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本編
ナナバの採取依頼
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今回も虫の話が出てきます。
********************************
ふと目を覚ますとまだジークに抱き込まれていた。寝ている途中で寝返りをうったようで、目線がジークの逞しい胸元にある。先ほどと同じく抜け出そうと試みるが全く動かない。何だこれ。痛くないのにしっかりと固定されている。しばらくジタバタしていると頭上から堪えるような笑い声が聞こえてきた。
「起きてますね?」
「ああ、すまない。つい可愛くて。おはようイオ。」
寝起きのイケメンが眩しい。
あと昨日から可愛い可愛い言い過ぎではないだろうか。弟妹がいると言っていたからもしかして弟扱いされてる?
「ジークは寝相が悪いですね。」
「そうかもな。」
フッと笑って腕を解いてくれた。
顔に浄化魔法をかけてテントの外に出るとロロさんが鍋をかき回していた。
「2人ともおはよー。イオくんよく眠れた?」
「おはようございます。ぐっすり眠れました。」
「ラーフはまだ寝てるからイオくん起こしてくれる?」
「わかりました。」
テントの中を覗くとラーフさんがうつ伏せで寝ていた。名前を呼んでも起きないので軽く肩を叩いてみたが反応はない。少し強めに体を揺すってみても全く起きない。困っているとジークが様子を見に来た。
「起きないだろ?ラーフは寝起きだけはダメなんだ。」
「え、じゃあ夜番は1番目の方がよかったんじゃないですか?」
そういえば初日は宿で別部屋だったし、昨夜はジークが起こしに行っていたのでラーフさんの寝起きの悪さは知らなかった。
「いや、なぜか夜番の順番になるとすぐ起きる。」
「責任感が強いんでしょうね。」
それにしても起きない。
「どうやって起こすんですか?」
「こうだ。」
と言ってジークは魔法で大量の水をラーフさんの頭からぶっかけた。
あまりにも乱暴なやり方に絶句してしまった。するとラーフさんがむくりと起き上がった。
「ラーフさん。おはようございます?」
長い髪が水で濡れて完全に顔が隠れているので本当に目覚めたのかがわからない。
すると突然ジークの体がテントの外まで吹っ飛んだ。
「おはようございます。良い朝ですね。」
声低ぅ⋯。ラーフさんはさっと風魔法で濡れた髪や服を乾かして一息つき、
「イオ、おはようございます。」
とにっこり笑った。
どうやら完全に目覚めたようだ。
*******************************
朝食はロロさんが作ったスープとパンと俺が魔法鞄に保管していたアポルの実をデザートにした。
後片付けをして出発する。目的のナナバは標高が高い山に群生地があるので今日は登山だ。
途中で襲ってくる魔獣を討伐しながらひたすら登る。途中で「人にかけるための身体強化の魔法」をラーフさんに教わった。全身を対象にしたり、かけっぱなしにするとやはり魔力消費が大きいので、足や手など部分的かつ瞬間的にかける練習を戦闘中のジークとロロさんにさせてもらった。
最初はタイミングが上手くいかなかったけれど踏み込みのときに足にかけたり、魔獣を斬るときに腕にかけたりと次第にコントロールができるようになっていった。
山頂近くまで歩いていくと景色が開けた場所に着き、そこには一面ナナバの花が密生していた。ナナバの見た目は完全に菜の花だ。ナナバは茎と根が薬の材料になるので花と葉の部分は切り落としてしまう。
しかし実のところ今回ナナバの採取だけが俺の目的ではなかった。さっそく魔力を薄く目の周りに纏わせる。
「イオ、何をしているのですか?」
魔力の動きに敏感なラーフさんがいち早く反応した。
「ナナバモドキを採取できないか試してみたいことがあるんです。」
ナナバモドキとはナナバの花に見た目がそっくりな蟲で、イメージとしてハナカマキリのようなものだ。ナナバの花に紛れて全く動かず、餌の蟲が近くに来たときだけ動くので採取の難易度が最高レベルに難しい蟲だ。
ナナバモドキは良質な薬の材料になるので高値で買い取りされるが、採取が難しすぎて希少価値が高い。それをいったいどうやって採取するのか。通常ならナナバの採取のときに花をよく見てナナバモドキがいればラッキーという完全に運任せの方法しかない。
少し話はそれて、俺は町中で冒険者から逃げ隠れたとき、様子を見るために壁から顔を出すと居場所がバレるので、壁の向こう側を見ることはできないかと思っていた。
そこで「魔力を見る」という魔法を考えることにした。ヒントは小学生のときに読んだ漫画だ。
俺は漫画をあまり読まないのだが通っていた小学校では2年に一度、生徒から人気のある漫画が1作品選ばれ先生たちの許可が出た物は図書室に置かれていた。
