目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

文字の大きさ
70 / 71

異界ー1

しおりを挟む
間が空いてしまいましたが、ようやく投稿出来ました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(あれ、ここどこだろ? )

フッと意識が浮上し目を開けると知らない場所だった。
ああまたこのシチュと、既視感に慣れたきって声も出ない。
ヤレヤレと身体を起こそうとして、違和感に気付いた。何やら随分と硬い上で寝ているなあと手で探れば、驚くことにそこは床。御影石のようで、おまけに何か細かい模様が描かれている。が、床に間違いない。

(へ? うそ、床の上で直に寝てたの? え、なんで?)

自分の置かれた状況に思い巡らせても理解できず戸惑う。確かに王都に向うと言われ連れ立ったはず。それが、こうして床の上に転がされて放置である。

(え‥‥と、信じられないけど、もしかして私、捨てられた?)

どっかの男に捨てられたっぽいセリフを呟いて、やだなと苦い顔をした。

「うそよね…‥」
「…‥やっと起きたか」
「はぅ!」

突然、背後から嫌悪に塗れた低い声を掛けられビクッ!と身体が跳ねる。驚かさないで欲しい。

(うそ、誰かいた!)

人気のない場所に捨てられ、一人きりだと誤解していたアイナは、飛び上がりそうなほど驚いた。まさか人がいたなんてと内心ドキドキである。それでもと、恐る恐る振り返るとそこには見慣れたおじさん二人。物凄く不機嫌な顔の髭オジでも、何故かホッとした。どうやら一瞬でも庇護を失った恐怖を味わい息を詰めていたらしい。良かった、口に出せない安堵を、うん、と飲み込み、ああそうだと現実を思い出す。

(この大人達、子供を直に床に転がしていたよね)

「どこか痛いとか具合が悪いとか、身体は大丈夫か?」

視線を合わすようにしゃがみこんだクルクカーンに気遣かわれ、扱いの酷さを詰る気持ちが霧消した。

(わっ! 領主様ってこんなにかっこよかったんだ)

至近距離で顔を見たのは始めて。翡翠色の瞳が心配の色を帯び、不敬にもキレイだなと見入った。

「…‥どうかしたか?」

心配そうな美形って、憂いを帯びて色気あるよねーと幼児が決して口にしてはいけない感想を慌てて振り払う。恥ずかしすぎて慌てて誤魔化した。

「大丈夫です。ご心配をおかけしました。えぇと、あの、もう王都に着いちゃたんですか? 本当に近いんですね。あっと言う間で驚きです」

床の上に転がされていた事実が、どこかに飛んで行った。
イケメン最強。


「あ″?」

ニマニマと悦に入ったアイナを見たラグザスはこの非常時に何を呑気にと、不機嫌な声色と共に頭頂部を鷲掴みする。大人気ない八つ当たりだ。


(イタイ! ここに幼児を虐めるオジサンがいます!)








頭を擦るアイナを余所に、二人は頭を悩ましていた。

「それにしても、この場所は一体どこであろうな。ラグザスは知っているのか?」
「さあ、俺も初めてだ。だが、どうやら俺達は招かれたみたいだな」

ラグザスの雰囲気から、この場がどこか見当をつけていそうだとクルクカーンは目を細める。憶測でモノを言うつもりがないのだろうと思うも彼の苛立った態度に、良からぬ現象かと不安が募るクルクカーン。
明かに宜しくない表情の二人を見てハッと何かに気づいたアイナ。もしや、まさか、と恐る恐る尋ねる。

「あの、所在地がわからないって、もしかして、迷子ですか? だったら来た道を引き返せば」

大の大人が―――。
言葉を言い終わる前に、グーでグリグリと頭頂部を弄られた。


(イタタタ! 酷くない?!)






