神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

文字の大きさ
79 / 96

78 岩城家7(遥視点)

しおりを挟む
 浅井様と樹が付き添い、刺客たちを憲兵の詰所へ連れて行った。

「瑞葉さん、光矢さん。お腹は空いてない? お疲れでなければ、お茶でもいたしましょう」
 お母様が穏やかに誘う。

「姉さま、どうですか?」

「はい!ぜひお願いします。疲れてはいませんが、正直に言うと……お腹が空きました」
 瑞葉様は妖精のような可憐な顔をはにかませてそう答えた。――なんとも愛らしい!

「僕もご一緒していいのですか? 女性だけのお茶会かと思っていました」

「もちろんです。光矢殿のお話もぜひ聞きたいわ」

「それなら、喜んで参加させていただきます」

 こうして各自身支度を整え、お茶会の席についた。

「改めて、岩城家への侵入者捕縛にご協力くださり、ありがとうございました」
 お母様が口を開く。

「狙われたのは私と光矢です。むしろ岩城家の皆様にご迷惑をおかけしました。でも、皆様のお力添えで捕らえることができました。こちらこそ感謝いたします」
 瑞葉様が続けて言う。
「それに、全人教との繋がりの証拠を得られたことは大きな一歩です」

「ええ。今までどれほど事件が起きても、全人教との関与は疑いの域を出ませんでした。それが今回は証拠付きで、しかも神守の名まで明らかになった。これは本当に大きな前進です」
 光矢殿が六歳とは思えぬ落ち着きで言葉を添える。――うちの樹も落ち着いている方だが、光矢殿はそのさらに数段上だ。

「憲兵隊から正式な報告が上がるでしょうが、うちからも然るべき筋に伝えておきます」

「私たちも戻れば父母に報告し、お上に奏上してもらいます」

「これは大物獲りになりそうですね」
 光矢殿がにこにこと笑う。

「光矢殿は、浅井殿と共に神具を数多く開発しているそうですね」

「はい。先ほど使った神気封じの腕輪も改良品です。封じられる神気の容量を増やし、装着者本人にしか外せない機能を加えました」

「瑞葉様や光矢殿ほど神気が多い者が付けたらどうなるのですか?」
 私は研究ごとは苦手なので、単純な疑問を口にした。

「僕は試作品で試しましたが、外れませんでした」

「光矢! 危険じゃなかったの!?」

「姉さま、大丈夫です。叔父さんは僕に害のあることは絶対にさせません」

「そう……ならいいわ。でも、くれぐれも無茶はしないでね」

「わかってますよ」

「仲の良い姉弟ですね。見ていて微笑ましいです。私と樹は喧嘩ばかりしていますよ」

「遥はもう少し落ち着きなさい」

「でも、お母様、樹は細かいことばかり言ってくるんです」

「ふふっ。私から見れば、遥様と樹様はとても仲の良い姉弟です。喧嘩するほど仲がいいとも言いますから。神守には、家族がまったく関わらない家も珍しくありませんし」
 瑞葉様が少し寂しげに言った。

「この土地柄のせいもあるでしょうね。情報をこまめに共有しないとすぐにやられてしまいますから。だからこそ、家族の結びつきが強くなるのです」

「なるほど……」

 その後は神具の開発の裏話や、瑞葉様の奉仕活動のことなど、話題は尽きなかった。

 やがて光矢殿がふと思い出したように口を開く。
「そういえば夫人は、僕たちの父母と学院で関わりがあったと聞きました。当時のお話を聞かせていただけませんか?」

「あっ、それは!」
 私は慌てて止めようとしたが、もう遅かった。

 お母様の目がきらきらと輝く。
「ええ、もちろん」
 こうして――長い長い昔話が始まったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐は、冷やして食すのが一番美味い

Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。 1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。 2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。 3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。 狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。 「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。 ----- 外部サイトでも掲載を行っております

無能だと捨てられた第七王女、前世の『カウンセラー』知識で人の心を読み解き、言葉だけで最強の騎士団を作り上げる

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
エルミート王国の第七王女リリアーナは、王族でありながら魔力を持たない『無能』として生まれ、北の塔に長年幽閉されていた。 ある日、高熱で生死の境をさまよった彼女は、前世で臨床心理士(カウンセラー)だった記憶を取り戻す。 時を同じくして、リリアーナは厄介払いのように、魔物の跋扈する極寒の地を治める『氷の辺境伯』アシュトン・グレイウォールに嫁がされることが決定する。 死地へ送られるも同然の状況だったが、リリアーナは絶望しなかった。 彼女には、前世で培った心理学の知識と言葉の力があったからだ。 心を閉ざした辺境伯、戦争のトラウマに苦しむ騎士たち、貧困にあえぐ領民。 リリアーナは彼らの声に耳を傾け、その知識を駆使して一人ひとりの心を丁寧に癒していく。 やがて彼女の言葉は、ならず者集団と揶揄された騎士団を鉄の結束を誇る最強の部隊へと変え、痩せた辺境の地を着実に豊かな場所へと改革していくのだった。

ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

月森かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい

しろこねこ
ファンタジー
前世を思い出した15歳のリリィが風呂敷を発見する。その風呂敷は前世の記憶にある青いロボットのもつホニャララ風呂敷のようで、それよりもちょっとだけ高性能なやつだった。風呂敷を手にしたリリィが自由を手にする。

異世界召喚のおばあちゃん

あまつ冴
ファンタジー
異世界から召喚された中におばあちゃんがいた

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

処理中です...