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しおりを挟むそれから、悠人は、なんとなく変わった。
会えば普通に話してくれるし、笑ってくれる。
でも、ほんの少し、距離が遠い。
前なら、自然に肩が触れそうな距離で歩いていたのに、今は、手を伸ばしても届かない。
話しかけたらちゃんと返事はくれるけど、微妙な間ができて、前みたいな軽さがない。
きっと、他の誰かが見たら気づかないくらい、ほんの小さな違い。
でも、俺にはすぐにわかった。
悠人の“いつも”を知っているから。
だから、すぐに思った。
――ああ、避けられてるんだな、って。
たぶん、あの日の、あの一言のせいだ。
(……俺の彼氏は、真面目だから)
自分の言葉を思い出した瞬間、頭がぐらりと揺れた。
心臓が変な音を立てて、手のひらが一気に熱くなる。
(なに言ってんだ、俺……)
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
思い出しただけで、全身がカーッと熱くなる。
彼氏って、なに。
ラブラブ休日デート♡とか浮かれて、ひとりで勘違いして、勝手に盛り上がって。
悠人は、きっと友達だと思ってくれてたのに。
気持ち悪がられても仕方ない。そうだ、当然だ。
(バカだ、俺……)
その場にうずくまって消えてしまいたい気持ちを必死で押さえ込む。
あの日から、悠人は変わった。
少しだけ、けれど確実に、俺を遠ざけるようになった。
俺が何か話しかけると、悠人は少しだけ微笑んで、それから目をそらす。
歩くときも、無意識みたいに半歩だけ遠ざかる。
たぶん、悠人も意識してない。
それでも、俺にはわかる。
だって、俺はずっと、悠人だけを見てきたから。
(……もう、だめなんだろうな)
本当は、もっと一緒にいたいのに。
バカみたいな話をして、くだらないことで笑い合って、前みたいに肩を並べて歩きたいのに。
でも、悠人のあの笑顔を見るたびに、胸が締めつけられる。
優しいくせに、ちゃんと距離は取って、俺に触れないようにしてる。
(あーもう、無理……)
心の中で何度も何度も叫んだ。
でも、声にならない。
何気ない会話をしながら、ふとした拍子に自分の「彼氏」発言がよみがえる。
そのたびに顔が熱くなって、ひとりで勝手に沈んでいく。
悠人は、俺なんかにそんなこと言われて、気持ち悪かったに違いない。
それでも、はっきり拒絶しないで、優しく笑ってくれるから、余計に痛い。
(もう、どうすればいいのかわかんない)
距離を詰める勇気なんてない。
かといって、離れるなんて、できるわけない。
こんなに、好きなのに。
ひとりになった帰り道、冷たい風が頬を撫でた。
秋の終わりの空は、高くて、やけに青かった。
だけど、俺の心の中は、どうしようもなく重たかった。
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