【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ

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「先輩の彼氏になりたい」

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 瀬名はそのまま屋上へと向かう。足取りはどこか切羽詰まっていて、突然のことについていくのでやっとだ。
 どうやら瀬名は、顔がいいだけじゃなく足も速いらしい。

「瀬名~、どうしたんだよ。急に走るから、俺……」

 体力のなさに情けないと思いつつ、少し上がった息を膝に手をついて整える。踊り場へ一歩先に到着した瀬名を見上げると、だが桃輔の言葉は尻すぼみになった。瀬名がどこか苦しそうな、拗ねたような顔をしていたからだ。

「え……なにどした。なんかあった?」
「…………」
「なんだよ、話くらい聞くけど?」
「別に……」

 そんな顔を見せられると、瀬名といて芽生えたばかりの兄心、もしくは先輩心が疼きだす。自身も踊り場へのあと一歩を上がりきり、瀬名の手を引いて座るように促した。

「なに、モテてモテて困るーって話?」
「……どの口が言ってんすか」
「はあ~? どういう意味だよ」
「モテてんの、誰がなのか分かってるのかなって」
「…………? 誰がって、瀬名しかいないじゃん」
「本当にそう思います?」
「どう見たってそうだろ」
「さあ、どうだか」

 いつも涼しげな瞳が、なにか言いたげにジトリと桃輔を映す。なにを考えているのか、さっぱり分からない。
 だがその頬が、薄らと膨らんでいて。大人びているようでいてちゃんと年下で、かわいらしいところがあるんだよな、なんて思わせる。なんだか無性に、頬をツンとつついてみたくなった。

「ちょ、先輩……」
「はは、ごめん、なんか触りたくなって」
「くっそ、人の気も知らないで……」
「まあ応える気はなくてもさ、モテて悪いことはないんじゃね?」
「……今はそういう問題じゃないんすよ」
「そうなん? 俺にはよく分かんねえけど……でも瀬名は偉いよな」
「…………? なにがっすか?」
「さっき女子たちと喋ってるの、遠目に見てたけどさ。昼飯誘われたんだろ?」
「……まあ」
「それ、優しく断ろうとしてるように見えたから。俺だったらはっきり言っちゃうから、偉いなって」
「……全然そんなことないです。断るのに正直必死だったし。できるだけ波風立てないようにしてるだけ」
「それを普通優しいって言うんじゃね?」
「ううん、他人に興味がないってことです。自分をいちばん大事にして逃げてきたんで。……協力なんて誰がするかよ」
「ん? ごめん、最後のとこ聞こえなかった。なに?」
「いや、なんでもないっす」
「そっか? じゃあ、とりあえず飯食うか」
「……ん、そうっすね」

 昼飯を食いっぱぐれてしまうわけにはいかない。自分もだが、ここに毎日やって来る瀬名にはしっかり食べてほしい。桃輔なりに先輩として、そこのところはちゃんと責任をもっていたい、なんて思ったりもするのだ。
 瀬名はまだなにか言いたげな顔をしている気がするが、頷いてくれたことにほっと息をついた。
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