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22 誕生パーティ
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「私も誕生場パーティに行っていいんですか?!」
侍女の姿でついてくるようにと命じると、マリリンは飛び上がって喜んだ。
「これを持ってて。必要になったらすぐに渡して」
マリリンにマントを渡す。それから、盗って来た侍女服に着替えるように命じた。
今日は私もドレスで着飾った。王妃に渡された白いドレスではなく、帝国製の高級ドレスだ。ルリに盗ってきてもらった。
サイズは自分で手直しした。100年の間、精霊界での暇つぶしは読書と手芸だったからプロ級だ。
鏡に映った自分の姿に満足する。王家の色である紫色のドレスが良く似合う。首には大きな紫水晶のペンダントをつけた。これも精霊に盗ってきてもらった物だけど、もともとは王家の品だ。売ったのか盗られたのか知らないけど、返してもらおう。まあ、一応、代金として治癒石を置いてきたけどね。
「すっごくかわいいです! 紫色がよく似合いますね。どこで買ったんです? めちゃくちゃ大きい宝石! 首は痛くないです? ねえねえ、私はどうですか? 侍女服は似合ってます?」
「……」
大声ではしゃぐマリリンは無視して、会場に向かう。王宮の大広間で開催される私の誕生パーティは、すでに始まっている。主役は遅れて到着するものだ。
「やっと来たか。遅いぞ、何をしてたんだ!」
迎えにも来なかったくせに、アーサーは大声で私を詰った。
「今日はいつもと違うな。そのネックレスはなんだ?」
「王家の宝です。陛下に挨拶に参りましょう」
広間には、国中の貴族たちが集まっていた。
「ブルーデン公爵家のアーサー様、そしてその婚約者、フェリシティ様」
入場を告げる声に、招待客がざわつく。私の名をアーサーよりも後に呼んだ。それに、王女ではなく、ただのフェリシティと。
いったい何が起きているのか。
貴族たちは、私と王妃を交互に見る。王妃はレドリオン公爵と一緒にいた。隣には豪華なドレスを着た若い女性が立っている。濃い色のベールをかぶっているから、顔は見えない。二人はとても親密そうに手をつないでいた。
それを横目で見ながら、王族席へ進む。
「このように盛大な誕生日パーティを開いてくださり、ありがとうございます」
王族席でだらしなく座っている国王陛下に挨拶する。私の隣でアーサーも一緒に礼をとる。国王は、いつものように濁った青紫の瞳を私に向けた。手にはワインの瓶を持っている。今日もたくさんお酒を飲んだみたいね。
「ふん、王妃がパーティを開くと言うから、来てやっただけだ。愚かな娘などに用はない。早く出て行け」
出て行けって言われても、私の誕生パーティだよね? 違った?
国王の暴言から、アーサーはもちろん私をかばったりなんてしない。私のエスコートの手を振り払って、一人でさっさと舞台から降りた。
仕方ないから、その後ろについていく。
一人で歩く私を嘲笑する声が聞こえてきた。
本当にもう。私の誕生日パーティを祝いに来てるんじゃないの?
「みなさま、今日はわたくしの娘の誕生日を祝いに来てくれてありがとう」
王妃がスピーチを始めた。
隣にはヴェールをかぶった女性が立っている。
「あのお嬢さんは誰かしら?」
「赤茶色の髪が見えるわ。レドリオン公爵の親族の令嬢?」
夫人方が注目するのは王妃の隣に立っている赤いドレスの少女だ。本当なら、王女である私の立ち位置。そこに知らない女の子がいる。
「紹介しますわ。わたくしの本当の娘、カレンです!」
王妃がそう言うと同時に、少女はヴェールを脱いだ。
現れたのは、赤茶色の瞳のものすごい美少女。
あでやかな美貌の微笑みを浮かべて、優雅にカーテシーを披露した。
「え? どういうこと?」
「本当の娘? じゃあ人形姫は?」
「まあ、なんてきれいなお嬢様なの。似ているわ」
「聖女フェリシティにそっくりじゃないか。髪と目の色は違うが……」
会場のあちこちで声が上がる。そして、貴族たちは、広間に飾られた聖女の肖像画と美少女を見比べた。
「聖女フェリシティ様だ! この方が本当の王女だ!」
「なんと美しい! 聖女フェリシティ様の生まれ変わりだ!」
レドリオン公爵の近くにいる貴族から、大歓声が上がった。
カレンは彼らに笑顔を振りまく。貴族達は彼女の美貌にうっとりと見とれた。
そして、王妃は、私をにらみつけながら近寄って来た。
「いままで、よくもわたくしを騙してくれたわね」
「……」
私は、黙って王妃を見つめ返した。
「薄汚い偽物!」
甲高い叫び声に、騒いでいた人々が何事かと口を閉ざす。
「そこの衛兵! この汚らわしい下民をとらえなさい! これは王女を騙る偽物よ!」
