N -Revolution

フロイライン

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針路

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野球を辞めた佳紀は、生き甲斐を無くしてしまったが、これからの人生を楽しもうと心に誓い、高校を卒業すると同時に、東京に出てきた。

この頃の佳紀は女装などしておらず、まだ髪もそれほど長くはなかった。
見た目は綺麗な顔をした若い男子といったところだった。

アパートを借り、アルバイトでもしながら、この先の生き方を決めようと考えていた佳紀だったが、程なくして転機が訪れる。

街でスカウトされたのだ。

スカウトしてきたのは、NPWの現社長である友谷久美子だった。

久美子は、コーヒーチェーン店で、一人コーヒーを飲む佳紀の隣の席にいたのだが、いきなり話しかけてきたのだった。

「あの、すいません。」


「えっ?」

久美子は、佳紀だけに聞こえるくらいの声で話しかけてきたのだが、佳紀は、最初は自分にだとは気付かず、周りをキョロキョロと見渡したが、久美子が自分の方を見つめていたので、声をかけられているのが自分だと、そこでようやく気付いた。


「突然、話しかけてごめんなさい。」


「あ、いえ。
どうかされましたか?」


「あの、ワタシ
スカウトをやっていまして、それで声をかけさせていただいたんです。」


「スカウト?

ですか…」


この時点では、久美子の得体が知れず、本当にスカウトなのか、詐欺師なのか、見分けがつかない佳紀だったが、相手がある程度年齢のいった女性だったので、いざとなれば何とでもなるなと思い、平常心で受け答えをする事が出来た。


「ワタシ、こういう会社を立ち上げまして…」

久美子は、佳紀に名刺を手渡した。


佳紀は、名刺を受け取ると、声を出して読んだ。


「NPW…」


「はい。実は、今度、プロレス団体を立ち上げる事になりまして。

お見かけしたところ、何かスポーツをやられていたんじゃないかと想像し、思い切ってお声がけさせていただいたんです。」


「プロレスですか?

あー、違います。
別にプロレスが嫌いなワケじゃないですけど、やっていたのは、野球なので。」


「ええ。そういう畑違いの方を探していて。

それと、言い忘れておりましたが、今度立ち上げる予定のこのNPWは、ニューハーフによるプロレス団体なんです。」


「えっ、ニューハーフ?」


佳紀はこの時点では、女装も何もしておらず、フツーの男子といった出立ちであった。
久美子に勧誘されるわけがない…

余計に自分に声かけをしてきた理由がさっぱりわからなかった。

しかし、久美子は

「お見受けしたところ、心は女子なのかなって思いまして。」


久美子の目は、この頃から確かであった。
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