【完結】政略結婚はお断り致します!

かまり

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28話 企みの失敗

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「マクロス様…今日カイル殿下をお捕らえになったというのは本当ですか?」

 マクロスの執務室に来ていたマリーサがそう聞いた。

「ああ…本当だよ。マリーサ、もう心配ない。兄上はじきに死罪が言い渡され、処刑されることになるだろう…」

 マクロスは俯き、悲痛な顔をして静かに言った。

「そんな…マクロス様…私のためにそこまで…大事に思っていたお兄様なのに、本当に宜しいんですか?」

 マリーサはマクロスの答えがわかった上で、心配する演技をした。

「…もちろんだ。大事に思っていた兄上だからこそ、許せないということもある。
仕方ないんだ。……こうするしか…なかった」

「マクロス様…」

 マリーサは執務机に近づき、マクロスに抱きついた。

「ごめんなさい!私のために!私がこんなことになってしまったせいね…本当にごめんなさい!」

 マクロスは立ち上がってマリーサを抱きしめ返した。

「…マリーサ。君は何ひとつ悪くない。
そんな風に謝るなんて…
酷い目に合ったのは君の方なのに…
こんな純真無垢なマリーサに兄上はなんてことを…」

 マクロスは兄との今まで過ごした日々を思うとやるせ無い気持ちになっていたが、また沸々と強い怒りの感情が込み上げてきた。

「……でもカイル殿下…きっと私を恨んでいるでしょうね…
お腹に子どもさえできなければ隠し通せたんですもの。

…マクロス様…私…恐い…」

「大丈夫、心配ないよ、今は地下牢に繋がれているんだから、もう君の前に現れることはない」

 マクロスは抱きつくマリーサの背中を優しく撫でながら言った。

「…でも、カイル殿下はとてもお強いお方だと聞いております…」

 マリーサはマクロスの腕の中で震えてみせた。

「…いくら強くても人間だ。あの鉄の牢を抜け出すことは出来ない。マリーサ、僕がそばにいるよ。
だから恐がらないで?大丈夫だから」

 マクロスは強く抱きしめたが、マリーサはそれでも震えるのをやめなかった。

(処刑なんていつになるかわからないじゃない。
あなたがさっさと殺せばいいのよ。
ほんとに私のことが好きならそれくらいできるでしょ?ほら、早く自分がやるって言いなさい!)

 マリーサはそう思いながら、マクロスの胸に顔を埋めた。

「…マリーサ。僕が毎日兄上の様子を見に行くよ。君の警備も厳重にしよう。だから安心して欲しい」

「…はい。ありがとうございます、マクロス様…」

(そうじゃないのよ!全然わかってないわね、この王子!しかも警備なんて厳重にされたら遊びに行けないじゃない!とんだ藪蛇だわ…)

「じゃあ、そろそろ部屋に送ろう。もう遅い。僕ももう一度兄上の様子を見てくるよ」

 マクロスはそう言って、震えの止まったマリーサを部屋に送ると、また地下牢へと重い足取りを進めた。



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