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65 鉱山1
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翌日、私たちは朝早く鉱山へと出発した。道すがら神殿に立ち寄り、上月先生をお迎えして馬車に乗り込む。
上月先生がふいに口を開いた。
「いやあ、今回こうしてご一緒できて、本当に幸運です。興味深い結界の検証に立ち会える上に、初めて見る神具の実地使用まで見られるのですからね。研究者冥利に尽きます」
先生は目を細めて微笑み、まるで子どもが遠足を前にして胸を躍らせているような顔をしていた。
「ただ、私もそれなりの立場がありますので、兄に頼まれたからといって、好き勝手に同行できるわけではないのですよ。もちろん、無理を通そうと思えば通せなくはないのですが……。ですが今回は幸い、水無瀬家から多大なご寄付を賜っていました。そのおかげで“失礼のないように、私が同行すべきだ”という空気になりましてね。いやはや、助かりました」
悪戯っぽく口角を上げながらも、どこか安堵の色がにじむ。
「それはよかったです。こちらとしても、上月先生のように神気研究に理解のある方がついてくださって、本当に心強い」
叔父様は笑みを浮かべ、上機嫌な様子だ。
道中は、先生の著書をめぐる議論や質問で盛り上がった。先生は熱を込めて答え、叔父様は的確に補足や説明を加える。互いに探究心をぶつけ合う姿は、まるで昔からの友人のようだった。
「こんなに神気について語れるなんて、うれしいなあ」
少年のように目を輝かせる先生に、叔父様もまた、楽しげに頷きながら目を細めていた。
そうして談笑しながら過ごしているうちに、あっという間に鉱山へ到着した。
「ここが、鉱山……」
私は思わず息を呑む。目の前には岩肌むき出しの山が広がり、大勢の作業員たちがせわしなく行き交っていた。その活気に圧倒される。
ちなみに、今回から私は“魅力を半減する眼鏡”を改良した、“絶対的モブ眼鏡”というものを装着している。叔父様の説明によれば、前回のものは身に着ける者自身の魅力を半減させる効果だったが、今回は相対的ではなく絶対的に魅力を消し去り、さらに印象に残らないようにする効果を持つらしい。もちろん、話しかければきちんと気づいてもらえるし、無視されるようなこともない。
奇妙な名前の由来は光矢だという。「“モブ”ってどういう意味?」と尋ねたところ、「猛烈に無難」の略だと答えていた。
私には到底思いつかない発想だ。凡人には理解できない感性だけれど、その独特さがやっぱりすごいと思った。
叔父様と光矢も、“別人に見えるブローチ”や“記憶に残りにくいカフスボタン”を装着していた。たとえ知っている人が見ても判別できないほどの効果らしい。
ただし私は、姿かたちは別人に見えても、叔父様と光矢だと自然にわかる。不思議なことに、家族や深い絆のある者にはそう感じ取れるのだという。叔父様は「形式だけの家族なら気づけなかったはずだ」と説明してくれた。
もちろん、みんな佳乃の確認は通っている。最初は私もすべての装具を身に着けていたのだが、佳乃が渋い顔をした。そこで叔父様と光矢が検討した結果、私の場合は「絶対的モブ眼鏡」さえあれば効果を一手に引き受けられると気づき、この一本に絞ることになったのだ。ちなみに、この眼鏡をかけてもあまり変化のない人もいるらしいが、私の場合は見事に別人に見えるとのことだった。
その変化を目の当たりにした上月先生は大興奮し、外見がみるみる変わっていく様子に子どものように目を輝かせた。
「発売になった暁には、ぜひ私にも譲っていただきたい!」
熱のこもったお願いに、叔父様はにこやかに答えた。
「今回お世話になった御礼に差し上げますよ。何がよろしいですか?」
先生はしばし迷ったのち、真剣な面持ちで言った。
「では……“別人に見えるブローチ”をいただければ」
叔父様は快く頷き、その場で約束を交わしたのだった。
上月先生がふいに口を開いた。
「いやあ、今回こうしてご一緒できて、本当に幸運です。興味深い結界の検証に立ち会える上に、初めて見る神具の実地使用まで見られるのですからね。研究者冥利に尽きます」
先生は目を細めて微笑み、まるで子どもが遠足を前にして胸を躍らせているような顔をしていた。
「ただ、私もそれなりの立場がありますので、兄に頼まれたからといって、好き勝手に同行できるわけではないのですよ。もちろん、無理を通そうと思えば通せなくはないのですが……。ですが今回は幸い、水無瀬家から多大なご寄付を賜っていました。そのおかげで“失礼のないように、私が同行すべきだ”という空気になりましてね。いやはや、助かりました」
悪戯っぽく口角を上げながらも、どこか安堵の色がにじむ。
「それはよかったです。こちらとしても、上月先生のように神気研究に理解のある方がついてくださって、本当に心強い」
叔父様は笑みを浮かべ、上機嫌な様子だ。
道中は、先生の著書をめぐる議論や質問で盛り上がった。先生は熱を込めて答え、叔父様は的確に補足や説明を加える。互いに探究心をぶつけ合う姿は、まるで昔からの友人のようだった。
「こんなに神気について語れるなんて、うれしいなあ」
少年のように目を輝かせる先生に、叔父様もまた、楽しげに頷きながら目を細めていた。
そうして談笑しながら過ごしているうちに、あっという間に鉱山へ到着した。
「ここが、鉱山……」
私は思わず息を呑む。目の前には岩肌むき出しの山が広がり、大勢の作業員たちがせわしなく行き交っていた。その活気に圧倒される。
ちなみに、今回から私は“魅力を半減する眼鏡”を改良した、“絶対的モブ眼鏡”というものを装着している。叔父様の説明によれば、前回のものは身に着ける者自身の魅力を半減させる効果だったが、今回は相対的ではなく絶対的に魅力を消し去り、さらに印象に残らないようにする効果を持つらしい。もちろん、話しかければきちんと気づいてもらえるし、無視されるようなこともない。
奇妙な名前の由来は光矢だという。「“モブ”ってどういう意味?」と尋ねたところ、「猛烈に無難」の略だと答えていた。
私には到底思いつかない発想だ。凡人には理解できない感性だけれど、その独特さがやっぱりすごいと思った。
叔父様と光矢も、“別人に見えるブローチ”や“記憶に残りにくいカフスボタン”を装着していた。たとえ知っている人が見ても判別できないほどの効果らしい。
ただし私は、姿かたちは別人に見えても、叔父様と光矢だと自然にわかる。不思議なことに、家族や深い絆のある者にはそう感じ取れるのだという。叔父様は「形式だけの家族なら気づけなかったはずだ」と説明してくれた。
もちろん、みんな佳乃の確認は通っている。最初は私もすべての装具を身に着けていたのだが、佳乃が渋い顔をした。そこで叔父様と光矢が検討した結果、私の場合は「絶対的モブ眼鏡」さえあれば効果を一手に引き受けられると気づき、この一本に絞ることになったのだ。ちなみに、この眼鏡をかけてもあまり変化のない人もいるらしいが、私の場合は見事に別人に見えるとのことだった。
その変化を目の当たりにした上月先生は大興奮し、外見がみるみる変わっていく様子に子どものように目を輝かせた。
「発売になった暁には、ぜひ私にも譲っていただきたい!」
熱のこもったお願いに、叔父様はにこやかに答えた。
「今回お世話になった御礼に差し上げますよ。何がよろしいですか?」
先生はしばし迷ったのち、真剣な面持ちで言った。
「では……“別人に見えるブローチ”をいただければ」
叔父様は快く頷き、その場で約束を交わしたのだった。
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