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28 オヴァール家の特性です
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「姫!僕の姫がここにいるなんて!」
そう言っている長身の男性に私は捕獲されてしまった。ちっ。髪と目の色を変えただけでは流石にわかってしまうのか。
抱きつかれ、私の頭に頬をスリスリさせている。
周りの人から受ける視線が痛すぎる。取り敢えず、解放してもらおうと話しかける前に体が引っ張られふわりと浮いた。
「貴様は誰だ?」
直ぐ横から低い声が響いてきた。どうやら私は彼の左腕に収まっているようだ。いや、だから何故子供扱いなんだ?
なんだか空気がピリピリしてきて、受付けの女性なんて青い顔を通り越して白くなっている。
「お前こそ誰だ?私の姫を返してもらおうか」
あー。ヒロインならここで私のために争わないで、ってみたいなセリフを言うんだろなと思いながら、私は彼の耳元で囁く。
『あれは血の繋がった愚兄その3だから大丈夫。ちょっと····いや、かなり私に対して過保護?変態的行動を取るだけだから』
「姫。聞こえているから」
目の前の愚兄その3は不服そうな顔をしているが、私の実兄達はおかしいと常々思っている。
オヴァール辺境領独特の考えなのだが、強い人物への憧れ?崇拝?が途轍もなく酷い。どう酷いかといえば、その人物の持ち物を神仏として崇めているのだ。
私は子供の頃から逸脱して強かった。いや、調子に乗っていたと言い換えよう。魔女っ子リーゼの黒歴史だ。
時々私の物が無くなるなとは思ってはいた。しかし、読み終わったからいらないなと思っていた本だったり、折れて使えなくなったペンだけど、可愛かったので引き出しに仕舞っていた物だったり、無くてもいいものだったので気にはしていなかった。きっとカティーが片付けたのだろうと思っていたのだ。
しかし、ある時見てしまったのだ。長兄が私の小さく着れなくなった服に対して拝んでいるところを······。その光景を見た瞬間燃やした。跡形もなく灰にした。長兄は涙目で私が燃やした事への批難の言葉を発したが、その長兄に向かって『気持ち悪い。変態が!』と蔑んだ目で言うとなぜか恍惚とした目を返されてしまった。
カティーに長兄が変だと怯えながら訴えると『オヴァール家の特性です』と簡単な言葉で諭されてしまった。
強者を神の様に崇めてしまう一族の性質だった。それに倣って領民もその性質を受けついでいる者たちもおり、無くなった私の私物は誰かしらの手に渡っていたのだ。怖ろしい。
その後直ぐ様、私物を回収し、全て灰とした。それからはカティーに言って、いらない物は焼却処分をしてもらうことにしたのだった。
崇める物が無くなれば解決すると思っていたけど、甘かった。今度は私に構うようになってしまった。はっきり言ってうざい。王都に行くまで兄弟や周りの者たちに甘やかさ······いや、付き纏われ続けたのだった。
因みに目の前の愚兄その3は私の抜けた髪の毛だった。いらない物だけど、誰かに保管されているのは気持ちが悪い。
私はチラリと横を見る。手続きをしている受付けの女性は愚兄その3を見て頬を赤く染めている。確かに顔は美人なお母様似でイケメンだが、性格は変態だぞと思いながら声を掛ける。
「ねぇ。手が止まってるけど、終わったの?急いでいるから早くしてくれない?」
私がそう言うと女性はビクッと体を震わせ
「は、はいぃぃー!直ぐにいたしますー!」
と悲鳴を上げるような大声で答えた。あれ?もしかして、怯えられているのは私の方?
「下ろしてくれない?」
私を抱えている彼に言ってみるが何も反応がない。彼は未だに愚兄その3の方に視線を向けている。
「下ろせ」
強めの口調でやっと下ろしてもらったが、腰を引き寄せられている状態だ。いや、だから実の兄だと言ったじゃないか。
「姫はどうしてここにいるのかな?」
愚兄その3が笑ってない目を私に向けながら笑顔で聞いてきた。怖いな。
「叔父上に呼び出されたから」
「はぁ?姫は巻き込まないと決めたじゃないか!くそぉ」
悪態を付きながら愚兄その3は明後日の方を睨んでいる。いや、オヴァール領がある方角だ。
「で、愚兄はなぜこっちの辺境にいる?」
そう尋ねると、愚兄その3はため息を吐きながら答える。
「はぁ。聖女という奴らの足跡を辿っている。こちらとしては何が何でも宝珠を返してもらいたいからな。ああ、このリレイシルには冒険者として依頼を受けたから立ち寄った。これでもAランクだからね」
聖女の足跡?うーん。
「愚兄は聖女と直接会ったことある?」
「いや、無い」
ということは、イケメンの部類に入る愚兄その3が聖女と接触するのは危険だと、考えていると遠くの方から太鼓のような低い音がドーンドーンと聞こえてきた。
受付けの女性を見ると手が止まっており愚兄その3をまたしても見つめていた。仕事をしろ!
