神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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79 聖励修道院(花蓮視点)

 朝五時。カン、カン、カン――けたたましい鐘の音で目を覚ます。
 聖励修道院に連れてこられてから、もう半年が経った。

 五時十分には廊下に並び点呼が行われる。そのあと並んで食堂へ行き、朝食を食べる。麦ご飯に、具のない薄い味噌汁、漬物が二切れ。

 初日に「こんなもの食べられない」と口にしたときは、即座に「なら食うな」と皿を奪われ、周囲の子らに食べ尽くされた。

 それ以来、黙って我慢して口にしている。昼も夜もほとんど同じ。夜だけはおかずが一つ加わる程度だ。

 しかも、この食事内容すら貢献度によって決まる。花蓮は入ったばかりなので最下位だ。
 貢献度が高い子たちは夜に肉をもらえると聞いた。
 最初は反発ばかりしていたが、今では肉を食べたい一心で、必死に作業をこなしている。
 ――ここは修道院などではない。規律と暴力で縛りつけられる牢獄だ。

 連れてこられた初日にまず髪を短く切られ、四人部屋に入らされた。そこには同部屋の三人が新入りを待ち構えており、囲まれるように座らされた。
 年齢は同じくらいに見えるが、眼差しは獣のようにぎらついている。

「お前元神守なんだってな。でも、そんなのここじゃあ関係ない。ここでは、序列がすべてだ」
 一番年長に見える子が口を開く。短く刈り込んだ髪に鋭い目つき。腕には古傷がいくつも走っている。

「序列?」と花蓮は眉をひそめた。

「そう。誰が上で、誰が下か」
 別の子がニヤリと笑う。

「やり方は簡単。力か、言葉か。方法は何でも相手を叩き潰せるか。それだけ」

 花蓮は意味が分からず首を振る。
「そんなの馬鹿げてるわ。私は――」

 言いかけた瞬間、頬に鋭い痛みが走った。

 一人が躊躇なく彼女を殴ったのだ。石床に倒れ込む花蓮を見下ろして、別の子が唇を吊り上げる。
「弱いな。声も小さい。言い返す言葉もない」

「こんなの、最下位で決まりだな」
 三人の目が合い、笑いがこぼれる。

 花蓮は震えながら体を起こすが、反論の言葉は喉で凍りついて出てこない。

 かつては誰かに頭を下げたことなどなかったのに。
 こうして「部屋の序列」は即座に決まり、花蓮は当然最下位になった。

 与えられた寝床は部屋の隅。毛布もなく、冷たい石の上で眠るしかない。

「私は何も悪くないのに……全部、お母様が悪いのよ」
 心の中でそう吐き捨てる。

 花蓮を浅井克己の娘だと偽っていた母。その嘘が暴かれたとき、すべてが崩れ落ちた。
 離縁され、居場所を失った母に引きずられるように、花蓮も奈落へと落ちていった。

 母はここへ連れてこられる前から、呆然自失のまま。口を開けば意味のない言葉を繰り返し、正気を失っていた。
 働けるはずもなく、今どこでどうしているのかもわからない。
 けれど――もうあんなものを「母」と思いたくなかった。

 花蓮の胸の奥に、黒い靄が静かに広がっていく。
 絶望と憎悪と諦念が混じり合い、形を持たぬ穢れとなって。

 その様子は、確かに観察されていた。
 花蓮の中に溜まっていく穢れが、やがて全人教にとって「利用できる力」へと変わる、その時を待つかのように――。

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