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ラウル魔導士 【領主視点】
しおりを挟む「私は、この時を待っていました。漸くです」
「ラ、ラウル魔導士、これは一体‥‥」
「ひぃ、た、助けてぇ」
「奥様!」
「アデレード様!」
私の目の前でアデレードがラウル魔導士に捉えられ短剣を突き付けられている。どうして彼が彼女に刃を向けているのか理解出来ず狼狽えてしまう。
「ラウル魔導士! 君は何をしているのかわかっているのか?! 彼女を放しなさい」
出来るだけ刺激させずに凶行を思い止めたいのだが彼の要求がわからない。
今しがた彼は待っていたと言っていた。それならば機会を伺っていたというのか?
「の、望みは何だ? 君がこんなことをするとは‥‥よっぽどの理由があるのだろう?」
「領主様、貴方に恨みはありません。私はこの女が許せないだけなのです。この女はあろうことか横恋慕をして‥…ジョアンナ様を‥‥旦那様を、ご家族を殺したのですから」
「な、何を言っているの! う、嘘よ嘘! 出鱈目なこと言わないで! だ、旦那様、助けて、早く助けて!」
「騒ぐな! 口煩いと、つい手元が狂うぞ」
「ヒィ!」
「ま、待て! 何の話だ、君は何を言っている? ジョアンナや家族は魔物に襲われて亡くなったのだぞ」
「確かに直接的な死因は魔物の襲撃ですが、原因はこの女です。こいつが結界に細工させたから! あれは、あれは‥‥災厄なんかじゃない、こいつが引き起こしたんだ!」
「な、なんだと?! あの魔物は‥‥あれが‥‥それは誠か‥‥」
「だ、旦那様! 嘘よ、騙されないで! 違うわ、わたくし知らない!」
「黙れ!」
首に刃を突き付けられたアデレードはガクガク震え怯えている。
私も彼の話に驚かされ余りの事に理解できないでいた。
私の最愛の妻であったジョアンナと息子、ご両親は魔物の襲撃で命を落したのだ。領民を守る為、騎士達と戦い、逃げ遅れた民を庇って命を落した。
あれは自然発生した魔素だまりが魔物を刺激し異常行動を起こさせたと調査隊の者に教えられた。不運なことに結界に生じた綻び、自然劣化したと言われ疑うことなく信じたのだ。
私は妻とご両親は領主一族として立派に領地を領民を守ったのだと、悲しくも誇りに思っていたのだ。
それが‥…本当なのか。
アデレードが引き起こした? そんなことが人の手で出来るものなのか?
「領主様、私の話を信じて下さい。この女は権力にモノを言わせて魔導士くずれに結界に細工するよう依頼したんです。金の為なら手を汚すことも厭わない破落戸魔導士なんぞ、探せば直ぐに見つかりますから。この地を襲った災厄はこの女の仕業です‥…私はこの3年、ずっとこの女を調べていたんですよ」
何を言っているのだ。アデレードが? 領地の結界に手を出すなど、連座で一族皆処分されるほどの大罪だ。彼女が幾ら愚かだと言えど、それほどの犯罪を行うとは俄に信じられない。私は、疑惑の目を彼に向けた。
「証拠があります。ですが証拠などこの女の実家の権力があれば握り潰されるのがオチだ。私は‥‥こいつに罪を命で償わせたい! 法の裁きではなく、私の手で!」
「ま、待て! それが事実なら君が手を汚す必要はない。私が責任を持って彼女に罪を償わせる。だから、止めるんだ! 私刑は駄目だ、法の裁きを受けさすのだラウル魔導士!」
「もう‥‥遅いんですよ領主様」
「な、何を‥…」
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