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(……どうすれば、戻れるんだろ。いや、戻ろうだなんて、烏滸がましいか。)
ため息が漏れる。
今日のバイトは、閉店まで。
帰りは、同じシフトだった先輩と一緒になった。
駅までの道を歩きながら、話題はいつの間にか学校のことに変わっていた。
「テスト、近いんだろ? 勉強、大丈夫か?」
先輩は冗談まじりに、俺の肩をぽんと軽く叩いた。
「あー……たぶん、なんとか」
「よかったら、ドリンクバーくらいおごるし」
「じゃあ、ちょっとだけ…」
少し迷ったけど、断る理由もなかった。
ファミレスは静かで、客もまばらだった。
コーラを頼んで、俺はカバンから教科書を出す。
先輩は横で、自分のノートPCを開いている。
「わかんないとこあったら聞けよ」
先輩のことは、結構好きだ。好きって言っても、悠人に対するそれとは全く別だけど。
バイトの中では一番話しやすい。
(……悠人も、こういうふうに自然に接してくれたらいいのに)
ふと、そんなことを思ってしまう。
でも、同時にわかってる。
全部俺が“ふざけた冗談”を言ったせいだ。
そんな俺がいまさら「自然に接してくれ」だなんて、烏滸がましいにもほどがある。
ふと、スマホに目をやる。画面は静かで、悠人からの通知は何もない。
そりゃそうだ。こっちから送ってないのだから。
このまま、何もなかったことにしてしまえば、きっと自然にフェードアウトするのかもしれない。
でも、それだけは絶対に嫌だった。
先輩が何か話してるが、遠くに聞こえる。
上の空だった。
あの日以来、悠人は一度も連絡をくれない。
顔を合わせても、用件以外では話しかけてこない。
目が合えば、ふいと視線をそらされる。
だけど、ほんの一瞬だけ、何かを言いたそうな顔をすることがある。
(もしかして……)
そんな期待がよぎるたび、自分がみじめになる。
そう、自業自得だ。
「湊。……寒くない?」
ハッと顔を上げると、先輩がコートを脱ごうとしていた。
「あ、全然大丈夫です!」
思わず、声が大きくなる。
その瞬間、ふと視線を感じた気がして、思わずファミレスの外を見る。
だけど、そこには誰もいなかった。
夜のガラスに映るのは、自分の顔と、隣に座る先輩の姿だけ。
(……気のせい、か)
先輩と別れて帰る途中、スマホが震えた。
一瞬、心臓が跳ねた。
画面を見る。
──母親からだった。
(……ばか)
ため息をひとつついてスマホをポケットにしまう。
冷やかな風が頬を通り過ぎていった。
ため息が漏れる。
今日のバイトは、閉店まで。
帰りは、同じシフトだった先輩と一緒になった。
駅までの道を歩きながら、話題はいつの間にか学校のことに変わっていた。
「テスト、近いんだろ? 勉強、大丈夫か?」
先輩は冗談まじりに、俺の肩をぽんと軽く叩いた。
「あー……たぶん、なんとか」
「よかったら、ドリンクバーくらいおごるし」
「じゃあ、ちょっとだけ…」
少し迷ったけど、断る理由もなかった。
ファミレスは静かで、客もまばらだった。
コーラを頼んで、俺はカバンから教科書を出す。
先輩は横で、自分のノートPCを開いている。
「わかんないとこあったら聞けよ」
先輩のことは、結構好きだ。好きって言っても、悠人に対するそれとは全く別だけど。
バイトの中では一番話しやすい。
(……悠人も、こういうふうに自然に接してくれたらいいのに)
ふと、そんなことを思ってしまう。
でも、同時にわかってる。
全部俺が“ふざけた冗談”を言ったせいだ。
そんな俺がいまさら「自然に接してくれ」だなんて、烏滸がましいにもほどがある。
ふと、スマホに目をやる。画面は静かで、悠人からの通知は何もない。
そりゃそうだ。こっちから送ってないのだから。
このまま、何もなかったことにしてしまえば、きっと自然にフェードアウトするのかもしれない。
でも、それだけは絶対に嫌だった。
先輩が何か話してるが、遠くに聞こえる。
上の空だった。
あの日以来、悠人は一度も連絡をくれない。
顔を合わせても、用件以外では話しかけてこない。
目が合えば、ふいと視線をそらされる。
だけど、ほんの一瞬だけ、何かを言いたそうな顔をすることがある。
(もしかして……)
そんな期待がよぎるたび、自分がみじめになる。
そう、自業自得だ。
「湊。……寒くない?」
ハッと顔を上げると、先輩がコートを脱ごうとしていた。
「あ、全然大丈夫です!」
思わず、声が大きくなる。
その瞬間、ふと視線を感じた気がして、思わずファミレスの外を見る。
だけど、そこには誰もいなかった。
夜のガラスに映るのは、自分の顔と、隣に座る先輩の姿だけ。
(……気のせい、か)
先輩と別れて帰る途中、スマホが震えた。
一瞬、心臓が跳ねた。
画面を見る。
──母親からだった。
(……ばか)
ため息をひとつついてスマホをポケットにしまう。
冷やかな風が頬を通り過ぎていった。
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