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78 岩城家7(遥視点)
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浅井様と樹が付き添い、刺客たちを憲兵の詰所へ連れて行った。
「瑞葉さん、光矢さん。お腹は空いてない? お疲れでなければ、お茶でもいたしましょう」
お母様が穏やかに誘う。
「姉さま、どうですか?」
「はい!ぜひお願いします。疲れてはいませんが、正直に言うと……お腹が空きました」
瑞葉様は妖精のような可憐な顔をはにかませてそう答えた。――なんとも愛らしい!
「僕もご一緒していいのですか? 女性だけのお茶会かと思っていました」
「もちろんです。光矢殿のお話もぜひ聞きたいわ」
「それなら、喜んで参加させていただきます」
こうして各自身支度を整え、お茶会の席についた。
「改めて、岩城家への侵入者捕縛にご協力くださり、ありがとうございました」
お母様が口を開く。
「狙われたのは私と光矢です。むしろ岩城家の皆様にご迷惑をおかけしました。でも、皆様のお力添えで捕らえることができました。こちらこそ感謝いたします」
瑞葉様が続けて言う。
「それに、全人教との繋がりの証拠を得られたことは大きな一歩です」
「ええ。今までどれほど事件が起きても、全人教との関与は疑いの域を出ませんでした。それが今回は証拠付きで、しかも神守の名まで明らかになった。これは本当に大きな前進です」
光矢殿が六歳とは思えぬ落ち着きで言葉を添える。――うちの樹も落ち着いている方だが、光矢殿はそのさらに数段上だ。
「憲兵隊から正式な報告が上がるでしょうが、うちからも然るべき筋に伝えておきます」
「私たちも戻れば父母に報告し、お上に奏上してもらいます」
「これは大物獲りになりそうですね」
光矢殿がにこにこと笑う。
「光矢殿は、浅井殿と共に神具を数多く開発しているそうですね」
「はい。先ほど使った神気封じの腕輪も改良品です。封じられる神気の容量を増やし、装着者本人にしか外せない機能を加えました」
「瑞葉様や光矢殿ほど神気が多い者が付けたらどうなるのですか?」
私は研究ごとは苦手なので、単純な疑問を口にした。
「僕は試作品で試しましたが、外れませんでした」
「光矢! 危険じゃなかったの!?」
「姉さま、大丈夫です。叔父さんは僕に害のあることは絶対にさせません」
「そう……ならいいわ。でも、くれぐれも無茶はしないでね」
「わかってますよ」
「仲の良い姉弟ですね。見ていて微笑ましいです。私と樹は喧嘩ばかりしていますよ」
「遥はもう少し落ち着きなさい」
「でも、お母様、樹は細かいことばかり言ってくるんです」
「ふふっ。私から見れば、遥様と樹様はとても仲の良い姉弟です。喧嘩するほど仲がいいとも言いますから。神守には、家族がまったく関わらない家も珍しくありませんし」
瑞葉様が少し寂しげに言った。
「この土地柄のせいもあるでしょうね。情報をこまめに共有しないとすぐにやられてしまいますから。だからこそ、家族の結びつきが強くなるのです」
「なるほど……」
その後は神具の開発の裏話や、瑞葉様の奉仕活動のことなど、話題は尽きなかった。
やがて光矢殿がふと思い出したように口を開く。
「そういえば夫人は、僕たちの父母と学院で関わりがあったと聞きました。当時のお話を聞かせていただけませんか?」
「あっ、それは!」
私は慌てて止めようとしたが、もう遅かった。
お母様の目がきらきらと輝く。
「ええ、もちろん」
こうして――長い長い昔話が始まったのであった。
「瑞葉さん、光矢さん。お腹は空いてない? お疲れでなければ、お茶でもいたしましょう」
お母様が穏やかに誘う。
「姉さま、どうですか?」
「はい!ぜひお願いします。疲れてはいませんが、正直に言うと……お腹が空きました」
瑞葉様は妖精のような可憐な顔をはにかませてそう答えた。――なんとも愛らしい!
「僕もご一緒していいのですか? 女性だけのお茶会かと思っていました」
「もちろんです。光矢殿のお話もぜひ聞きたいわ」
「それなら、喜んで参加させていただきます」
こうして各自身支度を整え、お茶会の席についた。
「改めて、岩城家への侵入者捕縛にご協力くださり、ありがとうございました」
お母様が口を開く。
「狙われたのは私と光矢です。むしろ岩城家の皆様にご迷惑をおかけしました。でも、皆様のお力添えで捕らえることができました。こちらこそ感謝いたします」
瑞葉様が続けて言う。
「それに、全人教との繋がりの証拠を得られたことは大きな一歩です」
「ええ。今までどれほど事件が起きても、全人教との関与は疑いの域を出ませんでした。それが今回は証拠付きで、しかも神守の名まで明らかになった。これは本当に大きな前進です」
光矢殿が六歳とは思えぬ落ち着きで言葉を添える。――うちの樹も落ち着いている方だが、光矢殿はそのさらに数段上だ。
「憲兵隊から正式な報告が上がるでしょうが、うちからも然るべき筋に伝えておきます」
「私たちも戻れば父母に報告し、お上に奏上してもらいます」
「これは大物獲りになりそうですね」
光矢殿がにこにこと笑う。
「光矢殿は、浅井殿と共に神具を数多く開発しているそうですね」
「はい。先ほど使った神気封じの腕輪も改良品です。封じられる神気の容量を増やし、装着者本人にしか外せない機能を加えました」
「瑞葉様や光矢殿ほど神気が多い者が付けたらどうなるのですか?」
私は研究ごとは苦手なので、単純な疑問を口にした。
「僕は試作品で試しましたが、外れませんでした」
「光矢! 危険じゃなかったの!?」
「姉さま、大丈夫です。叔父さんは僕に害のあることは絶対にさせません」
「そう……ならいいわ。でも、くれぐれも無茶はしないでね」
「わかってますよ」
「仲の良い姉弟ですね。見ていて微笑ましいです。私と樹は喧嘩ばかりしていますよ」
「遥はもう少し落ち着きなさい」
「でも、お母様、樹は細かいことばかり言ってくるんです」
「ふふっ。私から見れば、遥様と樹様はとても仲の良い姉弟です。喧嘩するほど仲がいいとも言いますから。神守には、家族がまったく関わらない家も珍しくありませんし」
瑞葉様が少し寂しげに言った。
「この土地柄のせいもあるでしょうね。情報をこまめに共有しないとすぐにやられてしまいますから。だからこそ、家族の結びつきが強くなるのです」
「なるほど……」
その後は神具の開発の裏話や、瑞葉様の奉仕活動のことなど、話題は尽きなかった。
やがて光矢殿がふと思い出したように口を開く。
「そういえば夫人は、僕たちの父母と学院で関わりがあったと聞きました。当時のお話を聞かせていただけませんか?」
「あっ、それは!」
私は慌てて止めようとしたが、もう遅かった。
お母様の目がきらきらと輝く。
「ええ、もちろん」
こうして――長い長い昔話が始まったのであった。
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