俺が読んだのは何年も前に選ばれた少年漫画で、俺はその中でも主人公たちが特殊な試験を受けるなかで修業をする話が好きだった。その修業の中で、目に力を集中させて見えないものを見る方法があったのでそれを応用した。そういえばあの作品はいつ最終回を迎えるだろうか。もう読めないので関係のない話なのだが。
ちなみに社会現象にもなった鬼を退治する漫画も図書室で読んだ。どんなにピンチなときでも絶対に諦めず思考することをやめない主人公に好感を持ったが、長男というだけでここまで頑張れないなと同じ長男としての共感は持てなかった。
魔力とは既存量は異なるが、ほとんどの人が持っているものだ。
目に魔力を纏わせて集中すると人の輪郭が青く光り、魔力量によって光の強さが異なって見える。イメージとしてはサーモグラフィーだ。これは壁に隔たれていてもちゃんと見える。
冒険者は戦闘に有利なので魔力持ちが多い。町中で煌々と青い光を発していたらそれは大抵冒険者だ。これによって冒険者に見つかることもなく無事に逃げられるようになった。
魔力は核を持っている生き物にも等しく保有されている。植物にはない。なのでこの魔力を見る魔法によってナナバモドキを見つけられるのではと以前から思っていた。今回の合同依頼は懸念はあったものの願ってもないことだった。
目に魔力を纏わせたままナナバを観察しながら歩き回る。探しているのは蟲なので魔力は微弱だ。うーんやっぱり見えないな。そんな簡単にはいかないかと思っていたら右目の端に薄く青い光が動いたような気がした。
更に細かく観察すると黄色い花の中にちらちらと動く薄青い光が見えた。見つけた、ナナバモドキだ。
魔法を解除してそっと蟲を捕らえる。手に持って見てもナナバの花にしか見えない。裏返すと花びらのような足が動いてやっとこれが蟲なのだと確信する。これは確かに難易度最高レベルだ。
「これがナナバモドキか!初めてみたぞ。」
実は後ろからずっと付いてきていたジークが驚きの声を上げた。
「すごーいイオくん。どうやったのー!」
「目の周辺に魔力を留めていましたね?どのような魔法展開にしたのですか?」
3人にも魔法を教えてみたが、ジークとロロさんには「魔力を目の周辺に集める」という魔力コントロールができなかった。ラーフさんもコントロールは苦手と言っていたので苦戦していたが、諦めずにずっと集中していた。
ジークとロロさんが飽きたようなので、ナナバモドキを探しながらナナバの採取を手伝ってもらっていたら
「あ!できました!」
と聞こえたので3人で見に行くとラーフさんの目が車のフロントライトのように光っていた。
「ぎゃはははは!ラーフ目が!目が光ってるー!」
「む?なんですか、ちゃんと魔力は視覚化できていますよ?」
「ぶはははは!こっち見んな!」
ラーフさん視線を向けられると眩しい光が顔を直撃してくる。
「ま⋯纏わせる魔力が⋯ふふ⋯強すぎるからですかね⋯ふはははは。」
俺も我慢できなくて笑ってしまった。
「うーん、でも君たちの魔力は見えるのですが蟲のように微弱な魔力は見えませんね。私もまだまだですね。」
そこからお昼を挟んでナナバの群生地を探し回って見つけたナナバモドキは5匹だった。
自分の考えた方法が結果となって出たので俺は大満足だった。
暗くなる前に下山し、昨日と同じところで野営をした。今回も夜番の見張りはジークと一緒だったが、順番を最後にしてもらった。
夜番交代のロロさんにテントの入口から声をかけられたとき、またジークに抱き込まれていた。
なぜ起きないんだ。俺。
ポツポツと話をしながら火の番をする。ジークの冒険者活動の話はいくら聞いても飽きない。空がうっすらと明るくなったころ、朝食用のスープを作る。俺は現世にいたときに自炊をしたことはないし、こちらに来てからも宿に自炊スペースはない(部屋代が高くなる)ので料理はできない。
ジークに作り方を教えてもらいながら採取用のナイフを使って食材を切っていく。まな板なんてないので難しい。肉はジークが大きなナイフで器用に薄切りしている。調味料を1つずつ教えてもらいながら味付けもさせてもらった。
テントにロロさんとラーフさんを起こしに行く。ロロさんはすぐ起きて、やっぱりラーフさんは目覚めない。ロロさんは昨日のジークと同じようにラーフさんに水をぶっかけ、即テントから逃げ出した。え?これって俺がぶっ飛ばされるんじゃ?と思ったがラーフさんはムクリと体を起こして片手で顔を覆ったままじっとしていた。
「チッ 逃げたか⋯」
「わかるんですか?」
「魔力の残像で誰がやったかは特定できます。おはようございます、イオ。」
それはすごい。俺は魔力の気配はわかるが個人を特定なんて到底できない。魔力が多い人は皆できるものなんだろうか?