私を憎々し気に睨み付けた王妃は、手に持った扇を振り上げた。
侍女の姿でついてくるようにと命じると、マリリンは飛び上がって喜んだ。
「これを持ってて。必要になったらすぐに渡して」
マリリンにマントを渡す。それから、盗って来た侍女服に着替えるように命じた。
今日は私もドレスで着飾った。王妃に渡された白いドレスではなく、帝国製の高級ドレスだ。ルリに盗ってきてもらった。
サイズは自分で手直しした。100年の間、精霊界での暇つぶしは読書と手芸だったからプロ級だ。
鏡に映った自分の姿に満足する。王家の色である紫色のドレスが良く似合う。首には大きな紫水晶のペンダントをつけた。これも精霊に盗ってきてもらった物だけど、もともとは王家の品だ。売ったのか盗られたのか知らないけど、返してもらおう。まあ、一応、代金として治癒石を置いてきたけどね。
「すっごくかわいいです! 紫色がよく似合いますね。どこで買ったんです? めちゃくちゃ大きい宝石! 首は痛くないです? ねえねえ、私はどうですか? 侍女服は似合ってます?」
「……」
大声ではしゃぐマリリンは無視して、会場に向かう。王宮の大広間で開催される私の誕生パーティは、すでに始まっている。主役は遅れて到着するものだ。
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迎えにも来なかったくせに、アーサーは大声で私を詰った。
「今日はいつもと違うな。そのネックレスはなんだ?」
「王家の宝です。陛下に挨拶に参りましょう」
広間には、国中の貴族たちが集まっていた。
「ブルーデン公爵家のアーサー様、そしてその婚約者、フェリシティ様」
入場を告げる声に、招待客がざわつく。私の名をアーサーよりも後に呼んだ。それに、王女ではなく、ただのフェリシティと。
いったい何が起きているのか。
貴族たちは、私と王妃を交互に見る。王妃はレドリオン公爵と一緒にいた。隣には豪華なドレスを着た若い女性が立っている。濃い色のベールをかぶっているから、顔は見えない。二人はとても親密そうに手をつないでいた。
それを横目で見ながら、王族席へ進む。
「このように盛大な誕生日パーティを開いてくださり、ありがとうございます」
王族席でだらしなく座っている国王陛下に挨拶する。私の隣でアーサーも一緒に礼をとる。国王は、いつものように濁った青紫の瞳を私に向けた。手にはワインの瓶を持っている。今日もたくさんお酒を飲んだみたいね。
「ふん、王妃がパーティを開くと言うから、来てやっただけだ。愚かな娘などに用はない。早く出て行け」
出て行けって言われても、私の誕生パーティだよね? 違った?
国王の暴言から、アーサーはもちろん私をかばったりなんてしない。私のエスコートの手を振り払って、一人でさっさと舞台から降りた。
仕方ないから、その後ろについていく。
一人で歩く私を嘲笑する声が聞こえてきた。
本当にもう。私の誕生日パーティを祝いに来てるんじゃないの?
「みなさま、今日はわたくしの娘の誕生日を祝いに来てくれてありがとう」
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隣にはヴェールをかぶった女性が立っている。
「あのお嬢さんは誰かしら?」
「赤茶色の髪が見えるわ。レドリオン公爵の親族の令嬢?」
夫人方が注目するのは王妃の隣に立っている赤いドレスの少女だ。本当なら、王女である私の立ち位置。そこに知らない女の子がいる。
「紹介しますわ。わたくしの本当の娘、カレンです!」
王妃がそう言うと同時に、少女はヴェールを脱いだ。
現れたのは、赤茶色の瞳のものすごい美少女。
あでやかな美貌の微笑みを浮かべて、優雅にカーテシーを披露した。
「え? どういうこと?」
「本当の娘? じゃあ人形姫は?」
「まあ、なんてきれいなお嬢様なの。似ているわ」
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会場のあちこちで声が上がる。そして、貴族たちは、広間に飾られた聖女の肖像画と美少女を見比べた。
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カレンは彼らに笑顔を振りまく。貴族達は彼女の美貌にうっとりと見とれた。
そして、王妃は、私をにらみつけながら近寄って来た。
「いままで、よくもわたくしを騙してくれたわね」
「……」
私は、黙って王妃を見つめ返した。
「薄汚い偽物!」
甲高い叫び声に、騒いでいた人々が何事かと口を閉ざす。
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