「受付さん!まだなの?外門が閉まってしまうじゃない!」
そう、太鼓のような低い音はもうすぐ外門が閉まるという合図だった。
「ふぇ?今から外に?無理ではないのでしょうか?」
現実に引き戻されたかのような視線を私に向け、無理だという受付けの女性に私はカウンターに両手をバンッと付いて問いただす。
「ねぇ、登録にいつまで時間がかかるの?さっきからこの愚兄に見惚れているけど、貴女、自分の仕事を放棄しているの?私は先程言ったよね。急いでいると、巫山戯ているの?」
そう言っている長身の男性に私は捕獲されてしまった。ちっ。髪と目の色を変えただけでは流石にわかってしまうのか。
抱きつかれ、私の頭に頬をスリスリさせている。
周りの人から受ける視線が痛すぎる。取り敢えず、解放してもらおうと話しかける前に体が引っ張られふわりと浮いた。
「貴様は誰だ?」
直ぐ横から低い声が響いてきた。どうやら私は彼の左腕に収まっているようだ。いや、だから何故子供扱いなんだ?
なんだか空気がピリピリしてきて、受付けの女性なんて青い顔を通り越して白くなっている。
「お前こそ誰だ?私の姫を返してもらおうか」
あー。ヒロインならここで私のために争わないで、ってみたいなセリフを言うんだろなと思いながら、私は彼の耳元で囁く。
『あれは血の繋がった愚兄その3だから大丈夫。ちょっと····いや、かなり私に対して過保護?変態的行動を取るだけだから』
「姫。聞こえているから」
目の前の愚兄その3は不服そうな顔をしているが、私の実兄達はおかしいと常々思っている。
オヴァール辺境領独特の考えなのだが、強い人物への憧れ?崇拝?が途轍もなく酷い。どう酷いかといえば、その人物の持ち物を神仏として崇めているのだ。
私は子供の頃から逸脱して強かった。いや、調子に乗っていたと言い換えよう。魔女っ子リーゼの黒歴史だ。
時々私の物が無くなるなとは思ってはいた。しかし、読み終わったからいらないなと思っていた本だったり、折れて使えなくなったペンだけど、可愛かったので引き出しに仕舞っていた物だったり、無くてもいいものだったので気にはしていなかった。きっとカティーが片付けたのだろうと思っていたのだ。
しかし、ある時見てしまったのだ。長兄が私の小さく着れなくなった服に対して拝んでいるところを······。その光景を見た瞬間燃やした。跡形もなく灰にした。長兄は涙目で私が燃やした事への批難の言葉を発したが、その長兄に向かって『気持ち悪い。変態が!』と蔑んだ目で言うとなぜか恍惚とした目を返されてしまった。
カティーに長兄が変だと怯えながら訴えると『オヴァール家の特性です』と簡単な言葉で諭されてしまった。
強者を神の様に崇めてしまう一族の性質だった。それに倣って領民もその性質を受けついでいる者たちもおり、無くなった私の私物は誰かしらの手に渡っていたのだ。怖ろしい。
その後直ぐ様、私物を回収し、全て灰とした。それからはカティーに言って、いらない物は焼却処分をしてもらうことにしたのだった。
崇める物が無くなれば解決すると思っていたけど、甘かった。今度は私に構うようになってしまった。はっきり言ってうざい。王都に行くまで兄弟や周りの者たちに甘やかさ······いや、付き纏われ続けたのだった。
因みに目の前の愚兄その3は私の抜けた髪の毛だった。いらない物だけど、誰かに保管されているのは気持ちが悪い。
私はチラリと横を見る。手続きをしている受付けの女性は愚兄その3を見て頬を赤く染めている。確かに顔は美人なお母様似でイケメンだが、性格は変態だぞと思いながら声を掛ける。
「ねぇ。手が止まってるけど、終わったの?急いでいるから早くしてくれない?」
私がそう言うと女性はビクッと体を震わせ
「は、はいぃぃー!直ぐにいたしますー!」
と悲鳴を上げるような大声で答えた。あれ?もしかして、怯えられているのは私の方?
「下ろしてくれない?」
私を抱えている彼に言ってみるが何も反応がない。彼は未だに愚兄その3の方に視線を向けている。
「下ろせ」
強めの口調でやっと下ろしてもらったが、腰を引き寄せられている状態だ。いや、だから実の兄だと言ったじゃないか。
「姫はどうしてここにいるのかな?」
愚兄その3が笑ってない目を私に向けながら笑顔で聞いてきた。怖いな。
「叔父上に呼び出されたから」
「はぁ?姫は巻き込まないと決めたじゃないか!くそぉ」
悪態を付きながら愚兄その3は明後日の方を睨んでいる。いや、オヴァール領がある方角だ。
「で、愚兄はなぜこっちの辺境にいる?」
そう尋ねると、愚兄その3はため息を吐きながら答える。
「はぁ。聖女という奴らの足跡を辿っている。こちらとしては何が何でも宝珠を返してもらいたいからな。ああ、このリレイシルには冒険者として依頼を受けたから立ち寄った。これでもAランクだからね」
聖女の足跡?うーん。
「愚兄は聖女と直接会ったことある?」
「いや、無い」
ということは、イケメンの部類に入る愚兄その3が聖女と接触するのは危険だと、考えていると遠くの方から太鼓のような低い音がドーンドーンと聞こえてきた。
受付けの女性を見ると手が止まっており愚兄その3をまたしても見つめていた。仕事をしろ!
「受付さん!まだなの?外門が閉まってしまうじゃない!」
そう、太鼓のような低い音はもうすぐ外門が閉まるという合図だった。
「ふぇ?今から外に?無理ではないのでしょうか?」
現実に引き戻されたかのような視線を私に向け、無理だという受付けの女性に私はカウンターに両手をバンッと付いて問いただす。
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