濡れたところを一瞬で乾かしたラーフさんとテントから出て朝食の準備をする。
「おや?このスープはイオが作ったのですか?」
「はい、ジークに教えてもらいながらだったので味付けは問題ないと思うんですけど⋯。」
バラバラな大きさの具は見逃して欲しい。初めて作った料理を食べてもらうのでちょっとソワソワする。
「うん、おいしー!」
「美味しくできてますよ。」
「俺が作るより美味いぞ。」
自分で食べても美味しいと思った。褒めてもらえて大満足だ。嬉しくてつい顔が緩んでしまう。
すると3人は無言で立ち上がり俺の頭を撫で回した。え?なに?
「イオは可愛いな。」
ジークだけじゃなくロロさんとラーフさんまで俺のことを弟扱いしている?
***************************
帰りはどこにも寄らなかったのでその日のうちに宿に戻れた。4人1室しか空いていなかったのでその部屋に泊まることになった。
ジークはベッドだと寝相は悪くなかった。
預けていた馬車で帰り道を走る。行きと同じく魔獣や野盗を討伐しながら進む。
落ち着いた頃、馬車の荷台で隣に座ったジークに話しかけられた。
「イオ、俺たちはしばらくこの国にいるつもりなんだが、また一緒に依頼をやらないか?」
俺はちょっと迷った。この依頼を受ける前なら即座に断っていただろうが、また一緒にやりたい気持ちが出てきた。しかしやはり実力が違いすぎるという部分がネックになっている。
うんうん唸っていると
「なぁイオ。楽しかったか?」
と聞いてきた。
すると向かいのラーフさんと御者席のロロさんも
「オレはイオくんと一緒にやって楽しかったー!」
「私もです。いつもとは違った視点ややり方が学べてとても楽しかったですよ。」
俺にとって依頼は毎回命がけで、一瞬の油断も出来ない神経を張り詰めさせる仕事だ。
でも今回、どんな魔獣が現れても絶対に大丈夫だという安心感と自分のやり方を受け入れ、尚且つ一緒に同じやり方をしてくれた3人との依頼は"楽しかった"のだ。
「はい、楽しかったです。すごく楽しかったです。」
依頼に対して達成感はあっても楽しいと感じることは今までなかった。高ランクの3人を利用している気分になるが、この人たちはそんなことを思わないと断言できるくらい人柄は理解できたつもりだ。
あとは俺の心持ち次第。
「また、一緒に依頼をやりたいです。よろしくお願いします。」
「もちろん」と3人は笑って言って、ジークには頭を撫でられた。
*******************************
※帰りの野営テントで寝たとき、イオは魘されていませんでしたが「一度抱き枕にしたから次からもいいだろう」というジークの都合の良い自己解釈により抱き込まれました。
※ジークはイオのパーティ本加入を虎視眈々と狙っています。(ラーフ、ロロは許可済み)
※イオが図書室で読んだ漫画は「◯ンター✕◯ンター」と「◯滅の刃」です。
次回はギルマス視点の閑話です。
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ふと目を覚ますとまだジークに抱き込まれていた。寝ている途中で寝返りをうったようで、目線がジークの逞しい胸元にある。先ほどと同じく抜け出そうと試みるが全く動かない。何だこれ。痛くないのにしっかりと固定されている。しばらくジタバタしていると頭上から堪えるような笑い声が聞こえてきた。
「起きてますね?」
「ああ、すまない。つい可愛くて。おはようイオ。」
寝起きのイケメンが眩しい。
あと昨日から可愛い可愛い言い過ぎではないだろうか。弟妹がいると言っていたからもしかして弟扱いされてる?
