俺の彼氏は真面目だから

西を向いたらね

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7 悠人視点

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 “俺の彼氏は真面目だから”――  
 あの一言が、ずっと頭の中でぐるぐるしてる。


 気づいたときには、湊のバイト先まで来ていた。

 昨日の男が誰なのか、せめてバイト先の人間なのか、少しでも何か知りたくて、藁をもすがる気持ちだった。
 何をしてるんだろう、俺は。

 初めて来る場所。裏口の見える角の、自販機の陰に立つ自分が、ひどく惨めに思えた。

(……やめろ、ほんとにストーカーみたいだ)

 でも、今さら帰れなかった。

 

 裏口のドアが開いたのは、日が完全に落ちる少し前。  
 白い息を吐きながら、湊が誰かと並んで出てきた。

 ラフな格好で、俺より背が高くて、余裕のある顔。

(……今日も、一緒か)

 前に見かけたあの男も、やっぱりバイト先の人間だったんだな。

 あいつと並んで歩いてる湊は、笑っていた。

 

 駅前のファミレスに入っていく二人を、俺は距離を取って追いかけた。  
 電柱の影から、ガラス越しに中を覗く。

 並んで座ったまま、会話を交わす湊と、先輩。  
 飲み物を片手に、楽しげな雰囲気。

 ようやく、現実に刺された気がした。

 

 少しの雑談のあと、湊はノートを開いて勉強を始めた。  
 あいつもノートPCを取り出して作業を始める。

 軽薄な態度が目につくこの先輩が、湊の「真面目な彼氏」だなんて――と一瞬は疑った。  
 でも、バイト終わりに、わざわざ一緒に勉強なんてするなんて、真面目以外の何者でもない。

 こいつが、“真面目な彼氏”なんだな……  
 俺がずっと欲していた“答え”は、たぶん、もうここにある。

 

 先輩が、湊の肩に手をかける。  
 湊はちょっと驚いたような顔をして――笑った。

 それだけで、全部終わった気がした。

 

 それでも、体は動かない。  
 ファミレスのガラスに映る、あいつの横顔をただ見てることしかできなかった。

 

 ふと、湊がこっちを見た。

 一瞬だけ。ほんの少しだけ、視線がこっちを向いた気がした。

 でも、何もなかったようにまた先輩のほうへ顔を戻す。

(……気のせいか)

 心臓が跳ねたのに、空振りだった。

 それだけで、情けなくて、悔しくて。  
 足元の地面に爪を立てたくなるくらい、力が入っていた。

 

 寒い風が吹いている。  
 でも、心の中がこんなに冷え切ってるのは、外気温のせいではない。

(俺、なにやってんだろ)

 その答えは、とっくに出ているのに。  
 まだ認められない自分が、いちばんみじめだった。
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