俺の彼氏は真面目だから

西を向いたらね

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2.悠人視点

 この季節の風は少し冷たいけど、湊が隣にいると、それだけで心があったかくなる。

 今日も湊とお出かけ。目的は「なんとなくカフェ行こうぜ」って軽いノリだったけど、俺にとっては、大好きな人と過ごせる特別な時間だった。

 付き合ってるわけじゃない。湊はきっと、俺のことを親友だって思ってる。  高校のときからずっと一緒にいて、休日もふたりで出かけて、夜には「今日たのしかったな~」って通話して。  そんなの、俺にとっては奇跡みたいな関係だ。壊したくないから、ずっと言わないできた。

「なあ湊、見てみ。この店のクレープ、チョコの塔みたいになってんだけど」

 湊に話しかけたくて、メニューを指差す。盛り盛りのチョコとクリームとマシュマロ、見た目はすごいけど、たぶん俺一人じゃ頼めない。

「俺の彼氏は真面目だから、こういうの頼まなさそうだけど~?」

 ――は?

 一瞬、頭が真っ白になった。  彼氏?湊に彼氏が……?

 うまく反応できなくて、固まった顔のまま湊を見る。湊は「ん?」って、呑気に首をかしげていた。

「彼氏って……いるの?」

 やっと絞り出した言葉だった。だけど、湊は肩をすくめて、

「……まぁね」

 そんなふうに、なんでもないみたいに答えた。

 心臓が痛い。
 でも、顔には出したくないから、無理やり笑って、いつも通り振る舞おうとした。

 ……だけど、どうしても、うまくいかなかった。

 カフェを出るころには、陽が傾き始めていた。  晩秋の風がひやりと頬を撫でるけど、それよりも胸が冷たかった。

 湊は隣を歩いている。いつもの距離、いつもの景色。  それなのに、妙にぎこちない。

 スマホを見て、湊をちらっと見て、また前を向く。  何か言いたいけど、言えない。
 言ったら、きっともう今の関係には戻れない気がして。

(やばい、泣きそう)

 声を出したら、絶対にバレる。  だから、必死で耐えた。

 ――今までも、こうやってずっと、耐えてきたじゃないか。

 「俺の彼氏は~」なんて、冗談みたいに言う湊は、やっぱり俺のことなんて、そんなふうには見てなかったんだ。  期待してた自分がバカみたいだ。

 帰り道、俺はいつもより一駅手前で、

「じゃあ、俺こっちだから」

 そう言って別れた。
 たぶん、笑い方が少しぎこちなかったと思う。  でも、バレてないといいな。

 家に帰って、ベッドに倒れ込んだ。  スマホの画面を見つめながら、ため息をひとつ吐く。

(……なに期待してたんだよ、俺)

 自分に吐いた言葉。
 ただの親友だろ。なに、彼氏面して浮かれてたんだよ。

 そう思ったら、情けなくて、悔しくて、布団にもぐり込んだ。
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