「ジークは寝相が悪いですね。」
「そうかもな。」
フッと笑って腕を解いてくれた。
顔に浄化魔法をかけてテントの外に出るとロロさんが鍋をかき回していた。
「2人ともおはよー。イオくんよく眠れた?」
「おはようございます。ぐっすり眠れました。」
「ラーフはまだ寝てるからイオくん起こしてくれる?」
「わかりました。」
テントの中を覗くとラーフさんがうつ伏せで寝ていた。名前を呼んでも起きないので軽く肩を叩いてみたが反応はない。少し強めに体を揺すってみても全く起きない。困っているとジークが様子を見に来た。
「起きないだろ?ラーフは寝起きだけはダメなんだ。」
「え、じゃあ夜番は1番目の方がよかったんじゃないですか?」
そういえば初日は宿で別部屋だったし、昨夜はジークが起こしに行っていたのでラーフさんの寝起きの悪さは知らなかった。
「いや、なぜか夜番の順番になるとすぐ起きる。」
「責任感が強いんでしょうね。」
それにしても起きない。
「どうやって起こすんですか?」
「こうだ。」
と言ってジークは魔法で大量の水をラーフさんの頭からぶっかけた。
あまりにも乱暴なやり方に絶句してしまった。するとラーフさんがむくりと起き上がった。
「ラーフさん。おはようございます?」
長い髪が水で濡れて完全に顔が隠れているので本当に目覚めたのかがわからない。
すると突然ジークの体がテントの外まで吹っ飛んだ。
「おはようございます。良い朝ですね。」
声低ぅ⋯。ラーフさんはさっと風魔法で濡れた髪や服を乾かして一息つき、
「イオ、おはようございます。」
とにっこり笑った。
どうやら完全に目覚めたようだ。
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朝食はロロさんが作ったスープとパンと俺が魔法鞄に保管していたアポルの実をデザートにした。
後片付けをして出発する。目的のナナバは標高が高い山に群生地があるので今日は登山だ。
途中で襲ってくる魔獣を討伐しながらひたすら登る。途中で「人にかけるための身体強化の魔法」をラーフさんに教わった。全身を対象にしたり、かけっぱなしにするとやはり魔力消費が大きいので、足や手など部分的かつ瞬間的にかける練習を戦闘中のジークとロロさんにさせてもらった。
最初はタイミングが上手くいかなかったけれど踏み込みのときに足にかけたり、魔獣を斬るときに腕にかけたりと次第にコントロールができるようになっていった。
山頂近くまで歩いていくと景色が開けた場所に着き、そこには一面ナナバの花が密生していた。ナナバの見た目は完全に菜の花だ。ナナバは茎と根が薬の材料になるので花と葉の部分は切り落としてしまう。
しかし実のところ今回ナナバの採取だけが俺の目的ではなかった。さっそく魔力を薄く目の周りに纏わせる。
「イオ、何をしているのですか?」
魔力の動きに敏感なラーフさんがいち早く反応した。
「ナナバモドキを採取できないか試してみたいことがあるんです。」
ナナバモドキとはナナバの花に見た目がそっくりな蟲で、イメージとしてハナカマキリのようなものだ。ナナバの花に紛れて全く動かず、餌の蟲が近くに来たときだけ動くので採取の難易度が最高レベルに難しい蟲だ。
ナナバモドキは良質な薬の材料になるので高値で買い取りされるが、採取が難しすぎて希少価値が高い。それをいったいどうやって採取するのか。通常ならナナバの採取のときに花をよく見てナナバモドキがいればラッキーという完全に運任せの方法しかない。
少し話はそれて、俺は町中で冒険者から逃げ隠れたとき、様子を見るために壁から顔を出すと居場所がバレるので、壁の向こう側を見ることはできないかと思っていた。
そこで「魔力を見る」という魔法を考えることにした。ヒントは小学生のときに読んだ漫画だ。
俺は漫画をあまり読まないのだが通っていた小学校では2年に一度、生徒から人気のある漫画が1作品選ばれ先生たちの許可が出た物は図書室に置かれていた。
俺が読んだのは何年も前に選ばれた少年漫画で、俺はその中でも主人公たちが特殊な試験を受けるなかで修業をする話が好きだった。その修業の中で、目に力を集中させて見えないものを見る方法があったのでそれを応用した。そういえばあの作品はいつ最終回を迎えるだろうか。もう読めないので関係のない話なのだが。
