよかった。雪山で遭難しても、ぎゅ~って抱き合えば生き残れそうだね!」
「できれば遭難したくないなぁ。怖くて動けなくなるかも」
「大丈夫だよ、なにがあっても真菜はあたしが守るから」
私のお嫁さん、かっこよすぎない?
いや、婚約どころか告白もまだだけども。
まったく、どこまで私を惚れさせれば気が済むのだろう。すべて無自覚なのだから恐ろしい。
「じゃあ、萌恵ちゃんのことは私が守るね」
「お~、真菜がかっこよく見える」
「それって、普段はかっこよくな――」
同じ姿勢で座り続けていたのが災いした。
立ち上がって振り返ろうとした瞬間、足が痺れて体勢を崩してしまう。
「おっと。大丈夫?」
萌恵ちゃんの胸に飛び込む形で支えられ、転倒を免れる。
「あ、ありがとう。ごめん、足が痺れちゃって」
「んふふっ、触ったら大変なことになるね~」
なんてことを言いながら、萌恵ちゃんは私の足には触れないよう細心の注意を払いつつ、お尻の辺りに腕を回してそっと座らせてくれた。
「ありがとう……」
なんでそんなに素敵なの萌恵ちゃん!
足が痺れてなかったら押し倒してたかもしれないよ!
うわああああっ、萌恵ちゃん大好き! 一生一緒にいて!
「それじゃ、あたしはそろそろ夕飯の準備でもしようかな」
萌恵ちゃんは鼻歌を奏でながら、キッチンへ向かった。
中学生の頃に何度か行ったカラオケで歌唱力の高さは知っているけど、鼻歌でもお金を払いたいぐらい耽美な音色だ。
しっとりとしたメロディーにより、心が落ち着きを取り戻す。
今日は改めて、萌恵ちゃんの魅力を痛感させられた。
色香に対してだけでなく、不意に見せるかっこよさにも耐性を付けないと。
足の痺れに耐えながら、いろんな面で忍耐力が必要だと再認識した。
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