番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

文字の大きさ
754 / 894
27章 魔人と神人

741

しおりを挟む
「うーん。俺が言ってもいいのか?」

 炎王はシェリーに確認するも、その判断を炎王に任せると言わんばかりに、シェリーは何も反応を示さない。

「俺としては、君たちに知る権利はないと言うしかない」
「そうでございますか」
「いや、変な意味ではなくて、正式に発表があるとすれば、聖女のお披露目のときだ。そうでなければ、一般的に知る必要がないということだ」

 炎王がそういうほど、異様な気配を放っている者が要人ということが、二人に伝わったのだろう。
 ニールは紫煙と共にイライラを吐き出すように大きく息を吐いた。

「聖女のお披露目?」

 その聖女のお披露目のパーティーの主人公になるはずのシェリーが言葉を漏らす。まさか忘れていたとは言わないだろう。

「何か資料を渡されていましたね」
「パーティー内容の草案だ。中には招待される各国の要人も確認するようにとあったはずだが、まだ目を通していなかったのか?」

 シェリーとしては、それどころではなかったので、今の今まで年明け早々に渡された資料のことなど忘れていたのだった。

「モルテ王を招待すると付け加えないといけません」
「は?モルテ王?モルテ王ってあのモルテ王じゃないよな?」
「それ以外にモルテ王がいるというのですか?」

 ニールの戸惑いの声に、シェリーは呆れた視線を向ける。この四千年間、王をしてきたモノ以外にモルテ王は存在するのかと。

「これは今すぐサリーさんに言っておかないと。っということで、ダンジョンの調査依頼は完了でいいですよね」
「シェリー!!」

 今すぐにでも騎士団広報部のサリーに、連絡を取るかのように切り上げようとするシェリー。それに対しニールはカウンターを叩きながら立ち上がる。

「モルテ王を招待するなど、常識の範囲ではないだろう!あの狂王だぞ!」

 ニールの言葉にギルドの職員たちがざわめき出す。流石に千年も狂い続けているモルテ王だ。
 シェリーに近況は報告されているにしても、四千年も一人の王が治め続けている国は、人の行き来がほぼない。そのため、噂話でしか情報を得ることができない。
 そんなモルテ王を、各国の国主を招いた聖女お披露目パーティーに呼ぶなど、常識外れにも程があるということだろう。

 そこにシュロスが追い打ちをかける言葉を口にする。

「ああ、死の王様な。ヤバい感じをビシビシ感じるよな」

 ニールが人族とは疑わしいと思っているシュロスから言われたら、それは招待すべき存在ではないと余計に判断してしまう。

「それにラース公国からの貴賓もオーウィルディア様からミゲルロディア大公閣下に変更になりましたし、どちらにしろサリーさんのところには、いかないといけません」

 この時点でニールは力なく座っていた椅子に腰を下ろし、頭が痛いと言わんばかりに、額に手を当てていた。
 そう、不確かな情報でしかないが、ミゲルロディア大公が死んだとか魔人化したとかの情報が入ってきているのだ。

 そのような者が、人が多くあつまる場所に現れるなど、会場に悲鳴が響き渡り、聖女お披露目パーティーをしている場合ではなくなる。

 そしてニールは隣にいるオリビアを横目で見る。その視線だけでオリビアは心得たと頷き返した。

「初代様は、モルテ王とラース大公をどのように、お見受けられましたでしょうか?」

 ニールの疑問をオリビアは正確に見抜き、炎王に質問した。流石、王太子妃であったというべきか。

 しかし、ここで声を上げたのは炎王ではなかった。

「なぁ、なんでさっきから角が生えたねーちゃんが聞いているんだ?知りたいのはおっさんの方だろう?」

 シュロスである。

 実際の年齢からいけば、シュロスのほうがかなり年上なのだが、未だにゲームの世界だと思い込んでいるシュロスの心は止まったままだ。だからシュロスからみればニールはおっさんなのかもしれない。ただ、その声が異様に響き渡り、ギルド内の緊張感が増した。

「バカは黙って、カカシのように突っ立っていてください。それがついてくる約束でしたよね」

 その緊張した空気をぶち壊すように、シェリーがシュロスに黙るように言った。そう、人外と言っていいシュロスを外に出すことに一悶着があったのだ。

 見た目は人っぽくなったので、問題はないが、その行動とシュロスの持つ能力を危険視して、シェリーの屋敷に一人とどまるように言ったのだ。
 だが、外を見てみたいとか、新しい水路を作るんだろうとか、今から魔道具の場所に行こうとか、駄々をこねだしたのだ。

 確かに第三師団が管理する水を精製する魔道具を地下に戻すには、シュロスが必要だ。そのためシェリーはカカシの様に何も喋らず突っ立っているように言っていたのだった。

「でもさぁ。自分で言えよって思うじゃないか」

 シュロスは言いたいことは自分で言えとニールに言っているのだ。隣りにいるオリビアに言わすなと。

「ではこう言い換えましょう。炎王は千年間一国を治めている国主です。私は別の国の国主の姪です。カイルさんは竜人の国の王子です。ただのシュロスさんは許可なく声をかけると、首が飛んでいきますよ」

 紹介もされていないニールが、炎王に言葉をかけることは許されていない。

 だが当の本人のニールは、お前がそれを言うのかと、呆れた視線をシェリーに向けるのだった。

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される

七海美桜
恋愛
旧タイトル:五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです! フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...