ちなみに社会現象にもなった鬼を退治する漫画も図書室で読んだ。どんなにピンチなときでも絶対に諦めず思考することをやめない主人公に好感を持ったが、長男というだけでここまで頑張れないなと同じ長男としての共感は持てなかった。
魔力とは既存量は異なるが、ほとんどの人が持っているものだ。
目に魔力を纏わせて集中すると人の輪郭が青く光り、魔力量によって光の強さが異なって見える。イメージとしてはサーモグラフィーだ。これは壁に隔たれていてもちゃんと見える。
冒険者は戦闘に有利なので魔力持ちが多い。町中で煌々と青い光を発していたらそれは大抵冒険者だ。これによって冒険者に見つかることもなく無事に逃げられるようになった。
魔力は核を持っている生き物にも等しく保有されている。植物にはない。なのでこの魔力を見る魔法によってナナバモドキを見つけられるのではと以前から思っていた。今回の合同依頼は懸念はあったものの願ってもないことだった。
目に魔力を纏わせたままナナバを観察しながら歩き回る。探しているのは蟲なので魔力は微弱だ。うーんやっぱり見えないな。そんな簡単にはいかないかと思っていたら右目の端に薄く青い光が動いたような気がした。
更に細かく観察すると黄色い花の中にちらちらと動く薄青い光が見えた。見つけた、ナナバモドキだ。
魔法を解除してそっと蟲を捕らえる。手に持って見てもナナバの花にしか見えない。裏返すと花びらのような足が動いてやっとこれが蟲なのだと確信する。これは確かに難易度最高レベルだ。
「これがナナバモドキか!初めてみたぞ。」
実は後ろからずっと付いてきていたジークが驚きの声を上げた。
「すごーいイオくん。どうやったのー!」
「目の周辺に魔力を留めていましたね?どのような魔法展開にしたのですか?」
3人にも魔法を教えてみたが、ジークとロロさんには「魔力を目の周辺に集める」という魔力コントロールができなかった。ラーフさんもコントロールは苦手と言っていたので苦戦していたが、諦めずにずっと集中していた。
ジークとロロさんが飽きたようなので、ナナバモドキを探しながらナナバの採取を手伝ってもらっていたら
「あ!できました!」
と聞こえたので3人で見に行くとラーフさんの目が車のフロントライトのように光っていた。
「ぎゃはははは!ラーフ目が!目が光ってるー!」
「む?なんですか、ちゃんと魔力は視覚化できていますよ?」
「ぶはははは!こっち見んな!」
ラーフさん視線を向けられると眩しい光が顔を直撃してくる。
「ま⋯纏わせる魔力が⋯ふふ⋯強すぎるからですかね⋯ふはははは。」
俺も我慢できなくて笑ってしまった。
「うーん、でも君たちの魔力は見えるのですが蟲のように微弱な魔力は見えませんね。私もまだまだですね。」
そこからお昼を挟んでナナバの群生地を探し回って見つけたナナバモドキは5匹だった。
自分の考えた方法が結果となって出たので俺は大満足だった。
暗くなる前に下山し、昨日と同じところで野営をした。今回も夜番の見張りはジークと一緒だったが、順番を最後にしてもらった。
夜番交代のロロさんにテントの入口から声をかけられたとき、またジークに抱き込まれていた。
なぜ起きないんだ。俺。
ポツポツと話をしながら火の番をする。ジークの冒険者活動の話はいくら聞いても飽きない。空がうっすらと明るくなったころ、朝食用のスープを作る。俺は現世にいたときに自炊をしたことはないし、こちらに来てからも宿に自炊スペースはない(部屋代が高くなる)ので料理はできない。
ジークに作り方を教えてもらいながら採取用のナイフを使って食材を切っていく。まな板なんてないので難しい。肉はジークが大きなナイフで器用に薄切りしている。調味料を1つずつ教えてもらいながら味付けもさせてもらった。
テントにロロさんとラーフさんを起こしに行く。ロロさんはすぐ起きて、やっぱりラーフさんは目覚めない。ロロさんは昨日のジークと同じようにラーフさんに水をぶっかけ、即テントから逃げ出した。え?これって俺がぶっ飛ばされるんじゃ?と思ったがラーフさんはムクリと体を起こして片手で顔を覆ったままじっとしていた。
「チッ 逃げたか⋯」
「わかるんですか?」
「魔力の残像で誰がやったかは特定できます。おはようございます、イオ。」
それはすごい。俺は魔力の気配はわかるが個人を特定なんて到底できない。魔力が多い人は皆できるものなんだろうか?
