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64 憧れの人
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「はい。こちらは穢れを見ることができる神具の試作品です」
光矢が取り出したのは、帳面ほどの大きさの、一見ただのガラス板だった。
「これで、穢れが見えるというのですか?」
神官様は、今にも試したいといった様子で板を一心に見つめる。
「お試しになりますか?」
「ああ、ぜひ……と言いたいところだが、ここにはあなた方しかいない。この神具で君たちを見させてもらってもよいかな?」
私たちはみな肯定の返事をした。
神官様は目を輝かせながら板を受け取ると、さっそく私たちに向けてかざした。
「おお……!」
「何が見えますか?」
私も初めて目にする神具に、興味津々で尋ねた。
「……何も変わりませんね」
「まあ、そうでしょうね」叔父様が苦笑する。
「この神具は、対象を板越しに見たときに、もし穢れがあれば黒い靄が立ちのぼり、一目で分かる仕組みです。つまり穢れのない相手を見ても変化はない、ということですよ」
「なるほど。では、実際に使われる場面を楽しみにしていますね。つまり、この板を通して――浄化を受けている相手を観察し、穢れがあるかどうか確かめるわけですね。そして、穢れが確認された者を神殿に連れていき、尋問する、と」
「ええ。そのときは、あらかじめ姉さまに合図を出します。浄化を少しずつ強めてもらい、もし相手が苦しみだしたら、姉さまに止めてもらう。その瞬間、僕たちが神具で“穢れあり”と確認したことにして、捕縛するのです」
「……彼は本当にすごいね」
「はい。僕の助手なんです。彼がいなければ研究は成り立ちません」
「ほう、かの有名な浅井博士にそこまで言わせるとは。――実は私も神気の研究をしていましてね。本も少し出しているんですよ。発行部数は少ないのですが」
「もしかして……!」叔父様が目を輝かせた。
「先ほど“うえつき”殿と伺いましたが……神気研究の第一人者、上月先生として執筆されている方では!?」
「第一人者かどうかは分からないが、本は“上月”の名で出しているよ。よく知っているね」
私は衝撃で目を見開いたまま、思考が止まってしまった。
――憧れの上月先生が、目の前に……。
「姉さま、姉さま!……だめだ、聞こえてない」
「彼女はどうしました?」
「実は姉さまは上月先生の大ファンなんです。この旅にも最新刊の『神気は友達!』を持ってきていまして、もう何度も読み返しているほどで」
「そうか。では明日、その本を持っておいで。サインしてあげよう」
その言葉で我に返った私は、勢いよく頭を下げた。
「本当ですか!?ぜひお願いします!」
淑女らしさなど吹き飛び、皆が苦笑しているのも構わなかった。
「あの……まさか神官様だったとは思いもしませんでした。一度でいいからお会いしたいと、ずっと……」
「正体は公表していないんだ。我が上月家は代々神官の家系でね。もっとも、発行部数も少ないし、そこまで隠す必要もないのだが」
「友人にも上月先生の本の愛読者がいるのですが、彼に先生の正体を話してしまっても大丈夫ですか?」
「もちろん、構わないよ」
「ありがとうございます!」
まだ何も始まっていないのに、私はもう、アオくんにこの旅の報告をするのが楽しみで仕方なかった。
光矢が取り出したのは、帳面ほどの大きさの、一見ただのガラス板だった。
「これで、穢れが見えるというのですか?」
神官様は、今にも試したいといった様子で板を一心に見つめる。
「お試しになりますか?」
「ああ、ぜひ……と言いたいところだが、ここにはあなた方しかいない。この神具で君たちを見させてもらってもよいかな?」
私たちはみな肯定の返事をした。
神官様は目を輝かせながら板を受け取ると、さっそく私たちに向けてかざした。
「おお……!」
「何が見えますか?」
私も初めて目にする神具に、興味津々で尋ねた。
「……何も変わりませんね」
「まあ、そうでしょうね」叔父様が苦笑する。
「この神具は、対象を板越しに見たときに、もし穢れがあれば黒い靄が立ちのぼり、一目で分かる仕組みです。つまり穢れのない相手を見ても変化はない、ということですよ」
「なるほど。では、実際に使われる場面を楽しみにしていますね。つまり、この板を通して――浄化を受けている相手を観察し、穢れがあるかどうか確かめるわけですね。そして、穢れが確認された者を神殿に連れていき、尋問する、と」
「ええ。そのときは、あらかじめ姉さまに合図を出します。浄化を少しずつ強めてもらい、もし相手が苦しみだしたら、姉さまに止めてもらう。その瞬間、僕たちが神具で“穢れあり”と確認したことにして、捕縛するのです」
「……彼は本当にすごいね」
「はい。僕の助手なんです。彼がいなければ研究は成り立ちません」
「ほう、かの有名な浅井博士にそこまで言わせるとは。――実は私も神気の研究をしていましてね。本も少し出しているんですよ。発行部数は少ないのですが」
「もしかして……!」叔父様が目を輝かせた。
「先ほど“うえつき”殿と伺いましたが……神気研究の第一人者、上月先生として執筆されている方では!?」
「第一人者かどうかは分からないが、本は“上月”の名で出しているよ。よく知っているね」
私は衝撃で目を見開いたまま、思考が止まってしまった。
――憧れの上月先生が、目の前に……。
「姉さま、姉さま!……だめだ、聞こえてない」
「彼女はどうしました?」
「実は姉さまは上月先生の大ファンなんです。この旅にも最新刊の『神気は友達!』を持ってきていまして、もう何度も読み返しているほどで」
「そうか。では明日、その本を持っておいで。サインしてあげよう」
その言葉で我に返った私は、勢いよく頭を下げた。
「本当ですか!?ぜひお願いします!」
淑女らしさなど吹き飛び、皆が苦笑しているのも構わなかった。
「あの……まさか神官様だったとは思いもしませんでした。一度でいいからお会いしたいと、ずっと……」
「正体は公表していないんだ。我が上月家は代々神官の家系でね。もっとも、発行部数も少ないし、そこまで隠す必要もないのだが」
「友人にも上月先生の本の愛読者がいるのですが、彼に先生の正体を話してしまっても大丈夫ですか?」
「もちろん、構わないよ」
「ありがとうございます!」
まだ何も始まっていないのに、私はもう、アオくんにこの旅の報告をするのが楽しみで仕方なかった。
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