番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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27章 魔人と神人

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 少しときは遡り、地下の施設はおおかた把握し、炎王がそろそろ帰りたいオーラを出し始めたときだった。

「陽子さん。今回の報酬の薬草をもらえないか?そろそろ帰る。長居をすると陽子さんにグチグチ言われるしな」
「いいよ。じゃ、薬草畑まで一気に行っちゃう?」

 陽子も炎王がいることで発生する被害を抑えるのが、面倒になってきたのだろう。直ぐに陽子は了承する。

 そこにシェリーがハッとした感じで割り込んできた。

「忘れていました!」
「え?佐々木さんまだなにかあるのか?」
「あるというより、ギルドから陽子さんのダンジョンの調査を依頼されていました」
「およ?何故なのかな?」

 陽子は冒険者ギルドから調査される覚えはないと言わんばかりに首を傾げている。ダンジョンを改装すると言っても、普段使わないゾーンで行っており、通常のダンジョンの階層は普通に行き来できていたからだ。

「オリバー作。偶発的産物の流出事件です」
「あれは陽子さんが悪いわけじゃないからね」

 シェリーの言葉、に陽子は反射的に言い返す。自分は悪くないと。

「わかっていますが、ギルド的には安全性を認めたダンジョンでなければ、冒険者に行くように勧められないからでしょう」
「最近、年末年始だから人が来ないと思っていたけど、あれが原因だったのか。でも、ササっちが安全だと言えばいいんだよね?」
「それが、私はこの国に居ないことが軍経由で伝わっていると思いますので、私が言うと嘘だとニールさんにバレると思います」

 ニールの甥はシェリーが色々押し付けようとしている第零師団長のツヴェークだ。そこから調べられれば、あの襲撃事件でシェリーはラース公国に向かったことがバレることだろう。
 そんな嘘はニールには通じない。

「ですから、代理を頼んだということにして、炎王に冒険者ギルドまでついてきて欲しいです」
「え?俺?全く関係ないじゃないか」
「陽子さんから薬草をもらうのでしたら、月光花でも提出すればニールさんも納得すると思います」
「うーん。確かに日が差さない洞窟に咲く光る花だけど……それ、証拠になるのか?」
「誰が炎王に向かって、嘘を言っていると言えるのですか?」

 シェリーの言葉に炎王の立場を知るものは納得せざる得なかった。
 たとえ嘘とバレても面と向かって嘘だと指摘できない人物を連れていけば、それは事実になると。



 ということで、ニールはシェリーに常識を身に着けろと叫ぶことになったのだ。

「いいか。物事には常識というものがある!」

 ニールはカウンターを指でコツコツと叩きながらシェリーに言っている。

「頼み事をするにしてもだ!頼み事をしていい人と、そうでない人がいるだろう!」
「では地下に引きこもっている薬師カークスを引っ張りだしてくればいいと」
「やめろ!あれこそ常識が通じない御仁だ」

 ニールはオリバーに会ったことがあるようだ。シェリーのオリバーに頼めばよかったのかという言葉に直ぐに否定の言葉を返す。非常識の塊だと。

 シーラン王国で生まれたニールが魔導師オリバーを知っていても、討伐戦時に戦場に立っていなければ、本人とはわかることはないだろう。
 だが、薬師として冒険者ギルドに現れたオリバーに対して、普通ではないと感想を抱いたと思われる。

「それから、そこの異様な気配を放っているヤツは誰だ!見かけない顔だが?それは人か?」

 ニールは冒険者ギルド内を興味深そうに見渡しているシュロスを指して言った。ニールの感覚も侮れない。シュロスを人かどうかも疑わしいと指摘したのだ。

「ただのバカですので無視してくれていいです」
「無視できないから聞いているんだ。カイルあれは何者だ?」

 シェリーに聞いても答えてくれなさそうだと感じたニールは、イライラしながらカイルに尋ねる。
 尋ねられたカイルは、シェリーの前ではいつも浮かべている笑顔で一言ボソリと言った。

「ムカつくから殺してもいいと思う」

 ニールの答えではなく、カイルの心情を口にしていた。
 番であるシェリーの周りをうろちょろして、番であるシェリーと仲良く話す存在は抹消すべきだと言うようにだ。

「こわっ!俺に殺気を向けるなよ」

 カイルの言葉にシュロスは全く怖がっていないように、驚いた風を装って答える。それが余計にカイルの癪に障るのだが、シュロスはこの状況に、はしゃいでいる感じに見て取れる。

 ニールのイライラ度が高まっていることを感じて動いたのは、ニールの側にいるオリビアだった。

「初代様。無知な私共にお教え願いますでしょうか?その者は何者かと」

 番であるニールが困ってるのであれば、それを支え助けるのが己の役目のように、オリビアは凛と背筋を伸ばして、偉大なる炎国の王に尋ねたのだった。

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