濡れたところを一瞬で乾かしたラーフさんとテントから出て朝食の準備をする。
「おや?このスープはイオが作ったのですか?」
「はい、ジークに教えてもらいながらだったので味付けは問題ないと思うんですけど⋯。」
バラバラな大きさの具は見逃して欲しい。初めて作った料理を食べてもらうのでちょっとソワソワする。
「うん、おいしー!」
「美味しくできてますよ。」
「俺が作るより美味いぞ。」
自分で食べても美味しいと思った。褒めてもらえて大満足だ。嬉しくてつい顔が緩んでしまう。
すると3人は無言で立ち上がり俺の頭を撫で回した。え?なに?
「イオは可愛いな。」
ジークだけじゃなくロロさんとラーフさんまで俺のことを弟扱いしている?
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帰りはどこにも寄らなかったのでその日のうちに宿に戻れた。4人1室しか空いていなかったのでその部屋に泊まることになった。
ジークはベッドだと寝相は悪くなかった。
預けていた馬車で帰り道を走る。行きと同じく魔獣や野盗を討伐しながら進む。
落ち着いた頃、馬車の荷台で隣に座ったジークに話しかけられた。
「イオ、俺たちはしばらくこの国にいるつもりなんだが、また一緒に依頼をやらないか?」
俺はちょっと迷った。この依頼を受ける前なら即座に断っていただろうが、また一緒にやりたい気持ちが出てきた。しかしやはり実力が違いすぎるという部分がネックになっている。
うんうん唸っていると
「なぁイオ。楽しかったか?」
と聞いてきた。
すると向かいのラーフさんと御者席のロロさんも
「オレはイオくんと一緒にやって楽しかったー!」
「私もです。いつもとは違った視点ややり方が学べてとても楽しかったですよ。」
俺にとって依頼は毎回命がけで、一瞬の油断も出来ない神経を張り詰めさせる仕事だ。
でも今回、どんな魔獣が現れても絶対に大丈夫だという安心感と自分のやり方を受け入れ、尚且つ一緒に同じやり方をしてくれた3人との依頼は"楽しかった"のだ。
「はい、楽しかったです。すごく楽しかったです。」
依頼に対して達成感はあっても楽しいと感じることは今までなかった。高ランクの3人を利用している気分になるが、この人たちはそんなことを思わないと断言できるくらい人柄は理解できたつもりだ。
あとは俺の心持ち次第。
「また、一緒に依頼をやりたいです。よろしくお願いします。」
「もちろん」と3人は笑って言って、ジークには頭を撫でられた。
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※帰りの野営テントで寝たとき、イオは魘されていませんでしたが「一度抱き枕にしたから次からもいいだろう」というジークの都合の良い自己解釈により抱き込まれました。
※ジークはイオのパーティ本加入を虎視眈々と狙っています。(ラーフ、ロロは許可済み)
※イオが図書室で読んだ漫画は「◯ンター✕◯ンター」と「◯滅の刃」です。
次回はギルマス視点の閑話です。
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