暴力に訴える髭オジは碌でもない奴と内心でブチブチ呟くアイナも、不機嫌なラグザスに、

「‥‥道がないんだよ」
「…‥‥なんだか人生に行き詰った人のセリフ‥‥あ、なんでもないです」

どうやら違ったみたい。睨まれた。何でよ。

「我等は転移門を使うために、確かに転移陣の上に立っていた。だが私は発動させておらぬ。誤作動を起こすとしても魔力を供給していなければ発動などしない。…‥何故発動した」

クルクカーンも状況が掴めず困惑したのか、自分に言い聞かすように話し出した。その様を見れば、充分困惑しているのが伝わってきた。

(なんてこと! 常識人と思っていた領主様もファンタジー界の住人だったとは!)

戦慄とはこの事か。アイナは思わぬ体験に感慨深く、そして緊張の場面に趣味全開のクルクカーンは残念なイケメンだったと評価をこっそり下げた。個人の趣味をどうこう言う気はないがせめて時と場所を選んで欲しかった。溜息でそう。

「クソガキ、また下らんことを考えてやがるな」

髭オジは、ガキは呑気でいいよなと呆れていた。






道がない=後がない。そう受け取ったのだが違ったみたいと、へらっと笑うと呆れた顔の髭オジはいいから表を見ろと手招ねく。言われるがまま建物を出るとそこは…‥。

「ふぇ?! な、なんですかここ?!」

目に入ったのは水平線。
どう見たって、どこを見たって、黒い水面しかない。しかも曇り空。
黒と灰色の世界だった。

(何だか如何にもって感じだよねー)

「見えるのはこの建物だけだ。この建物をグルっと回っても同じ景色しか見えぬ。小島に建つ廃屋しかないのだ。‥‥小島から陸地に続く道はない。やはり、転移門でしか移動できぬか」

二人はアイナより先にこの景色を見ていたのだろう。クルクカーンはアイナに現状を教えつつ、転移門でしか移動できない場所が国内にどれだけあったかと思索する。

アイナはこの光景を世界の絶境スポットみたいだなーと、前世の記憶が刺激されていた。
自分達のいた建物の外観は、廃教会っぽい。よくこんな如何にも的な場所があったものだとワクワクした。
これ、夜なら心霊スポットもってこいの場所だわと、うきうきしちゃう。パワースポット大好きアイナは意外と心霊スポットもいける口だ。


景観全てがアイナの琴線に触れた。




そのアイナと対照的なのがラグザス。
食い入るように見入ったかと思えば顔を顰めた。その有様は、見たくないと拒絶するかのよう。
クルクカーンは彼の異変に気付き、黙って様子を伺う。その顔には怒りと悲しみが満ちていた。この場所は彼に忘れていた遠い過去を思い出させたのだ。

クルクカーンはやはりラグザスはこの場所を知っていたかと勘付いた。だが、強い拒否感に苛まれた友を想うと追及できないでいた。いつもの彼なら軽口叩いて打ち明けそうなものを、どこかもどかしく感じた。



そしてクルクカーンは、もう一人、異変を感じた幼子に意識を向けた。
泣き喚かず冷静に周囲を見分する幼児を奇異だと警戒した。
この国では、行商人や旅人でもない限り普通は生まれた街から外に出ることはない。外の世界を知らないまま生を終わらせる。このように突如見知らぬ場所に連れて来られれば不安で泣いたり、もしくは、物珍しさで燥ぐもの。例え、貴族の子であってもこの幼さであれば泣き騒ぐ。

「この場所って、水没した街っぽく見えますね。それと、陸地に繋がる道が見えないのは、満ち潮だからじゃないですか? そのうち海水が引けて道が出てくると思いますよ?」

アイナは潮汐現象だろうと、至って冷静。
だが、今のアイナは幼女である。幼女が大人に対する物言いではない。

はたして‥‥。このように状況を分析する幼女がいるかと、クルクカーンはアイナの異常性に気がついて、身震いした。得体のしれないモノを見る目を向けてしまったが、努めて明るく振る舞う姿に、現状が理解できていない?とも思う。どちらにしろ変な子だと結論付けた。




アイナは前世、写真で見た廃墟の中にダム建設で沈んだ街があったなーと記憶を探っただけだったが、それを知る者はいない。領主のクルクカーンにまで変な子認定されたとは知らないアイナはへらへらしてる。







「この場所は…‥俺の生まれ故郷に似ている」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...