泥々の川

フロイライン

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恥部

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「あの、課長

今の話を聞かなかったことにしろって…

どういう事ですか?」


竹之内の言葉の意味がわからず、柳原は驚いて聞き直した。


「被害者は気の毒だが、相手が悪すぎる。」



「相手がって…

新宿龍神会なんて、大した規模の暴力団じゃないですよ。」


「いや、そっちじゃない。

鹿島ってガキの方だよ。

初台建設ってのがマズイんだよ。」


「えっ?」


「柳原、お前はまだ若いからこの社会の仕組みってのがわかってないが、こうやって警察の手が届かない人間てのが、一握りではあるが、確実に存在してるんだよ。」


「自分には課長がおっしゃってる事が理解出来ません」



「日本の高度経済成長期に、急激に力をつけたのが初台建設だ。

奴らは政治家にバンバン賄賂を渡し、ヤクザも金で掌握して大きくなっていった。

今や、誰も手を出せねえ存在になってしまったんだよ。」


「それっておかしくないですか?

賄賂を渡した事がバレたら、いくら初台建設とはいえ、すぐに潰れてしまいますよ。」


「その逆だよ。
賄賂は渡した方より受け取った方がダメージがデカいんだよ。
奴らもバカじゃねえから、人を見てやがってな。
本当に悪いヤツにしか渡してねえんだよ。

清廉潔白そうなヤツに渡そうとすると大変な事になってしまうからな。」


「それじゃあ…」


「結局は清廉潔白な人間など存在しなかったって事だ。
皆、金を目の前にチラつかされると弱いんだよ。

政治家、官僚、警察の上層部、ヤクザ

全部が初台建設の掌中にある。」


「そんなバカな話が罷り通るなんて…」


「日本の警察は優秀だよ。

鹿島のガキが何をしてるかなんて、とっくにわかってたさ。

今、相談に来ていた案件もな。」


「えっ…」


「現場は逮捕をしたがったが、俺達の遥か上の連中が、ストップをかけてきた。

それでも、俺の前の課長は、良心の呵責に耐えかねて、鹿島洸平を逮捕しようとしたが、その直前に、身に覚えのない罪を着せられて、警察を辞めさせられたってわけさ。

柳原、悪いことは言わねえ。
この事件に首を突っ込むな。出世したいなら…いや、冤罪を被せられて抹殺されたくなかったらな。」


竹之内は、柳原の肩をポンと叩き、そのまま部屋を出ていってしまった。


柳原は、呆然とするしかなく

ただ、その場に立ち尽くした。
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