N -Revolution

フロイライン

文字の大きさ
30 / 190

明朗快活

しおりを挟む
「えっ、なんでわかるんですか?」


佳紀は、自分の内面部分を見抜いた久美子に対し、驚きの声を上げた。


「ワタシもニューハーフ歴四十年以上だから、少し見たら大体はわかるの。」


「えっ、ニューハーフなんですか?」


「そうよ。」


「スゴイ。
フツーの女性の方だと思ってました。

声も高いし」


「そういうあなただって声が高いじゃないの。

声って一番難しくてね。
手術したって、何か裏返ったような声になったりするしね。

一番いいのは、発声練習を重ねる事。

でも、あなたは既に高い声をしている。
これはスゴイ事よ。」


「それは、どーも」


「もしよかったら、話を聞いていただけないかしら?」


「別にいいんですけど、ヒマですから。

でも、プロレスなんて…とてもじゃないですけど…」


「あなた、体躯がしっかりしてるから、少し練習をしたらすぐに上達すると思うわ。

それと、何よりも顔が可愛いから。

プロレスって純粋なスポーツでも格闘技でもなくて、謂わば魅せる事に重点を置いてるの。

ボクシングみたいに避けたりしないで、敢えて相手の技を受けてって感じで。」


「へえ、奥が深いんですね。

いいですよ。

お話くらいはお聞きしても。マジでヒマしてるので。」

偶然会ったばかりの久美子を見て、佳紀は悪い印象を持たなかった。

それ故に、二つ返事で話を聞きに行く事を決めたのだった。


久美子自体が聞き上手で、佳紀は、通りを歩きながら、ついつい自分の身の上話をしてしまった。


「そうなの。

わかるわ。坊主頭にしたくないっていうあなたの気持ち。」



「わかっていただけます?

ワタシ、それだけは勘弁してって感じで、坊主になるくらいなら野球なんて辞めてやるって、公立に進んだんですけど…

そこは坊主にはしなくてよかったんですけど、野球が弱すぎて、部員も集まらずで、結局は野球を辞めたのと同じ形になっちゃいました。」


「それは残念だったわね。」


「もう、過去の話です。

踏ん切りもついたし、東京に出てきてニューハーフにでもなろうかって思ってて…
そしたら、友谷さんに声をかけられた次第です。」


「だったら、ワタシはスゴイ幸運の持ち主だね。

偶然とはいえ、あなたに出会えたんだもの。」


「あの、こんな事言うの…大変失礼なんですが…

ニューハーフのプロレスなんて需要があるんですか。」


「あるわよ。
実はね、既にニューハーフのプロレス団体があってね。単独で興行を打つのは難しそうなんだけど、それなりに人気があるのよ。

でも、ワタシたちがやろうとしているのは、もっと美しさに重点を置いたプロレスなの。

だから、あなたのような美貌の持ち主には絶対に来て欲しいの。」


久美子がそう言うと、佳紀は慌てて首を横に振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...