神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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15 晩餐会へ1

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 辺境に移るまでの一ヶ月――退屈な日々に、姫花は次第に嫌気がさしていた。
 何もすることもなく、嫌なことばかり考えてしまう。

 そんなある日、ふと思い出した。
「そういえば、もうすぐ天璽家てんじけ主催の大規模な晩餐会があったはず……」

 姫花は花蓮にこっそりと告げた。
「花蓮、今度の晩餐会に出ましょう。 招待状はあるのだから、参加できるはずだわ」

 花蓮は目を輝かせて飛びついた。
「本当に? お母様! 私、すごく嬉しい! 」

 いよいよ当日になったが、侍女もいないため、自分たちでドレスを必死に引っ張り出し、ヘアセットも手探りで行う。
 そのため、季節感も流行も無視された、粗末でちぐはぐな装いとなった。
 招待してくれた方々に対して、失礼にあたるほどの出来栄えである。

 姫花は、今回の醜聞が水無瀬家の一部の限られた人間しか知らないと思い込み、辺境の商人に嫁いだことで、しばらく華やかな場に出ることは叶わないだろうから、存分に楽しもうと思っていた。

 一方、花蓮は母に内緒で本当の父親を探していた。
 部屋をこっそり漁り、発見した日記の中に自分の誕生日から逆算した十ヶ月前あたりに付き合っていたと思われる人物の名前を発見する。

「見つけた……これが本当の父親に違いないわ」

 名前は、末継徹。家格ははっきりしないものの、名前さえ分かれば、あとはこの会で情報を集め、自分が娘であることを名乗り出るつもりだ。そして、自分だけは神守に残るのだ。

 二人はそれぞれの思いを抱えて、町の中央広場にやってきた。そこから出る共有獣車は、庶民が買い物や荷物運びに使う、のんびり屋の牽き牛が引く大きな荷車だった。裕福でない沼安家では、子供の頃よく利用していたのだ。
 姫花と花蓮は、ドレスの裾を必死で持ち上げながら、ぎしぎし鳴る荷台へとよじ登る。

 座席と呼べるほどのものはなく、煤けた木の板に腰を下ろすと、すぐに冷たく湿った感触が伝わってきた。
 隣の市場帰りの男が根菜の入った籠をどさりと置き、「神守が、こんな乗り物に?」と、ひそひそ声が背後から聞こえてくる。

 花蓮は最初、珍しい庶民の乗り物にわくわくしていたが――
 牛が石を踏んだ瞬間、荷台ががくんと揺れ、頭上から干物の袋が落ちてきて、見事に彼女の頭に直撃。
 魚の生臭さに顔をしかめ、「……最悪」と一言。姫花はそんな娘から少し距離を取りつつ、「気にしないのよ」と機嫌よく言った。久しぶりの晩餐会が楽しみで仕方ないのだ。花蓮は鼻をつまんだまま外を見続けた。

 こうして、干物の香りと周囲の好奇の視線に包まれながら、二人は晩餐会の会場へと揺られていった。
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