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27話 アクアの記憶10 敵の中に味方あり

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(まずいな…マクロスは完全にマリーサを信じきってる。マクロスのあの剣幕では、マリーサが身籠っているのは本当なんだろう。

しかしマクロスに身に覚えがないというなら、相手は一体誰なんだ…?

…仕組んだマリーサが自供することはないだろうが、相手の男なら或いは…

マリーサの身辺を調査する必要があるが、この状態では動けないしな…)

「はぁ……」

 カイルは一人牢の中で深い溜め息を吐いた。この状況ではいくら考えてもどうにもならず、時間ばかりが過ぎていった。



——カチリ

「?」

 見張りの兵士が静かに鍵を開ける音がしてカイルは扉の方を見る。

「…殿下、お逃げ下さい!」

 兵士は扉のところで周りを警戒しながら小声でそう言った。

「……君は?」

 嵌められてここに閉じ込められたカイルは誰も信用できず警戒していた。

「私はあの戦争で殿下に命を助けられた者です。あの混乱の最中、殿下は憶えておいでではないかもしれませんが、斬られそうになる私の前に立ちはだかり、庇ってくださいました。あなた様に救われた命はあなた様のために使いたいと思います」

「……つまり君は、僕を逃した罪に問われて死罪になる覚悟ができていると?」

「その通りです」

「…はぁ…まったく…
確かに憶えてはいないが…どうして僕がせっかく救った命を、また僕のために投げ出させるようなことができるんだい?気持ちは嬉しいんだけど、そんなことできるはずないよ。

…君、名前は?」

「はっ!アルバート=コルニクスです!」

 尊敬するカイル王子に名前を聞かれたことがすこぶる嬉しかったアルバートは表情を輝かせて答えた。

 アルバートは戦争で見たカイルの優しさ、勇気、強さ、カイルの持つオーラのようなもの、その全てに憧れを抱いていた。そのカイルが捕らえられた理由にどうしても合点がいかず、その上戦争功労者をこんなところに閉じ込めるなどアルバートは許せなかった。

 実際カイルがあの戦争で先頭に立っていなければ、あとどのくらいの犠牲者が必要だったろうと思うと、アルバートはカイルに感謝せずにはいられなかった。

「そうか、アルバート…
…僕は君を罪人にするつもりはない。
でも、ありがとう…気持ちだけ受け取っておくよ

さぁ、そこを閉めて?見つかったら君まで危ない」

 カイルは他の見張りに気付かれないうちにと、アルバートを急かした。

「殿下……せめて私で何かお役に立てることはございませんか?」

 アルバートは縋るように言った。恩人のカイルをこのまま置いて行くなど、到底できなかった。

「気にするな。今の僕に関わるのは良くない。……いや、待てよ…

アルバート…すまないが君に一つ頼みたいことがある」

 カイルは顎に手をやって少し考えながらそう言った。

「はっ!何でしょうか?何なりとお申し付け下さい!」

 アルバートは喜んだ顔をして、胸に手を当て礼の姿勢をとった。

「しっ!静かにして!」

 そう言って、カイルは入り口に居るアルバートの側へ行き、誰にも聞こえないよう耳元で小さな声で依頼した。

マリーサの調査を。

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